タイムカプセル

死神王

前編

 拝啓二十八歳のあなたへ。

 春の風が終わり、少しずつ湿気や熱が吹き出るようになった七月です。私は十八歳のあなたです。元気ですか?突然の事に戸惑うかもしれません。まず最初になんで私があなたに向けて手紙を書いてるのか話しましょうか。今日七月七日はあなたも知ってる通り、私の誕生日で今年で私は十八歳を迎えました。家族も祝福してくれて、大きなショートケーキを買ってくれました。友達からも祝ってもらえて、成人なんだなという感覚が身体をじーんと通っていくのを感じたんです。

 でも、数時間たって、ある事に気づきました。私、何も無いかもしれないって。成人になったからと言って、明日は普通に来るし、満員の電車に乗って大学は行かなきゃいけないし、眠くなったら寝るし、いつもの様に下らないSNSを見ているし、結局、世界は色鮮やかになった訳でもない。そう思ったんです。結局私は将来どんな風になるんだろうか。それに満足できるのだろうか。もしかしたら、恋はするのだろうか。ずっとさっきからそういう望むだけの不安が布団の内側を這いずり回って、少し苦しくなってしまいました。

 だから、この不安を遠い未来に託そうって決めたんです。ロマンチックな夢見がちですかね。私だから許してください。そんな私にとってのあなたというきらきらの一番星を見て、私は一つ願い事をします。七夕ですからね。

「私が私を見つけられますように。」

 自分勝手な訳の分からない手紙だと思いますが、その方がいいんです。こんな手紙に囚われている時点でおかしいですから。今の不安から解放されて、しあわせな私になれる事を心から祈って、この手紙を終わりにしようと思います。

 気づけば夜空の星々も眠り始めたのか、藍色が世界を染めて、少し太陽の帯が色づき始めた。私も星に続いて眠ろうと思います。

 おやすみなさい。

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