元殺し屋メイドASMR

黒鬼

第1話 治療

//SE 駆け寄る音


「私が誰か分かりますか? いいえ、ここはジャパンのアキバにあるメイド喫茶ではありません。うーん……困りました、脳へのダメージもあるかもしれませんね」


「致命傷は全て避けたから心配するなって? 覚えているじゃないですか、まったく……」


//SE 頭をなでる音


「夜が明けたら闇医者の所に行きましょう。ここは私達が去年の夏頃に利用したモーテルの中です、追手は今のところ来ていませんのでご安心ください。あなたの頭の包帯を替えるついでに髪も洗いますので、身体の力を抜いて楽にしてくださいね」


//SE メイドが部屋を出ていく音→戻ってくる音


「お待たせしました、包帯を外しますね」


//SE 包帯が外れる音


「よかった、出血は止まっています。……どうやって治療したかですか? あなたが寝ている間に裁縫セットで出血箇所を縫い付けました。安心してください、消毒液の代わりにアルコール度数の高いお酒を傷口に注いだ時に泣き叫んだ事は誰にも言いません。……ちょっとだけ可愛かった……こほん」


「あっ、耳の中も血で汚れていますね……綿棒で掃除しましょう」


//SE 耳に綿棒を入れる音


「大きな仕事が終わると、いつも私に耳かきをおねだりしていたんですよ……えっ、そんなこと絶対していないですって?」


「やれやれ、どうしてわざわざ嘘を吐くのでしょうか。さあ、次は髪を綺麗にしますね」


//SE バケツに沸かしたお湯と水道の水を混ぜる音→スポンジでシャンプーを泡立てる音


「むぅ、髪の毛がとても固いです……今日から私と同じシャンプーにしましょう。どれくらい固いかって? そうですね、ジャパンで食べたバリカタトンコツラーメンぐらいです。覚えていますか? 貴方が麺の硬さを湯気通しで注文して、戦闘中にお腹を壊した事がありましたよね。お腹を抱えて、内股よちよち歩きの状態で銃を撃ちまくる姿が記憶にあります、今度行く時は麺カタ程度で注文しましょう」


//SE メイドが耳元でささやく


「あなたが変に格好つけないでも私は、あなたを見ているし、いつも気にしていますから」


//SE バケツにスポンジを浸して濡らしてから髪を洗う音


「湯加減、熱くないですか? もっと熱くですか……お待ち下さいね。え、めちゃくちゃ熱い? わがままですね、温度調整が面倒なので我慢してください。ふわふわのタオルで拭きますよ」


//SE タオルで髪を軽く擦る音


「耳の中も拭きます」


//SE 耳の中を優しく拭く音


「スッキリしました? ふふっ、こうして貴方を見ると拾ってきた犬みたいです。ドライヤーで髪を乾かします」


「犬といえば台湾にあるアジトに入り込んだ野良犬の……そうそう、ワン公でした。あの子は元気にしているでしょうか? 老夫婦に預かって頂いて二年経過していますし、この国での仕事が終わったら会いに行きましょう。美味しい台湾まぜそばも食べたいです。……台湾まぜそばは、ジャパンのナゴヤが発祥なんですか? 名前が台湾なのに? 嘘っぽいですね、これは調査が必要ですね」


//SEドライヤーを弱く当てる音→髪を撫でる音


「お顔の傷口に軟膏を塗りますね。……傷痕が気になるかですか? 私は男性の顔には傷があった方がカッコいいと考えます。丁度、手元にナイフがあるので私好みに傷を増やして良いでしょうか? そんな顔しないで下さい……冗談ですから」


//SE 顔に軟膏を塗る音


「この頬の傷……まだ残っていますね。私があなたに付けた傷……。あなたと出会った頃、私はボスの決めた悪者を始末する殺し屋でした。悪者がどんな人間か、どんな家族が居て、どんな風に生きているかも興味も無く、悪者にナイフを振るう毎日です」


//SE 顔にガーゼを慎重に貼り付ける音


「田舎町に潜む悪者の始末を命令された日でした。悪者が週末に必ず通っていたバーで、背後から首を狙った際に声を掛けてきたのが、あなたです」


//SE 顔に包帯を巻く音


「驚きましたよ、完全に気配を殺している私の背後をとったのですから。えっ、影が薄いだけ? そんな事……いえ、ありますね。で、ですが、印象に残らないのは才能でもあります、暗殺者に向いている……かも?」


「あなたが、その後も私にしつこく絡んできたおかげで、悪者に国外へ逃げられてしまい、私はボスから狙われる立場になったんです。仕事の出来ない殺し屋に居場所なんかありませんから……口内に怪我が無いか確認します、痛かったら手を上げてください。……違います、歯医者さんシチュエーションプレイではありません。ガッツポーズしないで下さい」


//SE あなたの唇にメイドの指が触れる音


「口内に傷無し、虫歯も無しです。ついでに羞恥心も無し。今のあなたと同じくらいに重症を負った私を見つけて、セーフハウスに運ぶと提案したあなたを私はナイフで切りました……あの時は誰も信用出来ない状況だったので……それでも私を助けると言って、無理矢理連れて行ってくれましたよね」


「下手をすれば、あなたは私に殺されていたかもしれません。何故、助けてくれたのでしょう?」


//SE メイドがベッドに座り直す音


「単に顔と身体が好みだった? ふふっ、とってもカッコ悪いし直球過ぎですってば。でも、そういう素直なところは、す……いいえ、全然まったく好きじゃないです」


//SE メイドがあなたの額に手を当てる音


「通常より体温が高いような……頭部の外傷により発熱が発生した場合、脳にダメージがある可能性があります。……知識としての理解ではなく、実体験での経験です。脳の状態を眼球で確認しましょう」


//SE メイドがライトを取り出してオンにする音


「光を見ててください、眼球の動きを検査しますので視界がぼやけたり、視界に欠けた箇所があったら教えてください」


//SE メイドがライトをゆっくり動かして、カチカチと入り切りする音


「大丈夫ですか? 続けます」


//SE メイドがライトをオフにする音


「はい。異常はありませんが気分が悪くなったり体調に変化があったら、すぐに教えてくださいね」


//SE メイドがバケツに水を汲み、タオルを絞る音


「汗をかいたお身体を拭きますので着衣を脱がします。……何、赤くなって顔を隠しているのですか? いつもシャワー後に下着一枚の姿で牛乳を腰に手を当てて飲んでいるじゃないですか」


//SE メイドが耳元でささやく


「もしかして、私が脱ぐ方を期待していたりしてますか?」


「バカな期待をしていないで、フォールドアップしてください」


//SE メイドがあなたの上着を脱がす音


「んっ? お腹の腹斜筋が隆起していて、すごく……し、失礼しました。どんなトレーニングをしたら、そうなるんですか? 三食食べて、マラソンとストレッチですか……トレーニングは明日から私と一緒にしましょう、よって朝五時の早朝単独トレーニングは今後禁止にします。早起きすぎて私が起きられません」


//SE メイドがタオルで背中を拭く、メイドの吐息が耳に当たる音


「大きな背中ですね。そして背中の筋肉がお互い主張するかのように隆起していて、般若面や鬼の顔に見えるような……気のせいですね」


「早く前側も心をこめて優しく綺麗に拭いてくれ? はい、タオルをあげますから自分でどうぞ」


//SE メイドがタオルをあなたの背中に投げつける音

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る