【パイロット版】何も知らされていなかった『王女』は専属の『魔術講師』に『洗脳』され、『女王』となる~セルタニア魔法国創世記~

誰よりも海水を飲む人

第1話 血塗れの女王

 

 この作品はパイロット版です。映画の予告みたいな感じで書いております。

 実験的な短編作品なので連載するかは未定とさせて頂いております。予めご了承ください。

 

 それではごゆっくりどうぞ(≧▽≦)


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 あの日、あの籠の中で。

 飼い殺しにされていた私を救い出してくれたのは……。

 

 白馬の王子様でも……。

 

 異国の吟遊詩人でもなく……。


 息をするのも忘れるほどの

 

 美しい、だった。


 

 

 ◇◆

 


 

 咲き誇る花々を揺らし、色彩豊かな花弁が舞い散る。

 温かな日差しの中、柔らかな風が吹き抜ける宮殿の庭園。その左右対称シンメトリの造形美が並ぶ一角。薔薇のアーチを潜ると屋根と柱だけの建造物ガゼボが視える。真っ白な円形の卓。その上に置かれた紅茶と焼き菓子。

 心休まるひととき。ゆっくりと流れる刻のなかで……。

 

 彼が囁く、言葉。


 「 お嬢様……この世界は偽りの世界です…… 」


 その玲瓏な声色が今も脳裏に焼き付く……。

 

 

 

 そして……。



 ……。


 

 ……。


 

 

 ◇◆

 

 

 崩壊の鐘の音が鳴り響く――小国 <セルタニア王国>。

 

 伝統と崇高――魔術の国。

 そう呼ばれた国はすでに腐敗し、瓦礫の山となっていた。


 砲撃音と硝煙に包まれる王都。美しかった王城は悲鳴と絶叫で埋め尽くされ、惨劇の城と化す。


 燃え盛る紋章旗。豪華絢爛に敷き詰められた絨毯の上に転がる衛兵の骸。

 煌びやかなシャンデリアは地へと落ち、硝子細工の破片が飛び散る。

 

 踏みしめる度、鳴らす――破砕音。


 その閑散とした王室内を、少女の靴音ヒールだけが響き渡る。


 口ずさむ無邪気な唄が鎮魂歌 レクイエムと変わる。

 

 もう、何も知らなかった……非力な少女の姿はない。


 <セルタニア王国> 王位継承権 第四位 王女 ルミナス・セルタニア。


 灰よりも白い、白銀の髪ホワイトアッシュを靡かせ。

 左眼が黄色、右眼が碧色の虹彩を持つ、鮮やかな金目銀目。その虹彩異色の瞳に灯す――覚悟の炎。

 纏う――鮮血色のドレスは堕天の黒へと染まる。

 

 最早、この国は列強の従属国と成り下がっていた。上流階級の貴族豚共が王よりも力を持ち、暴君のごとく振るまう。裏で横行する汚職、収賄。腐敗を極め、堕落する政治。

 結果、民達は深刻な飢餓と重税に喘ぎ、一つのパンを奪い合い、殺し合う 。


 その憎悪の果ての世相……。

 

 壇上に輝く黄金色、大型の魔獣の牙と鮮やかな魔石の装飾。この国で唯一、座ることが許される――玉座。


 続く、王への階段を一歩、また一歩と昇っていく。

 

 それは、血肉を喰らい、啜り、肥えるようなであった。


 ( 趣味が悪い…… )


 私はその嫌悪に眉を顰める。

 

 そのお世辞にも座り心地の良いとは言えない椅子に、傲岸不遜にもたれかかると……。

 脚を組み、頬杖をついて見せるのだった。

 

「 お嬢様。お待たせしました……全ての準備が整いました。 」

 

 配下の漆黒のローブ服の集団が私の眼下で跪く。


 「 分かったわ…… 」


 その集団を率いる青年が顔を上げ、微笑む。

 

 濡れ羽色の黒髪。男とも女とも言えない中世顔。この世の者とは思えない白肌。恐ろしく眼の惹く顔立ち。

 。 アルベス・ハンニバル。

 

 アルベスは見事な敬礼を見せると、視線で合図。


 両手を拘束され、暴れ、喚き散らかす――二人の罪人。


 ――瞬間、兵達に乱暴に放り出され、まるで芋虫のよう地べたに転がった。


 「 表をあげなさい 」


 上質な貴族の衣装に身を包む、小太りの男。

 ――。宰相 マルコム・ブルバスク 。

 

 ……と――。

 

 それに便乗し、鹿

 第一王子 レオン・セルタニア 。

 

「 ……貴方達は度重なる汚職と収賄の罪で国を貶め、更に裏で大国< エルンスト >と手を組み、国家転覆を企てた……相違ないわね? 」

 

「 ふざけるな!そんなの知らないぞ!それよりも早くこの拘束を解け! 」


「 そうだ!ルミナス!これは何の冗談だ! 」

 

「 いいえ、お兄様。冗談なんかではありません。これは、歴としたです 」


「 なに!?そんなの認められるわけないだろう! 」


 罪人とは思えない態度をとる両者。

 その喧噪にアルベスが、諭すように口を開く。


「 お静かに……女王陛下の御膳ですよ…… 」


「 な、女王だと!? 貴様のような継承権第四位の劣等王女が、か!? 」


 宰相マルコムの下卑た表情に、思わず溜息が出る。


 「 笑わせるな! 貴様、わしにこんな事して、ただで済むと思っているのか! 」


 その薄汚い口元から零れる、反吐の出るような言葉の数々……。

 まるで、自分の置かれた状況、立場が分かっていない。


 「 そうだ! 貴様は娼館送りにしてやろう! 何かしらの因縁をつけて、下級貴族達に売りさばいてやる! その身体が壊れるまで弄ばれ!嬲られ!……惨たらしく、殺ろしてやっ…… 」


 その言葉を最期に――宰相マルコムの首が胴体から切り離される。

 

 ――突然の介錯。


 その所業に王太子レオンは慄いた。


 「 ……な、……⁉ 」


 その虹彩異色の瞳が光芒一閃の光を放つ。


 アルベスの手から伸びた『』が血に染まり、その姿を現し……。


 ゆっくりとその血が絨毯を濡らす。

 

 「 先程も言いましたよね……お静かにしてくださいと…… 」


 アルベスは

 彼の眼には、それがさぞかし不気味であっただろう。

 その光景に肩を震わしていた。


 「 何だ?その魔術は……!?……お前!……まさか!……あの【黒の死神】か?…… 」


 そう、吠える王太子レオンの姿は酷く滑稽で不愉快なものであった。


 「 ルミナス! わかっているのか!? お前はこの男に騙されているぞ! 」

 

 そう、私はこの悪魔と契約をし、魂を売った。

 

 「 今ならまだ、間に合う! 今すぐやめさせろ! ルミナス! 」


 いいえ、お兄様。これは後戻りできないところまで、きてしまっているのです。


 「 聞いているのか! ルミナス! 」


 なぜ……貴方はいつもそうやって高圧的な態度をするのですか……。

 

 「 ルミナス! 」


 もしも、貴方が王太子として、人の上に立つ器量があれば……。


 こうはならなかった……。


 「 アルベス……もういいわ…… 」


 「 かしこまりました。 」


 冷酷非情な刃がその喉元を掻き捌く。

 

 王太子レオンは……。


 ひゅうひゅうと苦しそうな虫の息を見せていた。


 「 戦うことにしか頭が回らない残念な貴方に、最期に一つだけ教えてあげる…… 」


 徐々に虚ろになる、その瞳に刻み込むよう――その壇上から言い放つ。

 

 「 今日より私のこのが――、が――、こそが――、この国、唯一絶対の””となる…… 」


 『何をする気だ!?』と言いたげな、視線が泳いだ。


 「 ……この国は生まれ変わるのよ、新生< セルタニア””国 > として…… 」

 

 もう、そこには一片の未練はない。


 「 その為には貴方達の存在が邪魔なの…… 」

 

 虹彩異色の瞳が光芒一閃、揺れ動く。


 「 だから……早く消えて……頂戴 」


 その瞬間、言葉にならない断末魔が王城中に木霊し……。


 空の彼方へと、無情に散っていたのだった。


 

 

 ◇◆


 

 

 栄耀栄華を極めた、偽りの国は消滅し、歴史の影となる。


 王城の最上部。王都を一望できる場所。

 

 眼下を埋めつく、約十万の< エルンスト >の軍。


 敵は王都を包囲、殲滅の陣を敷く。


 対する セルタニア新生軍 約1万2千……。


 数的不利の籠城戦、そんな中。

 

「 お嬢様。全ての部隊の配置が整いました。いつでも出撃出来ます 」


 アルベスは不敵な笑みを浮かべる。


 「 そう…… 」

 

 この台本シナリオを描いたのは彼……。そして、私はただの共犯者。

 

 


 「 ……なら始めなさい。 」

 

 「 仰せのままにイエス我がユア女王よマジェスティ 」


 私達はここから始める。

 

 破滅と創成の物語を――。






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 お読み頂き誠にありがとうございます。


 この作品のテーマは


 『 悪魔のように残忍で美しい少年に、少女がぐちゃぐちゃされ豹変していく。愛と復讐のダークファンタジーです 』

 


 繰り返しになりますが

 こちらはパイロット版となっており

 続編物にするのかどうかは現在、検討段階です。


 気になった方、『少しでも面白そう!』と思った方は


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 また、

 『こんなフック(読者が興味をそそられるポイント)あったらいいな』という


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