第230話 突発放送2

「え? 勝手に入ってこないでくれます?」


「おいっ!! 先輩やぞ!!」


「あかり先輩勝手に出て大丈夫なんですか?」


「さっきうちのとあんたんとこのマネちゃんに確認したから大丈夫。ってことでヨーソロー宇宙未来でーっす」


「はーい、ニンニン緑木葉でござる」


「ってことでなんかおなマンの2人も来ちゃいました」


「来ちゃいましたじゃないよ!! 魔法使いさんてどういうこと!! うちらが先に唾つけたのに!!」


「つけてないでしょあかりちゃん!!」


「まあついたようなものでござるな」


「このちゃん!?」


 普段常識枠として数えられている木葉だが、完全にこの件に関しては常識枠ではなくなっている。


「えーとその私を助けてくれた霊能者さんがどうやら魔法使いさんだったみたい」


「はあ!?」


「ほんとでござるか!?」


「……そうよ」


 渋々と弥生が答える。

 

「え? イケメンで超お金持ちで、ゲームがプロ並にうまくて、芸能界にコネがあってやさしくて夜も強くてそれでいて霊能者? 天は何物与えてんの!!」


「そりゃ争奪戦になってもおかしくないでござるな」


「そんだけ恵まれてるなら私一人くらい面倒みてくれないかなー」


「あんた十分稼いでるでしょうが」


 マーチは珍しくいるかに容赦なく突っ込む。完全にマーチではなく弥生になっている。


「なにいってんのマーちゃん。こんな商売いつまで続けられるかわかったもんじゃないでしょ。それに私は人の金でぐーたらして生きたいの!!」


「この女……駄目な方向に男らしすぎる」


「ところでこの放送の枠のことなんだけど、マーちゃんなんか知ってるの? あっ一応みんなに説明しておくと、今日のこの枠、私とった覚えが全くないのよ」


「多分だけど、いるかに取り憑いてた悪魔が保険をかけたんだと思う」


「保険?」


「本人が嫌がってることはできないって言ってたでしょ? だから直接部屋に人を呼べないし、そもそも出歩けないしで悪魔のほうが困ってたんだと思う。それで私とマネちゃんの電話でおびき寄せができなかった場合に配信で人を集めてそこのベランダから飛び降りる気だったんじゃないかな。本人がよく痛みとかをイメージできてない自殺ならできるらしいし」


「怖すぎる!! えっなに、ひょっとしてこの時間までに魔法使いさん来てなかったら自殺配信になってたってこと?」


「そうなるね」


「あっぶなっ!! ぎりぎりじゃん!!」


「首の皮一枚つながったね。私に感謝しなよ」


「ありがとマーちゃん!! おっぱい揉む?」


「私にもついとるわ!! あんたよりは小さいけど!!」


「でも悪魔はマーちゃん達よんでどうしようとしてたんだろ?」


「多分怖がらせて逃げさせて、そこで飛び降りて入口でばったりって作戦じゃないかな」


「嫌すぎる!!」


「まあ信じてない人もいっぱいいるっていうか、ほとんどの人が何いってんだって思ってるかもしれないけど、いるかがやばかったのは本当」


「あれはやばかったからね。泊まったアタシらが一番良く知ってる」


「今日だってあかり先輩来なかったら1人じゃ怖すぎて絶対来られなかったでござる」


「別に事故物件て訳じゃないからねここ」


「もう少しで事故物件になりそうだったけどね」


「怖いよマーちゃん!!」


「でもこれで心霊的ななにかがあったらマーちゃんに頼んで魔法使いさんに見てもらえば安心てことがわかったね」


「一安心でござるな」


「またあっても私気づかなかそうだけど」


「あんたはそのままでいいんじゃないかな」


「マーちゃんひどくね?」


「そういえば風ちゃんもなんか前の放送でいってなかったっけ? 家の中の物が動いてるとか、誰かに見られてる気がするとか」


「こわっ!! Vtuber心霊被害多すぎないか!?」


「ちょうど魔法使いさんこっち来てるし、見てもらおうか? 後で風ちゃん連絡してみるね」


「じゃあ時間もちょうどいいし終わろっか。またねー」


「えっ!? ちょっと挨拶くらいさせ――」



 この放送は終了しました。














「で、俺を呼んだの?」


「ごめんねたっくん」


 武藤は再び春華の家へと来ていた。


「この人が魔法使いさん!!」


「旦那様!!」


「もう旦那様扱い!? このちゃん暴走しすぎでしょ」


「ねえたっくん、私のおっぱい気持ちよかった? たっくんさえ良ければもっと気持ちいいことしてあげちゃうんだけどなあ」


 そういって春華は自身の豊満なそれを下から持ち上げてアピールしてくる。


「……弥生?」


「ごめん……なんていうか……ごめん」


 唐突なVtuber達の攻勢にさすがの武藤もたじろいだ。


「弥生のいた事務所ってさ。Vtuberなのにオーディションに顔の項目もあるの?」


「え? そんなのないと思うけど……なんで?」


「いや、可愛い子しかいないからさ」


「「「!?」」」


「……」


 弥生は思った。またか……と。この男、下心があるわけでもないのに無意識に女性を褒めるのである。しかも全くお世辞でもなく本気で思っている為、余計に太刀が悪かった。


「それはプロポーズと受け取っていいわけ!?」


「なんで!?」


 未来が暴走したように叫ぶ。

 

「生まれて初めて男の人にかわいいっていわれた!!」


 それに続くように木葉も顔に手を当てて叫んだ。


「超かわいいでしょ。言われなれてるんじゃないの?」


「……ふつつかものですが」


「なに言ってるのこのちゃん!? 三つ指つかないで!!」


 女子校出身者はチョロかった。イケメン、金持ち、やさしい、頼りになるという特攻複数持ちである武藤にとって彼女達の装甲は紙以下であった。

 

「あはははっ2人とも狂ってておもろー」


「笑い事じゃないでしょ春華!!」


「そんなことより風香先輩のところにいかなくていいの?」


「!? そうだった。たっくんちょっと一緒に行ってほしいところがあるの」


「??」



 そうして混乱したまま、猪瀬の車を呼んでメガネにマスクをした怪しい一同はVtuber風花風香の元へと向かった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


Vtuberはネットで調べただけで見たこと無いので、実際はこんな放送じゃないとかツッコまないでください。想像だけで書いたフィクションなので。

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