第2話

「ちゅっ・・・はぁはぁ・・・ペロペロ」


「・・・お、おい・・・いつまでやってんだよ・・・」



俺は目の前にいる犯罪者の女に声を掛ける。

こいつは俺が声を掛けた途端にホテルに行くと見せかけて自宅に連れて行き、いま見て分かる通り俺を部屋に監禁したヤバい奴だ。



「あ、まって・・・ちゅっ・・あと5分だけだから・・・」



いくらここが元の俺のいた世界じゃないからと言って、出かける前に犯罪になりそうなことは調べた(他意は無い)から、人を監禁すること、ましてやこんなに美少年かつ未成年の男を監禁することが犯罪になることはわかっている。むしろこの世の重罪ランキングを見たら上から3番以内には入るレベルの重罪だ。


美少年は国宝。これがこの世界共通のルール。

世界は違えど行き着く先は同じなんだな。


・・・それにしても、まさか声を掛けた一人目の女がこんな地雷女だったとは・・・イケメン転生させて貰えてラッキーって思ってた途端にこれかよ・・・くそっ・・地雷女なら地雷女ですよって書いておけよ!俺にとって希望に満ちた時間になるはずだったのに・・・返せ!返せよぉぉおおおお!


「・・・ふぅ、美少年エキス注入完了! ほんと夢みたい・・これが・・私の・・・」


俺が脳内で愚痴っている間に、目の前の女はようやく俺の身体を貪るのに満足したのか、俺の身体に埋めていた顔を上げた。



その顔は俺が目に留めただけあって、前世の基準なら清楚系アイドルとしてやっていける整った容姿をしていた。黒髪色白好きの俺からするとそれはもうドンピシャ。


・・・実際拘束されてるこの現状も、悔しいが、決して俺がMな訳ではないけど、嫌かって言われたら嫌ではなくむしろ・・・くそ、この性格悪くても顔が良ければ怒りが薄まる現象に誰か名前を付けてくれ。そんで法律で禁止してくださいお願いします。


前から薄々そうなんじゃ無いかって思ってたけど今確信した。

世の中は性格じゃなくて顔。これが至言。世の中ってそういうもんなんだね。


顔が悪いからせめて性格は良く、と心がけて結局彼女の一人も出来ずに朽ち果てた前世の俺は一体何だったんだろうほんと。まあそれはあくせくと積み重ねた貯金にも言えるけど。デート用、新婚旅行用、プレゼント用。もったいなかったな。



「えっと、田中君・・・なか君って呼ぶね♪ なか君ご飯まだって言ってたよね?」


「あ、はい・・・うん」


「ふふ、なんで敬語なの」


女は俺の反応を見て楽しそうに笑った。

流石に拗らせすぎたな・・・童貞。


女慣れしていない奴あるあるその①:女に話しかけると咄嗟に敬語を使う。

・・・はい、それは俺のことです。



「夕飯作ってくるから待っててね?」


「あ、うん・・・ありがとう」


女はそう言い残すとスリッパをパタパタと鳴らしながら部屋から出て行った。丁度お昼食べる前だったから・・・は?夕飯? 嘘だろ今何時だよ・・・・俺があの女に連れられてここにやって来たのが多分14時らへんだったのはたぶん合ってるはず。


・・・あの女どんだけ俺の身体ペロペロしてたんだよ犬かよ!発情しすぎだろ!


だから今、視線の先でそんな女の後ろ姿に見とれてしまった俺は悪くないはずだ。相手は犬なんだから。

俺は昔から重度の脚フェチで、若い子の脚は大好きなのだ。手の届く市でスカートなんて履いてるもんだから自然と目線が吸い寄せられてしまう。



「・・・って待てよ。おかしいだろ今の会話」


女相手に発情している場合じゃなかった。


①待っててね?(女)

→監禁されてるんだから待ってても何もないが?


②ありがとう(俺氏)

→いや、監禁されてるのに呑気かよ。ありがとうって感謝している相手はお前を監禁した犯罪者だろ。


・・・なんで犯罪者と被害者で晩飯の話をしてるんだよ。危機感なさ過ぎだろ。



あと頼むから誰かツッコめよ。





☆☆☆

次回こそは・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る