17の水族館

ガエイ

プロローグ

 隣に住むヒカリの両親は仕事が忙しい人だったようで、ヒカリは夕方になると時々母親に連れられて我が家に預けられることがあった。


 この頃、自分と近い年齢で一番身近な存在だったのは間違いなくヒカリだった。


「ヒカリちゃんはこのまえようちえんで、しょうらいのゆめはなににしたの?」


「わたしはおよめさんになりたいってかいたよ」


「そうなんだ。でも、しょうらいのゆめはおしごとじゃないの?」


「うーん、けっこんはおしごとじゃないの? そうだ、あとわたしね、ウェディングドレスきてみたいの」


「なんかへんなの、おしごとじゃないじゃん」


「やっぱりそうなのかなぁ……。わたしハルくんとなかよしだから、けっこんしたいとおもってたのに……」


 おそらく初めて他人から向けられた好意に対して、幼いながら応えようと思ったのがヒカリに対する理解の始まりだったのかもしれない。


「うーん、ぼくもヒカリちゃんとならいいよ」


「ほんと!? じゃあ、やくそくだよ! ハルくん!」

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