第127話 新たなトラブルメーカー。

#彩綾side ────



高校の時、私はホントに頭が悪かった。

勉強なんかしなかったし、遊ぶ事しか考えてなかった。


中学の時いじめられっ子だった事がトラウマで、高校に入ってからは、無理してカースト上位の奴らと一緒にいるようになって、いつの間にかそれが普通になった。


自分より弱い奴らで遊んだりストレス発散する事を覚えて、ムカつく奴がいれば仲間集めて虐めたりして、それを見て愉しむようになった。

…人を虐げるのは楽しい。


今思えば、自己顕示欲が強かった私は他人を虐めて、自分の立ち位置を確かめてただけ。

人が私の言う事を聞いたり、私を見てビクビクする様子が私の自己肯定感を爆上げしてたから。


しばらくして学校で人気のあった颯斗と知り合って、颯斗と仲の良かった佳弥を含めて一緒にいる事が増えた。


佳弥は颯斗ほどじゃなくても結構ルックス良くて人気があるし、颯斗は言わずもがな。

その2人と一緒にいる事で、他の女達の羨望の眼差しが集まる事がたまらなく気持ち良かった。


1つだけ問題だったのは…。

私は本当に、一緒にいるだった事。


颯斗と佳弥は元々仲良くて、私はその2人に勝手について回ってただけ。

2人も別に嫌がりもしなかったから、そのうちそれが普通になったけど。


何とか人気者の2人の特別になりたくて、颯斗と2人きりになった時に迫ってみたら、何も特別な事はない。


普通にトイレに行ったり食事したりする事みたいに、なんの特別感もなく颯斗との最初の一回が終わった。


あの時の私は気付かなかったけど、迫った時の颯斗は慣れた感じだったし、ヤッてる間も興味なさそうだった。


例えるなら、特に欲しくもなかったけど、一緒にいる相手に「食べる?」ってアメ玉を渡されたから、取り敢えず口に放り込んだ…って感じ。


それから2人きりの時は迫るようになって、迫れば颯斗もとりあえず反応してくれるって関係が続いた。

まぁ…お互い何も言ってないけど、付き合ってるって事にしても良いんじゃない?って関係。

……でもそれだけ。


頭もいいしルックスは最高、家もけっこう金持ち。

まぁ性格は問題ありだったけど、けっこう高スペックだったから佳弥じゃなくて颯斗にしたのに、実際付き合ってみたら自分にしか興味がない、ただの自分大好きナルシスト&俺様モラハラクソ野郎で最悪だった。


……この男は、彼氏にするべきじゃない。仲間や友達止まりにしておいた方がいい。それが私の結論。


それからすぐに佳弥にターゲット変更して、佳弥とも付き合うようになった。

自分の親友が私と身体の関係がある事に、お互いに気付かなかった、マジでアホ。


わりと3人の関係は続いた。

意外とバレないもんだよね。


まぁ結果的にはバレて、私は外見だけのクソ野郎じゃなく、多少ルックスが劣っても中身がマシな佳弥を選んだ訳だけど。


ルックス的には颯斗の方が好みだけど、中身がアレじゃ付き合えない。


佳弥とは高校卒業してからも、しばらくは付き合ってたけど、親友と二股されてた事はずっと引っ掛かってたみたいで、結局別れた。

これなら最初から佳弥狙いで行っとくべきだったと今なら思うけど……。


「颯斗メッチャ好みなんだよなぁ……」


この一言に尽きる。


あれで性格さえもう少しマシだったら…とずっと思ってたけど、颯斗と同じ大学へ行った友達に、最近の颯斗は性格変わったんだと聞いて、また興味が出てきた。


会えればラッキー。会えなくても、それはそれで別にいっか…みたいなノリで、颯斗が進んだ大学近くの、颯斗が行きそうな場所をウロつくこと数ヶ月。


久々に会った颯斗は高校の時から全く変わってなかった。


(誰だよ…、変わったとか言った奴)


まんま高校の時のクソ野郎から、変わってねーじゃん。

でも久し振りに見る颯斗は相変わらず格好良かった。


また前みたいに身体の関係だけでも…と思ったけど。


(普通に断られた、しかもメッセで……)


え、何で?

付き合うっても、ただヤるだけなんだし…断る理由ある?

聞き返そうにもあの野郎、ブロックしてやがる。


(ムカつくわー、会った時も佳弥の名前出してたし…、まさかホントに二股されてたの引きずってるワケじゃないよね?)


…いや、もし引きずってるなら…。

それはそれで、私に少しは気持ちがあった?


(……んな訳あるか。そんな男じゃねーだろ)


そう思いつつ、私は颯斗へのなくなったはずの興味が、また湧き上がって来たのが分かった。

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