第50話 夏だ!納涼!!肝試し!!!

部屋までみゆりを連れて行くと、愛莉はいなかった。

女に怪我させたなんて、愛莉に知られたらうるさそうだ。

…少し安心した。


椅子に座らせて様子を見ると、みゆりは黙って足を動かして確認する。


「痛みは?」


「んー、平気みたい…だけど」


みゆりの足をそっと触ると、まだ患部が少し熱を持ってるようだ。

だが本人が痛くないと言うのだから、動かしさえしなければ、痛くないんだろう。


「…そうか、マジで悪い」


「気にしすぎー。別に真城クン、力は入ってなかったし?私が勝手にバランス崩しただけよ?こんなの湿布を貼っておけば大丈夫」


…まぁ、俺が乱暴に振り払った元々の原因もコイツだしな。

だけど怪我させちまってる以上、悪いのは俺だ。


「とりあえず休んでろ、肝試しもキャンセルだな。大和には伝えておく」


「えー?真城クンと合法的にイチャイチャできる、せっかくのチャンスなのにぃー」


「誰がするか、アホ女」


…どうやら、俺が少し変だったのは気付かれてないみたいだ。

いつものみゆりにホッとする。


「じゃあな」


このまま二人きりで部屋にいたら、いつまた変になるか分からない。

俺はみゆりから離れると、そそくさと部屋を出た。



#みゆりside ────



正直驚いてる。

今夜の颯斗はいつもと違いすぎて、逆に戸惑っちゃうわね。


気付かないフリで済ませちゃったけど、ベランダで見せた颯斗の顔。

あれは確実にいつもの颯斗とは違う、別の男の目みたいに見えた。


あんな颯斗の顔を見たのは初めてで、つい動揺して無かった事にしちゃった。


(私の身体を見下ろした颯斗の顔…、思い出すとドキドキする)


皆んな勘違いしてるけど、私は別に男好きな訳でもないし、遊んでる訳でもない。


男性経験だって、皆んなが想像するほど豊富じゃない。

あんな視線で見られて、動揺しないワケがないっつーの。


(でもだんだんと、颯斗も私を意識してる…!次だわ、次こそチャンスがあったら、今度こそ…)


「…あ、痛ッ!?」


つい立ちあがろうとしてしまった。

私は痛みに溜め息を吐きながら、また椅子に腰掛けた。



#颯斗side ────



肝試しは無理だと大和に伝えるために自室に戻ると、大和がリボンを持っていた。


「…何だそれ?」


「肝試しに参加する時に、腕に巻いておくリボンだってさ」


「…受付しちまったのか」


「え?何?」


「いや」


まぁ良いか、大和は参加したそうだし、大和の相手は愛莉だ。

みゆりがいけないから俺は参加出来んが、愛莉もいるし、一緒に行くだけ行くか。



♢♢♢♢♢♢



そして開始時刻になって受付会場へ行くと、なんとみゆりが待っていた。


「…みゆり?お前…」


「遅かったわねぇ」


慌てて駆け寄って、みゆりの耳に唇を寄せて小声で話す。


「お前、足は?」


「え?何の事ぉ?」


そう言うみゆりの足首を見ると、確かに腫れは引いてるみてぇだ。


(心配させねぇように、俺に気を使ってるのか?)


怪我させた手前、出来れば大人しくしていて欲しいが、逆に怪我をさせたからこそ、強く出られない。


「…無理すんなよ」


結局、最初の予定通りに4人で肝試しに参加する事になった。

チラッと愛莉を見ると、真っ青な顔で俯いている。


(みゆりよりアッチがヤバそうだな)


みゆりが素直に休んでいれば、何だかんだ理由をつけて愛莉を部屋に帰して、俺らも戻るつもりだったが…。


こうなったら仕方ない。

愛莉もガキじゃねぇんだ、怖けりゃ自分で大和に言うだろ。


そうこうしてる内、すぐに俺とみゆりの順番がやってきた。

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