第21話 あの日の後悔。

どうやら昔の事を思い出して、ぼーっとしてたらしい。

真城くんが変な顔して私を見ていた。


「あ…、ごめんね、ぼーっとしてて…。実は私も、いつもここでレポートやってるの。たまたま見掛けて…」


「…そうかよ」


今度は振り向かずに返事だけをする背中には、明らかに私を拒否している雰囲気がありありと見える。


「…レポートの邪魔…かな?もう行くね?挨拶したかっただけだから…」


そう言って、私はその場を立ち去った。



#颯斗side ────



「…何だったんだ?」


立ち去る晴子の後ろ姿を、俺は首を傾げて見送る。

…目的が分からん。


まさか本当に、姿を見掛けたから挨拶に来ただけなのか?

まぁ律儀な女だから、あり得なくはない。


(…やっぱり…。今のアイツと、告白した聡太を見た過去のアイツは、なーんか別人みてぇだな)


同一人物である事は間違いない。

間違いないが…。


(あの日…、聡太はクラスの奴らに言われるままに告白した)


自分から呼び出して告白…なんて勇気は、聡太アイツにはなかったから、これもチャンスと前向きにとらえて告白したが、やっぱり告白なんかするべきじゃなかったんだ。


(もともと聡太アイツは、告白なんかするつもりなかったんだからな)


あんな最低なで告白なんか…、するべきじゃなかったんだ…。


告白するなら、ちゃんと自分の意思で呼び出して告白するべきだ。


(我ながら、最低最悪な告白だったな…)


そう考えると、今更だがあのクラスメートの男達への怒りが甦る。


「…はぁー…、思い出させんなよ。…クソ女…」


会いたくなかった。

あれは…、新見晴子は、聡太の…いや、俺にとって悪夢の象徴なんだ。



♢♢♢♢♢♢



それから数時間、集中してレポートを進めて家に帰ると、実家から電話があった。


玄関で靴を脱ぎながら電話に出ると、キッチンの方からいい匂いがする。

愛莉が夕飯を作ってるらしい。

…この匂いは炒め物だな。と思いながら電話に出る。


『あ、颯斗?母さんだけど』


「あぁ、はいはい。…何?どうかした?」


返事をしながらリビングに入ると、愛莉が笑顔で出迎えて来る。

…エプロンなんて、いつの間に買ったんだ。


「今週の日曜に地元のお祭りがあるんだけど、あなた帰って来れない?」


「…祭り?」


そういや、地元では毎年夏になると、神社で祭りをやってたっけ。

祭りという言葉を聞きつけた愛莉が、興味津々で近寄って来る。


「んー、帰れなくもないけど…。何で?何かあるのか?」


しっしっと、犬猫を追い払うような仕草をすると、愛莉はふてくされた顔でキッチンに戻った。


『今年はお父さんが役員で、お祭り準備とか色々とやらないといけないんだけど、張り切りすぎて腰を痛めちゃってねぇ…』


…歳考えろよ、クソ親父が。

もう40も半ば…いや後半だろう?


『テント張りしてる時に、無理しすぎたのね…。今も痛くて動けない!って寝込んでるのよ』


「…はぁ…、全く…」


『それでね?母さんには無理だし…。颯斗が帰って来て、お父さんの代わりをやってくれないかしら』


祭りの準備か…。

手伝いに帰れば地元の友達とも会えるし、大学で晴子と顔を合わせる危険もなくなるし、少し帰っても良いかもな…。


「分かった、祭りは今週末だよな?金曜には行く、俺に何が手伝えるのか分かんねーけどな」


そう言って電話を切ると、愛莉がやって来る。


「ね、ね、ね!祭りって地元の?帰るの?行くの?」


「うるせーな、親父の代わりに祭りの準備を手伝えって電話だよ」


「じゃあ颯斗帰るんだよね?私もその日は帰って、お祭り行こーっと」


「…勝手にしろ」


あんなに田舎には帰りたくないって駄々こねてたくせに…。

おじさんの許可を貰ったら、急にコレだ。


(ん?でもこれはチャンスじゃねーか?)


愛莉が田舎に帰るなら、その時におじさん家に無理矢理にでも帰らせれば、俺の優雅な一人暮らしライフが戻って来る…!


「…いや、いいな。一緒に帰ろう、それが良い」


「…へ?」


「地元の祭りは大切だからな、参加した方が良いに決まってる」


うんうん。と頷きながら言うと、愛莉は嬉しそうに顔を綻ばせた。


「やったぁ!一緒にお祭り行こうね!」


その事に関しては返事をせず、無言でスルーする。


連れ帰っちまえば、こっちのもんだ。

荷物は後から送り返せば良いんだからな。

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