第14話 幽霊なんか怖くない。
#愛莉side ────
あんなにジュース飲むんじゃなかった。
真夜中、トイレに行きたくなって目が覚めてしまった。
(どうしよう…、怖くて部屋から出られない…)
実家とは違う、初めて泊まる場所。
いくら颯斗がいるって分かってても、怖いものは怖い。
壁を挟んだすぐ隣のリビングに颯斗がいるけど、さすがにこの歳になって、怖いからトイレについて来てくれとは言えない。
(颯斗のスマホなんか覗くんじゃなかった…)
タイミング悪く画面に映っていた幽霊の映像を思い出して身震いする。
(大丈夫、怖くない。サッと行って、サッと帰ってくれば…)
そおっとドアを開けると、真っ暗な廊下。
暗がりから何かが出て来そうで、思わず足を止めると、隣の部屋…、リビングのドアが開いた。
「…ひッ…!!」
つい声をあげると、颯斗が顔を出す。
「…こんな時間に何してんだ」
「…ト…トイレに起きただけよ、颯斗こそ何よ」
「ずっと挙動不審な気配がしてたんでな、もしかしたら怖くてトイレに行けねーんじゃねぇかと思っ…」
「バッカじゃない!?そんな訳ないでしょ!トイレくらい行けるわよ!」
「だったらウロウロしてねーで、とっとと行って寝ろ」
そう言うと、颯斗は部屋に戻ろうと踵を返した。
#颯斗side ────
「…あ!…待っ…」
部屋に戻ろうとすると、愛莉が焦ったように引き止めてくる。
「…?何だ?」
「……」
「…??何だよ?」
振り返ると、愛莉はモジモジしながら足踏みしている。
…絶対トイレだな、しかもかなり我慢してると見た。
(…やっぱり怖くて行けねーんじゃねぇかよ)
おそらく、怖くて行けないから一緒に行って欲しいが、それを言えない。…こんなところだろ。
(はぁ…、仕方ない…)
俺は諦めて廊下の電気を点けた。
「…寝れねぇから、もう少し飲むか」
そう言うと、愛莉はパッと顔をあげる。
「俺は寝れねぇから、もうしばらくリビングで酒飲んで起きてる。少しうるさいかも知れんが、お前はトイレに行ったら、とっとと寝ろよ。良いな?」
そう言って廊下に続き、リビングの電気も点けると、家の中があっという間に明るくなった。
俺も起きてるし、家中が明るい。
これなら怖くねぇだろ。
愛莉の様子を見ると、少しだけ安心したみたいだ。
「こんな時間にまた飲むわけ?飲みすぎじゃない?」
誰のせいだと思ってる。
少しイラッとするが、そう軽口を言ってくる声色に震えがなくなっている。
…大丈夫そうだと、俺はリビングに戻った。
♢♢♢♢♢♢
ホントは飲みたくなったが、あぁ言ってしまった手前、冷蔵庫から缶ビールを取り出してソファに座る。
「…ふー…ッ」
冷たいビールを一気に半分くらい飲み干すと、暑かったせいか気分がいい。
(まったく面倒な女だな…)
ガキの頃から素直じゃなかったが、全く変わってないらしい。
(幽霊や暗い所が怖いなんて子供かよ)
ここは俺の家だ。
幽霊なんぞ現れてたまるか。
(…いるなら、俺は遭遇してみたいけどな)
もうビールは飲みたくなかったが、愛莉が眠るまでは起きていてやるかとテレビを点ける。
ザッピングしながら、適当に◯mazonの海外ドラマで手を止めた。大好きなホラーだ。
古い洋館に越して来た家族が、心霊現象に悩まされるという、ありきたりな内容だが、ホラー好きには意外と高評価らしい。
ずっと気になっていたが、見るタイミングを逃していた映画だ、良い機会だから見ちまおう。
さわりを見ると、なかなかに怖そうだ。
CGと実写を上手く融合している。
(さて、見ながら寝…、ん?)
物音に振り返ると、そこには真っ青な顔の愛莉が立っている。
視線はテレビに釘付けだ。
…なんでこっち(リビング)に来たんだ。馬鹿なのか?
トイレ済んだなら寝室戻れよ、寝ろよ。
「な…何見てんの…、信じらんない…」
「……、…お前なぁ…」
俺が何を見ていようと、お前には関係ないだろうが。
だが泣きそうな顔をしている愛莉にそれは言えない。
そしてそれが決定打で、結局一人で寝る事が出来なくなった愛莉は、無理矢理に俺が見ていたテレビを消し、そのままリビングに居座った。
もちろん俺は愛莉に付き合って、リビングで寝ずの朝を迎えるのだった。
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