第7話 目を付けられる。


「颯斗って酒強いの?」


「…ん?あぁ、…ふつー?好きだけど強くはないな」


確かに酒は好きだが、強いかと言われると…どうなんだろうな?


「酒好き?じゃあオススメの飲み屋があるんだよ、今度二人で一緒に飲みに行こうよ!」


うわ、マジか。

誘ってくんなよ、行くのも断んのも面倒だろうが。


「…あー、まぁ…機会があったら…。つーか、野郎と二人で飲みなんて、彼氏が嫌がんじゃねーの」


さりげなく断ると、千夏はニヤーと笑う。


「彼氏?いないいない!興味ないし!周りに男は多いけど、皆んな友達だよ!私、女友達少なくてさー。男の方が楽なの」


…これは何のアピールだ?

俺に友達になって欲しいのか?


まぁ、女嫌いの俺にとっては、the女!って感じの、他の女と違って、圧倒的に話しやすいのは確かだな。


だけど問題は…。


「ねー、それでさぁ…」


この距離感だ。

なんでコイツは、こんなにベタベタくっついて来るんだ。


正直、気持ち悪いし、他の奴ら(主に野郎共)の視線も痛ぇし、白い目で見てくる女達の視線もキツい。


こっちからベタベタしてる訳じゃねーのに、何であんな蔑んだ目で見られなきゃなんねーんだ。


そもそも、俺は女は嫌いだし苦手だ。

こんなベタベタされても困る。


いくら男っぽいとは言え、女である事は違いねぇんだ。

野郎との距離感おかしいだろ、この女。


(…ん?)


違う。

蔑んだ目で見られてんのは千夏だ。


(……、あー…。なるほど?)


何となく読めた。

一緒に合コンに来てるものの、千夏は女達と仲良くないな?


(何で来たんだ。…つーか、何で誘ったんだ)


全く女達のやる事は分からない。



#千夏side ────



トイレから戻った私は、また颯斗の隣に座って、少し甘えるみたいに颯斗の肩に寄り掛かる。


「颯斗って酒強いの?」


「…ん?あぁ、…ふつー?好きだけど強くはないな」


「酒好き?じゃあオススメの飲み屋があるんだよ、今度二人で一緒に飲みに行こうよ!」


こういう女にモテそうな男は、下手に女らしさをアピールするより、友達感覚で楽に付き合える女の方が、仲良くなれたりするものだ。


「…あー、まぁ…機会があったら…。つーか、野郎と二人で飲みなんて、彼氏が嫌がんじゃねーの」


…おっと。

さりげなく、彼氏がいるかどうかの確認がきた。


「彼氏?いないいない!興味ないし!周りに男は多いけど、皆んな友達だよ!私、女友達少なくてさー。男の方が楽なの」


彼氏がいるかどうかを確認してきたって事は、私に気があるんだろう。


私は気分よく、女友達を見ながら、颯斗に話し掛け続ける。


「ねー、それでさぁ…」


だけど女友達に見せ付けるように、さらに颯斗に身体を寄せると、颯斗は私から離れた。


「…おい、あんまくっつくなよ」


「え、なになに?照れてるの?やだ、女扱いされるの新鮮だわ。私って女らしさ皆無で、男友達に女扱いされなくてさ。みんなスキンシップしてくるから、それが普通になってたわー」


暗に、遠慮しなくて良いんだと伝える。


「それより連絡先教えてよ、週末とか空いて…」


空いてる?と聞こうとすると、店の引き戸が開く音と、店員の「いらっしゃいませー」という声が聞こえる。


私を見ていた颯斗は、何となく…といった感じでそっちを見て、私もつられて出入口を見た。


「…あ」


入って来たのは、顔見知りだった。



#颯斗side ────



ベタベタとくっ付きながら、連絡先を聞いてくる千夏から、どうやって逃げるかと考えていると、新しい客が来たらしい。


…女だ。


千夏から逃げるように、ついそっちを見た俺は、こっちに向かって来る女の顔を見た瞬間。

思わず口を開けたまま、見入ってしまった。


何故なら、その女…。

今の俺…つまり、颯斗になる前の俺が好きだった女子にソックリだったからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る