第4話 お約束なパターン。
終電を逃した後、行ける所なんかホテルくらいだ。
それがビジネスホテルだろうと、ラブホテルだろうと、ホテルはホテル。
最初はビジネスホテルに…と思ったが、男性向けエロ漫画の展開よろしく、どこも満室。
(…ラブホしかねぇか)
クソ、女は嫌いだってのに。
エロ漫画みたいな展開になりやがって、嬉しくねぇんだよ。
だが酔っ払って、正体不明になった女を一人で放っておくのも気が引ける。
とりあえず部屋まで運んでから考えるか。
#千代音side ────
これは一体どういう状況なのか。
飲み会で隣に座った事までは覚えてるけど、なんで私が真城君とホテルにいるんだろう。
(えーと、少し皆んなとお話しして…)
そうだ、それからはずっと一人で飲んでて、途中から記憶がない。
「あの…真城君…、私…その…」
「ん?少し頭スッキリしたか?…時間が時間なんでな、終電終わってるし、とりあえず泊まれる所に連れて来た。こんなとこで悪かったな、ビジホが空室なくてさ」
「あ…そ…、そうだったんだ…」
そりゃそうだ。
真城君が私なんかと、そんなつもりでホテルに来るはずがない。
とは言え、状況が状況なだけに、ドキドキしてしまう。
漫画とかなら、この後は…。
(……!!)
自分で想像して自分で照れてしまう。
そんな事は起きないと分かっていても、緊張する。
こんなにカッコいい真城君と一緒にいるんだから、それは仕方ない。
「意識しっかりしてるなら、熱いシャワー浴びた方が良いぞ?少し酒が抜けるからな」
「あ…うん…」
シャワーという単語に、さらに緊張が高まる。
大好きなTLコミックなら、シャワー後の女の子の姿に、我慢できなくなった男の子が…。
(…って!何考えてんの!私ったら、少女漫画の見すぎ…!!)
でもでも、男の人って普段はメガネの女の子の、メガネ外した素顔にドキッとするとか。
「……」
それにこのラブホのシャワールームって、部屋から丸見えだ。
ちらっとシャワールームを見ると、ご丁寧にもベットのシーツで目隠しがしてある。
(…真面目か)
遊び人かと思ったのに、そうでもないのかも。
とにかく緊張半分、期待半分でシャワーを浴びていると、急に熱いシャワーを浴びたせいか、立ちくらみがする。
つい倒れそうになって、壁に手をつこうとすると、その手は石鹸で滑って、その場に転んでしまう。
「…!!」
ガシャーンと大きな音がする。
しまった、転んでしまった。
「いたた…」
裸で転んだせいで、床のタイルに膝をぶつけて血が出てしまった。
「おーい、大きな音がしたけど大丈夫か?」
「!!だ…大丈夫!ただ滑って転んじゃっただけで…」
しまった…。
大丈夫。と言いつつ、つい転んでしまった事を言ってしまった。
気を使わせてしまうかも知れない。
これで心配した真城君が、シャワールームに入って来たりしたらどうしよう…。
………。
……………。
………………??
入って…来ない?
私の知ってる少女漫画の展開にならない。
そおっとシャワールームの扉を開けてみると、私の着替えの上に絆創膏が置いてあった。
(…真面目か!!)
緊張して損した。
いや、緊張してただけよ?期待してた訳ではないのよ?
♢♢♢♢♢♢
シャワールームからすごい音がした。
あー、あいつ酔っ払ってるからなー。転んだか何かしたか。
「おーい、大きな音がしたけど大丈夫か?」
ガラス張りのシャワールームに声を掛けると。
「!!だ…大丈夫!ただ滑って転んじゃっただけで…」
と、嫌に説明じみた返事が返って来る。
何だ?怪我でもしたか。
確か俺、絆創膏を持ってたな。
手帳型スマホケースの中から、少しクシャクシャになった絆創膏を取り出して、千代音の着替えの上に置いておいてやる。
…これで出て来た時に気付くだろ。
しばらくすると、千代音が戻って来た。
膝には絆創膏が貼ってある。
「ラブホは嫌だろうけど、俺はソファで寝るから、千代音はベッド使ってくれ」
「え?で…でも…、ホテル代だって真城君が出してくれたんでしょ?」
「気にしなくていいよ。女にホテル代払わせるつもりねぇから。…じゃ、おやすみ」
さすがに眠い。
さっさとソファで横になると、千代音がソファへやって来た。
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