第33話 RE:渋谷ダンジョン配信
「みんなこんにちは! 掛水リンネです! 元気に楽しく、今日もダンジョン探索始まるよー! えいえいおー!」
「……並びにジェスター社所属ダンチューバー皆守クロウです。視聴者の皆さま本日もよろしくお願いいたします」
《こんりんりーん!》
《待ってた!》
《リンネの今日の衣装めっちゃカワイイ》
《クロウの挨拶固すぎだろw》
《今日も伝説を見せてくれー!》
今日の配信場所は渋谷ダンジョン。
ダンジョンドローンをオンにして配信を立ち上げると一気にコメントが流れていく。
「今日はダンジョンギルドから受注した討伐クエスト、フロアボス“ゴブリンキング”の討伐を目指します!」
《がんばれー!》
《なんたってS級ライセンス目指すんだもんな。実績積まないとね》
「はい! S級目指して頑張りますよ! 皆さん応援よろしくお願いしますねっ」
リンネは視聴者のコメントを拾ってニッコリと笑った。
***
ジェスター社での会議からはや一ヶ月が経過。
俺とリンネさんは、大体一週間に一度のペースでダンジョン配信を行なっていた。
その間、俺たちは視聴者に対して色々なアナウンスを行った。
まずは俺とリンネさんの配信の目的だ。
新宿ダンジョン攻略を最終目標に活動していること。
S級
そのために目下の配信内容としては、ダンジョンギルドが仲介する難関クエストやフロアボスの討伐をメインコンテンツとして進めていくこと。
以上の諸々を視聴者の前で堂々と宣言した。
《新宿ダンジョン攻略宣言キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!》
《なんだろう自殺行為乙ってなるはずなのにクロウがいれば大丈夫だって思える不思議》
《クロウマジ万能説》
《実力はSSS級だしな》
《ダンジョンギルドの偉い人はツベコベ言わずに許可してどうぞ》
俺たちの目標は視聴者には好意的に受け止められたようだ。
次に新しいチャンネル名も発表した。
旧チャンネル名は『掛水リンネのりんりん迷宮攻略記』。
俺的には別にこのままでも良かったのだけど、リンネさんのたっての希望で変更となった。
その名もずばり『リンクス・チャンネル』
探索者と視聴者を
なかなか洒落た響きなので『リンクス』はそのまま、俺とリンネさんのクラン名にも採用することにした。
そんなこんなの新体制で、俺とリンネさんの『リンクス・チャンネル』はこの1ヶ月で登録者数を順調に伸ばしていき、70万人に迫るまでの巨大チャンネルに成長していった。
***
「グギャアアアア!」
ザッシュ! ズバッ!
渋谷ダンジョン中層にて、つつがなくゴブリンキングを葬る俺。
「ふう、お疲れ様でした。目標沈黙。これでゴブリンキングの討伐は完了です」
俺は武器を収納した後、視聴者に向けて声をかける。
最初は戸惑いながらの配信も一ヶ月も経てば慣れてくるものだ。
最近の俺は戦闘のテンポ感や爽快感を特に意識して敵と戦うように心がけている。
《戦闘開始から10秒たってねーぞw》
《ゴブリンキングがあっという間にバラバラに・・・》
《ね? 簡単でしょう?》
《あれ……ゴブリンキングって一応Aランクモンスターだよな》
《見てる俺らの感覚マヒしてきちゃってるけど、普通にAランクモンスター倒すためにはベテランダイバー10人は必要って言われてるからね?》
「クロウさんさすが最強です! じゃあいつもの勝利のアレやりますよ~! 皆さんもお手を拝借!」
リンネさんがそう言ってダンジョンドローンのカメラに向かってニンマリと微笑む。
「スキル展開! 《水花火》! それそれそれそれ~!」
その掛け声と一緒に彼女の手先から色とりどりの水塊が連続で射出される。
ひゅるるるる――バーン……
それはまるで花火のように空中で弾けて、周囲へ
「リンクス大勝利! やったー!」
「リ……リンクス大勝利……」
「はいっ! クロウさんもっとアグレッシブにポージングを! 恥ずかしがってちゃダメですよー!」
「向いてないんですよ……こういうの」
水花火の下で俺とリンネさんはポージングを決める。
これは配信を盛り上げるという目的で、リンネさんが考案したパフォーマンスだ。
最近は、目標達成→リンネさんの《水花火》→ポージングで配信のシメという一連の流れが出来上がっている。
《宴会芸で草》
《それそれそれそれ~(棒)》
《スキルの無駄遣いいいぞ~^^》
《いや、水花火めっちゃキレイだし実際これ見てたら盛り上がるよ》
《リンネが可愛いからなんでもOK》
《クロウのポージングの雑さも味があって好き》
茶番といってしまえばそれまでだが、視聴者も楽しんでくれているようだ。
こういうエンタメ路線の盛り上げ方は俺には絶対ムリ。さすがはリンネさんだ。
「それじゃあ……みんなありがとう! 今日の配信はこの辺で……」
リンネさんがシメの挨拶に入りかけたそのとき――
ぞくり。
強烈な悪寒が背筋を撫でた。
魔素濃度が急激に高まった故に味わうこの感覚。
イレギュラーモンスターの発生に間違いなかった。
本来なら緊急事態だ。
だけど、今の俺に緊張こそあれど焦りはなかった。
俺はリンネさんと目配せする。
彼女の表情はやや険しさを増しながらも、口元に不敵な微笑みを携えていた。
「……クロウさん。
「はい。ここからは
俺たちは頷きあう。
「みんなッ! イレギュラーが発生したよ!」
リンネさんがカメラに向けて声を張り上げた。
《イレギュラー!?》
《マジか!》
《通常なら逃げ一択だけど・・・でもクロウなら・・・!》
《戦うの!?》
コメント欄が一気に騒めきだす。
「はい、敵は俺が無力化します」
《うおー! またクロウの伝説が見れるのか!》
《vsイレギュラーモンスター! 超絶期待!》
《切り抜き班待機中です。ブチかましてください!》
期待のこもったコメントが次々と流れていく。
同時接続数も急増しているようだ。
だけど、今日俺たちがやることは敵を倒すことだけじゃない。
ずっと抱いていた懸念に白黒をつける。
「皆さん。このイレギュラーはただの自然現象じゃないかもしれません。今日はその真実を――俺たちが暴きます!」
俺はククリナイフをナイフシースから引き抜き、カメラに向かってそう宣言した。
――――――
週ランジャンル別2位……
( д) ゚ ゚
あ、ありがとうございます(吐血
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