【感動する話】グラドルと資産家が結婚!?しかし、お金目的ではなかった本当の理由

ミクの物語LAB

私が結婚したのは、〇〇がしたかったから。

「私、佐野あかりは桐谷哲郎さんと結婚します。そして、芸能界を引退します」


私は今人気爆発中のグラビアアイドルだ。テレビドラマや映画への出演、CMにバラエティーと、引っ張りだこ。

そんな大切な時期に私は結婚を発表した。普通なら、めでたいニュースとして取り上げられるのだろう。しかし、私の場合は違った。なぜなら、相手が70歳を超える資産家老人だったからだ。しかも、老人は持病により、もう先が長くない。

もちろん、世間からの非難はすごかった。


「ファンだったのに失望した」

「下心見えすぎw明らか遺産目的だろ」


ネットニュースでも話題になり、完全に芸能界から干された。

私はそれでもかまわなかった。誰に何を言われようが、自分の決意は固かった。なんとしてでも哲郎さんと結婚をしたかったのだ。


哲治さんの年齢は72歳。超がつく資産家で、推定総資産は1000億を超えるといわれている。

出会いはテレビの収録だった。「大金持ちの日常」という番組の企画で出演したときに出会った。

アプローチは私から。何度かご飯に連れていってもらい、夜も共にした。わずか三ヶ月という期間で私は結婚を申し込んだのだ。

が、実はまだ、結婚は成立していなかった。哲郎さんはなかなか籍を入れてくれないのだ。


「いくらなんでも早すぎるよ。まだ出会って三ヶ月だし、それにさやかちゃんまだ未成年でしょ?結婚なんてしたらさやかの評判はガタ落ちだよ?」


哲郎さんは私の世間体を気にしてくれているようだった。しかし、私はすぐにでも結婚したい。

そこで強情な私は、記者会見を開き結婚を宣言したというわけ。こうでもしなければ哲郎さんはいつまでも結婚してくれないと思ったからだ。

呆れた哲郎さんは、籍は入れずとも、同棲を許可してくれた。というより、哲郎さんの看病だ。寝たきりの哲郎さんをつきっきりでめんどうをみる。まずは二人の時間を増やし、お互いのことを知ることからだそうだ。


私は毎日哲郎さんの食事をつくり、薬を飲ませ、濡れタオルで身体を拭いた。そして毎日、結婚をせがんだ。しかし、哲郎さんは頑なに断った。これでは結婚する前に死んでしまう。それは避けたい。愛する人が死んでしまうから?いや、違う。遺産が手に入らないからだ。そしてなにより、復讐が果たせないのだから…。

哲郎さんは、私の母を死に追いやった張本人だった。


母は女手ひとつで私を育ててくれた。父はジャンブル中毒者で、多額の借金を作り出ていった。母は一人で借金を返済しながらも私を育ててくれた。幼い頃、母がスーツを着た男に頭を下げてお金を渡していたのを覚えている。男は太陽がモチーフのネックレスを首からかけていたのをよく覚えている。男を含む悪い組織の連中は毎日母からお金を巻き上げていった。体が弱い母は体調を崩しながらも夜中まで必死に働き、ついに限界がきた。母は病気で、ろくな治療を受けれずに死んだ。


それからの日々は地獄だった。身寄りのない私は毎日を生き抜くために必死だった。学校を行かずにバイトを掛け持ちし、体を売ったことだってある。そして血の滲むような努力のすえ、人気タレントになったのだ。ようやくテレビに出れるようになった頃、運命の歯車は動き出した。

母の仇に出会ったのである。楽屋挨拶に来たスーツ男は、首から太陽のネックレスをしていた。忘れもしない、あの色、形。間違いなく、母から金を巻き上げていた男である。私は確かめることにした。


「素敵なネックレスですね」

「あぁ、これかい?ありがとう。大切なものでね。もう十年以上身につけてるよ」


私が五歳の頃にあのネックレスを見たため、間違いない。私はその時から復讐を誓った。あいつと結婚して、資産を奪ってやる。母から巻き上げた金を取り返す。そして、あいつを殺す、と。


私は日々、哲郎との結婚をせがみ、殺しの計画をすすめていった。少しずつ薬の中身をただの白い粉に入れ変えていったのだ。

そして一年が経った頃、病気はひどく悪化した。その時には、薬の中身を半分以上すり替えていたため、当然である。


「私はもう長くない。自分の体だからわかる。そこで、遺産は君に全部あげようと思う」


哲郎は遺言残した。私は「ついにやった!」と心で思う。これで結婚をせずに金は手に入る。あとは殺すだけ…。私はとうとう、薬の中身をを全てすり替えた。数日後、哲郎は死んだ。


遺産は地下室の金庫に入れてあると言われたため、私は期待を胸に開ける。そこには見たこともないケタ数のお金が入った通帳と、手紙が置いてあった。手紙など興味はないが一応、読んでみた。そしてそこには衝撃の事実が書かれてあった。


「私の愛する人へ


まず最初に、謝らなくてはいけないことがあります。私はあなたのお母さんを知っています。彼女は私の愛する人でした。しかし、彼女には夫がいた。ギャンブル中毒のひどい男でした。私はその時、あなたのお母さんの相談にのっていました。会う回数が増えるうちに、私達は愛し合うようになった。そして、子を授かった。太陽のように周囲の人を照らして欲しいという願いから、名は「あかり」にした。私が大事にしているペンダントは、出産時にあなたのお母さんからもらったものなんだ。

私は責任を持って君を育てるつもりだったが、君のお母さんは許してくれなくてね。夫に打ち明ければ暴れて殺されてしまうかもしれない。君のお母さんは誰にも頼らずに君を育てることにしたんだ。私はお金を援助するくらいしかできなくてね。君の家に何度か渡しに行ったこともあるんだよ。君はスーツを着た私に怯えていたがね。


この金庫を開けている時、あかりは二十歳だね。お誕生日おめでとう。短かったけど、あかりと過ごした時間、とっても楽しかったよ。私の人生で、最高の思い出です。ありがとう

          桐谷哲郎」


私は涙が止まらなかった。自分は実の父親を殺してしまったのだ…。きっと哲郎さん、いや、父は私が遺産目的で近づいていたことを知っていたのだ。罪滅ぼしで私にお金も人生も捧げたんだ…。手紙に私の誕生日を書いているということは、自分が殺されることをわかっていた…。ということは、父は全てを知った上で薬を飲み続けていたことになる。

その日、私は一晩中泣き続けた。


その後私は、遺産で大きな墓をたてた。毎朝、仕事前に手を合わせている。そして私は女優として復活。多くの人を照らせるよう、日々努力している。

太陽のペンダントを首に下げて…。

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