最高難易度乙女ゲームの悪役令嬢ミリアーナは何者か!?
@renareere
第1話プロローグ 〜sideユーリ
私ーユーリ・カルミナはアルバルタ王国の男爵家の娘です。
フォントリーナ伯爵家に花嫁修行も兼ねて奉公に出向いていて3年目の春。
伯爵家に昨年の春、お生まれになった御令嬢ーミリアーナ・フォントリーナ様付きの侍女に任命されました。
今は乳母と共にお嬢様にご挨拶に向かっているのですが、やはりお噂通りお嬢様は特別な存在のようです。
彩豊かな花々が咲き乱れる綺麗に整えられた庭。その中心で色とりどりの小さな花弁が風で宙に舞うのを静かに見つめられているお姿はもうなんといってお伝えすれば良いのでしょうか。
1歳になったばかりのお嬢様には似つかわしく無い表現なのだろうが、一言で言うととても美しいのです。
まるで花々がお嬢様の誕生日をお祝いしているかのよう。
「ミリアーナお嬢様。彼女が新しくお嬢様の侍女になるユーリです」
「は、初めまして!ユーリ・カルミナでございます。一生懸命お仕え致しますのでどうぞ宜しくお願い致します」
1歳になったばかりのお嬢様には伝わっていないだろうが、精一杯のご挨拶を、と空元気にも近い勢いで頭を下げる。
「うーう?」
「はいはい、そうです」
「カ、カミラ様、お嬢様がなんと言ったか分かるのですか!?」
「何となくですがね。多分貴方も分かるようになりますよ。今はユーリのお名前を呼んで下さったのですよね?」
「あー!」
「お、お嬢様…!」
感動よりも上を表現出来る言葉とは何だろう。嬉しすぎての語彙の欠如。本当に言葉になりません。
お屋敷の皆様がお嬢様をどんなお人か表現する時、愛らしいとか可愛らしいとか何とかかんとかうんぬんかんぬん言っていましたが、もっとお嬢様に当てはまる何か新しい言葉を作りたいくらいに良い言葉が見つからず兎に角もどかしい思いでいっぱいです。
「ミリアーナお嬢様、そろそろお昼ご飯のお時間ですよ?」
「しー」
「はい、お嬢様。食堂に参りましょう」
「カミラさん、彼が…あの…」
「はい、彼がミリアーナお嬢様の専属護衛のカルトレイン子爵家のご次男であられるジャミール卿ですよ」
「ジ、ジャミール卿…」
カルトレイン子爵家はフォントリーナ伯爵家に古くから仕えているお家で親交もとても深く、自身が治める街のみにならず、伯爵家の領地運営や領内の財務なども関わっているほどの深い間柄です。
中でもジャミール卿はお嬢様にお仕えする以前は王国の騎士団におり、子爵家の出でありながら王太子殿下の側近兼護衛に抜擢されたほどの腕前だったそう。
容姿も淡麗で勉学においても優秀なので後継がご令嬢しかいない侯爵家や伯爵家などの高位貴族にも婿養子として沢山のお声掛けがあったそうです。中には王国一と噂される絶世の美女ハーレ様から直接のお誘いもあったとか。
しかしお嬢様がお産まれになった直後に出世街道真っしぐらな状態だったのにも関わらず、何もかもをお断りになり、ミリアーナお嬢様の元に来たと聞きました。
当時まだ新人侍女だった私には何があったのかは預かり知るところではありませんが、お仕事中に屋敷の廊下から中庭にいらっしゃるジャミール卿を偶々お見掛けした際に見受けられたお嬢様を見つめるあの優しく眩しい笑顔。私は信用に値する人間だと確信しております。
お嬢様のお食事は意外にも質素です。私のこれまでの経験上貴族のお嬢様は沢山あるお料理の中からその日の気分で好きな物を好きなだけ食べて後は使用人の賄いになる事が多いです。
実際私の家もそんな感じでした。と言っても所詮は男爵家、と思われるでしょうが、フォントリーナ伯爵領内は大変優秀なウィルフォード・フォントリーナ伯爵様のお陰でとても栄えており、伯爵家の規模に収まらない程のお力を持っているため、実は他の男爵家に比べるとあり得ないほどに私の家は裕福でした。なので料理の内容はその辺の伯爵家にも劣らず…まあ、それなりです。
ただ今言ったように伯爵家の枠に収まらない程に有り余る財力とお力があるため、妬み嫉みも多くあるのは疑いようの無い事実。
お嬢様の護衛となれば其れなりの人でなくてはならない。
「ふぅー、お?」
「はい、ミリアーナお嬢様。ふぅ~、ふぅ~ですね」
「あーあ」
「あぁ~…なんて可愛らしいのでしょうか。私…生きておりますでしょうか…」
「ユーリ!しっかりなさい。気持ちは分かりますが、世話係から外されたくなければ今すぐシャンとしなさい!」
「す、すみません!!」
「全く…普段あんなに優秀なのに…。ミリアーナお嬢様はどうしても皆んなをダメにしてしまうようですね」
「…ぶぅー?」
「いいえ、ばぁが悪ぅございました。ミリアーナお嬢様が悪いわけでは無いのですよ」
「ばぁーぷぷ!」
「ありがとうございます」
何をどうすれば会話が成り立つのか。
これはカミラ様が凄いのか、ミリアーナお嬢様が凄いのか分からなくなってきたました。
だってお嬢様はまだ1歳になられたばかり。会話が出来るとは到底思えない。でも…多分…お嬢様は理解して返事をしているように私には見えるのです。
やっぱり、ミリアーナお嬢様は特別な人なのでしょう。
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