夢をみる僕ら

@HATIMAN1228

第1話 夢をみた

涼しい風が吹いていた。あっとう言う間に時間は過ぎて、木には緑が生い茂っていた。それなのにどこか夢を見ているようで。


雀のチュンチュンという、鳴き声が聞こえていた。


変わった夢を見た気がする。なんだろう。小さな男の子が公園の階段から落ちそうになっていた。夢の中のぼくは慌てて、その男の子に飛びついて一緒に階段から落ちたけど男の子は無事だった。僕はけがをしたみたいだったけど。


なんとも誇らしい夢なんだろう。朝からいい夢を見た気がする。


「ゆうくーん!!」


外から僕を呼ぶ声が聞こえる。夢でも朝でも僕は人気者だなと鼻を高くし、窓をあけると幼馴染の楓がいた。


「八時!!!遅れるよ!!!」


楓は僕の顔を見るとそういった。

今までの能天気な頭がリセットされる。そして頭の中に浮かび上がる「遅刻」「指導」という文字。


慌てて、パジャマを脱ぎ、制服に着替えて階段を勢いよく降りる。

下には母と妹がいて、妹もめずらしく寝坊をしたようで慌てて髪を結んでいる。

結ぶ余裕はあるんだと思いながら、急いで歯を磨いて玄関に向かう。


「ゆう!お弁当!なんで毎回毎回!」

と母がお弁当を慌てて手渡してくれた。なんとも毎日僕が寝坊をしているような言い方だ。僕は寝坊は週に4回までって決めてるんだ。まだ1回じゃないか。と朝一番のいい夢ははるか彼方に飛んで行って。ちょっと不機嫌な朝が始まった気がした。


門の前にはらしくない姿で仁王立ちをする楓の姿があった。毎度毎度、遅刻についてかたる楓は今日も頬を膨らまして、語る気満々のようだ。

「おはよう!かえで!」

元気よく、あいさつをするとかえではそれに反応することなく、手を引っ張って走り始めた。

「なんで!毎日、こうなの!窓開けるときの顔、清々しすぎてほんとあきれる!」

かえではちょっと高い声で昨日と同じようなことをいう。

僕ったら、そんないい目覚めの顔をしていたのかな。


まだ、春の陽気がのこる四月。昨日から二年が始まった。幸い、楓とぼくが通う高校は家から近いことが良いことだ。いつもの通り、近道をし。長い下りの階段を二人で下っていく。

そこから見える、町のすがたはいつもとってもきれいで。太陽に照らされた屋根が白く反射して、まるでゆきげ・・・


あれ、この光景。夢で


そんなことが頭を過った時だった。

前を歩いていた、小学生だろうか。男の子が足を躓いた。

まるでその瞬間世界の流れが遅くなったように僕には見えた。ゆっくりと。

男の子の足が宙に浮き、ランドセルが上に浮かび上がる。男の子は勢いの余り半回転をする。


楓が「あぶない!!」と大きな声でいうが。

男の子の体は前のめりになり。周りの小学生たちは目をつぶったり、さけんだりするこたちだらけだった。


その瞬間、僕の足は階段の淵を思いっきり蹴って男の子に飛びついた。


小学生の女の子たちが叫ぶ声が聞こえた。


僕は男の子の正面に抱きついて、そのまま勢いよく階段から転げ落ちた。


まるで今朝見た夢と同じような感じで。


周りにいた小学生や楓、通勤中の大人たちが近寄ってきた。

階段の中段終わりだというのもあってか、そこまで高くなくて僕は足と肘をすこし擦りむいて打撲をしたぐらいだった。男の子はというと、何もなく元気に立っていた。


「君大丈夫か!!すごい勢いだったぞ!!」

おじさんが起こしてくれて、まだ空いていないお水のペットボトルの中身を勢いよくけがにかけた。ちょっとしみるけど。


「ゆうくん、大丈夫?」かえでが顔を覗き込んだ。


小学生の子たちもみんな心配そうにこちらを見ている。

いけない、心配されるのは性に合わない。


急いで、砂を払って立ち上がった。


「大丈夫です!元気です!いってきます!!」

よし、これで復活だ。かえでの手をひぱって急いで走り出した。あきれたような顔で楓も走り出した。


校門の前には八尾先が仁王立ちしていた。同じく寝坊組がいそいで門に入っていく。

「!?」

八尾先に見つかった。新学期早々とか言われるのだろうか。いやだな。と思っていると

「お、お前。なんだその血は!!」

八尾先から出た言葉は思っていた言葉と違う内容だった。

恐る恐る、下を見ると黒いズボンは赤黒く染まっていた。白いお気に入りの靴は鮮やかな赤さを放っていた。どうよ、新しい靴はおしゃれでしょ。とかいう暇はなかった。


楓はちょっと、ありまして。。みたいな顔でこちらと八尾先を見ている。


八尾先は勢いよく、僕をかつぐと急いで保健室へ運んでくれた。

すれ違う、生徒からは興味の目線ではなくて、戦慄したような目で見られる。


なんだろ、夢で見た内容はちょっとした擦り傷だったんだけどな。先生のtシャツは僕のちで赤く染まってしまって、保健室につく頃には背中一面、赤色になっていた。困ったな。


保健室の先生は大慌てで手当てをしてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢をみる僕ら @HATIMAN1228

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る