キミが導くダンジョンと私 ~ 読者頼みの選択肢型ストーリー。えっ! 私の自由は二の次ですか!? ~

流成玩斎

第1話 とにかく私はお尻が痛い


「きゃうっ!」


 暗闇のなか、地面にしこたまお尻をぶつけてしまい、たまらず声をあげる。

 ジンジンと痺れる痛みのなか、今しがた体験したことが走馬灯のように頭を巡っていく。


 突然の異世界転移、

 出迎える長い金髪の女神、

 そして新たな世界への旅立ち。


 ざっと簡略化されたような情景が脳裏に流れていき、やがてそのなかで確たる真実を思い出す。



 私、神武七夜かみたけななよは今、異世界にいる。



 とにかく私は、何かの手違いで女神が創造した異世界に迷い込んだ。

 しかも最悪なことに、転移したショックで元世界の記憶も曖昧、とっさの判断能力も含め、さまざまな身体機能が低下しているらしい。


 そういう残念な事態に陥ったことを不憫に思ってか、女神はあるチカラを私に授けてくれた。何か困った事があれば、それを呼び出せと。


 それを思い出し、私は暗闇の中、まだ痛いお尻をさすりながら――


「ええっ!? ちょ、ちょっと待って! 私、裸じゃんっ!!」


 声をあげると同時に両手で大事な部分を隠す。

 どおりで地面にぶつかった衝撃がいつもより痛かったはずだ。裸の私は直に生のお尻をぶつけていたのだ。いや、痛むお尻をさすろうとしたら、柔らかい感触で気付いたわ。


 それと同時にある疑問が浮かび上がる。

 手で隠したという行動――これって、とっさの判断能力じゃない?


 女神の説明では、判断能力の低下により、ここぞという場面では思い通りの行動を起こせないと聞いている――ってか、今がここぞという場面ですよね? パッて隠したよね? 手で。


 イマイチ確証が得られない女神の言葉に少し疑問を持ちながら、まずは自分の置かれた状況を冷静に考えることにする。


「暗闇っ! 素っ裸っ! よく耳を澄ませば、遠くからズズズって何かを引きずる音が聞こえるっ! もうこれって、大ピンチじゃないのよっ!!」


 考えるまでもなかった。

 私はすでに詰みかけていた。

 かといって、ここで諦めるのはイヤだ。

 なんとかこの世界で生き残ってやる。


 生き汚い私が心のなかで叫ぶ。

 突然異世界に飛ばされて、こんな暗闇のなか裸で放置とか冗談じゃない。

 私の憤りが、フ・ザ・ケ・ン・ナと叫んでいる。 


 「何か明かりになるような物を確保しないと――」


 そう言葉に発した途端、ふらりと頭が揺れる。

 まるで貧血にでもなったかのような意識の喪失感によって、ガクリとその場に膝をつく。


「あ、あれ? な、なんで……」


 さっきまでお尻の痛み以外、おかしいところはなかったはず。

 それがいざ行動に移そうとした途端、激しいめまいに襲われた。



 ― 判断能力の低下 ―

 


 女神の言葉が頭をよぎる。

 まさか私が何か行動を起こそうとすると、それを遮るように体が不調をきたす?

 じゃあ何も行動出来ないじゃない。


 突如、絶望感によって血の気が引きそうになる。

 これが女神の言っていた、転移による身体能力低下の影響。

 それならどう――


「――っ!」


 ハッとした私は、途中のままになっていたことを思い出した。


 女神が私に与えたチカラの行使。

 迷ったら呼び出せと言ったモノ――、 


 私はあのとき聞いた女神の言葉を復唱した。


「導きの光版よ」


 乾いた唇から漏れた言葉が闇に溶け、その代償なのか、私の眼前に光の石板が現れる。そして金色に輝く光が私の裸体の前面を照らし、改めて自分が裸だったのだと思い知らされる。


「綺麗……」


 光りに照らされた自分の裸ではない、その言葉は私の前にある光版を指している。キラキラと美しく輝くその板は、やがて中心部に文字を宿し、その奇妙な字体はなぜか私にも解読可能だった。それどころか、その文字は淡い光を発しながら私に語り掛けてきたのだ。


■導きの光版■


 異世界より来た者ヨ、これカら語る約束事をしかと心に刻めヨ。


 このダンジョンを生き抜くことハ、身体能力を著しく制限さレたお前にとって大変困難デある。だが、この【導きの光版】の力をもってすれバ、それは容易となるだろウ。


 まズ第一に、お前が自ら何かを成そうとスれば、激しい行動阻害、いわゆるデバフ効果によって、その行動はすべて制限さレてしまう。


 この状況を打破するべく、女神はお前のいた世界にソの解決の糸口を見つけタ。


 【ゲーム】というモノが存在するお前の世界では、ダンジョン攻略に長けたツワモノ、いわゆるプレイヤーという者たちが数多く存在しテいた。そして驚くことに、そういった者たちでなクとも、大まかではあるがダンジョンというものを理解してイる民が多いのも事実だ。そしてその者達とお前を女神の秘術によって繋ぐことで、デバフによッて動けないお前を動かすこトが可能だと女神は確信しタ。


 そして肝心ナ方法だが、現実世界に生きる者たちは、お前の行動を書物としテ閲覧し、【感想欄】に意見を書くコとで指示が可能といウ仕組みにしておいた。


 例えば、お前がダンジョンで進む道を選びたい場合、【右】か【左】、もしくは【真ん中】といった項目をこちらデ提案する。その選択肢のなか、これだと思うモノをプレイヤーたちは【感想欄】に記入するこトで、自分の意志をお前に届け、その行動を指示することガ出来る。


 あと、お前がダンジョンで何かアイテムを拾った場合、その内容ヲ決めることも可能だ。【ケガを治す薬草】や【武器】、【防具】といった項目をこちらが提示シ、そのなかでこれをお前に授けたイと思うモノを選ぶことが出来る。


 ただし、その行動指示がひトりだけとは限らない。

 お前の行動は、集められタ意思のなかで、一番賛同の多いモノに絞られるダろう。


 この仕組ミを上手く使い、無事ダンジョンを生き延びて見せヨ。


 

「生き延びて見せよ……えっ!?」


 導きの光版に記された内容が語り終えると、文字たちは役目を終えたかのように消えていく。そして無意識に出た私の呟きと同時に、また新たな文字が浮かびあがった。



【導きその一】


 暗闇のなか、神武七夜はある行動に出た。


1 暗闇のなか、地面に何か落ちていないか探り、無事【火のついていない松明】を見つけた。


2 暗闇のなか、とりあえず今自分のいる場所の把握をするため、手探りで壁を見つけ、壁にある【仕掛け】を作動させてしまう。


3 暗闇のなか、足で周辺の地面を探り、ダメージを負いつつも【宝箱】を発見する。



 以上、三つの運命を提示、導き手の指示を待つ。



 文字は三つ目の項目を提示したところで止まった。

 私の行動は、この三つの内容から選ぶ、導き手という顔も知らない元世界の人たちに委ねられることになった。


 なった……。


 な……、


「なったじゃないわよっ!! なにこれえええええ!! 私の行動を他人に選ばせるっての!? マジで!? 冗談じゃなくて!? もう最悪じゃあああああんんんんんんっっ痛てててて、痛ったああああいぃぃぃ!!!」


 思いきり叫んだとたん、お尻の痛みが再び私を襲う。

 生のお尻をさすりつつ、私はもう一度叫んだ。

 

 三択とか今はどうでもいいの。

 とにかく――とにかく――、



「とにかく私はお尻が痛いのぉぉぉぉ!!!」





【お願い】


  ご覧の通り、主人公は大事な局面になると、

  自分で勝手に行動出来ない状況です。

  導き手となる読者の皆さまの選択が唯一の手段となります。

  ぜひ感想・コメント欄を利用し、選択肢からひとつ選んで書き込み、

  主人公を導いてやってください。


  理由なんて書いて頂けると嬉しく思います。


※ この物語は他サイトでも同時掲載中です。 

  このサイトでコメントが無い場合は、

  他のサイトからの導き手によって、物語が更新されます。

   

  もし、各サイトで導き手の意見が分かれた場合、

  それぞれ独立した内容へと派生しますが、

  それもひとつの試みとして考えています。

  カクヨム・バージョンなんてあると、面白いかもしれませんね。 

  


  以上、皆さまの参加をお待ちしております。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る