第4話:キャラメイク、想定外の事態

 第4話:キャラメイク、想定外の事態


 真っ白な空間に声だけが響いてくる、不思議な空間に一人。

 でも声も優しいし、なんだか安心感があって好きだな。


『さあ、まずはお嬢さんの名前を決めよう。 現実の名前ではなく、ゲームの中で呼ばれるアダ名のようなものだから注意してね』


「名前か……じゃあ、カタカナで【マタタビ】で」


『ふむ【マタタビ】か、実に素晴らしい名前を付けたね』


 <ユニークネーム【マタタビ】を確認、ユニークスキルを付与>


『くくく、さっそく面白いことになったね、実に興味深いお嬢さんだ』


「え? え?」


『さあ、次は外見を決めようか。 それっ!』


 声が響くと、目の前にあたしが現れた……さっきのはなんだったんだろう?

 服は着て無くて、下着だけの姿で……水着っぽいから、恥ずかしい感じはないかな。


『髪や目の色を変えるのをおすすめするよ。 あと現実から極端には変えられないが、体の各パーツや身長を変えることができるんだ。 さあ、どうする?』


「じゃあ……髪の色をピンク味がかった白にして、目は空色にしたい! あとは……むっ胸をちょっとだけおおお大きくして……ください!」


『くくく、わかった、わかったよ。 それっ!』


 目の前のあたしが一瞬光りを放つと、希望した外見に変化した。

 髪はうっすらピンクっぽく見える白い髪、目は綺麗な空色。

 それから、むっ胸が2サイズくらい大きくなったかな? かな? えへへへ♪


『ご満足いただけたかな? お嬢さん』


「はい! とってもいい感じだと思います!」


『うんうん、それはよかった。 次は初期スキルの設定をしていこう』


「初期スキル?」


『スキルというのは、たとえば【剣術】のスキルを獲得すれば上手に剣が使えるようになる。 【火魔法】のスキルなら火の魔法を使うことができる、というものだ』


「へー、スキルか……考えてなかった、どうしよう」


『そうか……ではいくつか質問をするから、それに見合ったスキルを提示しよう。 気に入らなければ変更すれば良い』


「わかりました、それでお願いします」


 それからいくつか質問をされた。

 どんな旅にしたいか、新しい世界で何をしたいか、どんなことが得意か、とか色々。

 声さんがうんうん言いながら悩んでる様子……困らせちゃったかな……?


『よし、ではこのスキルはどうだろか?』


 そう言うと、目の前に札のようなものがいくつか現れた。

 ・テイム

 ・調教

 ・トリミング

 ・グルーミング

 ・料理術

 ・古代語理解

 ・筆写

 ・映写

 声さんの説明によると、こういうものらしい


 ・テイム

  魔物や動物を仲間にできるスキル

  連れて歩くにはパーティ枠を消費する

  好きなタイミングで入れ替えが可能


 ・調教

  テイムした仲間を調教することができる

  芸や技を覚えさせることができ、指示を聞きやすくなる


 ・トリミング

  テイムした仲間の毛をカットして整えることができる

  なつき度上昇効果あり

  許可があればどんな相手でも使用可能


 ・グルーミング

  テイムした仲間をシャンプーや耳掃除など、体のお手入れができる

  なつき度上昇効果あり

  許可があればどんな相手でも使用可能


 ・料理術

  素材と道具を使って料理を作り出すスキル

  普通に作るより成功率が上がる


 ・古代語理解

  旧時代に使用されていた言葉や文字を理解することができる


 ・筆写

  文字を綺麗に早く書くことができるスキル

  また、筆記魔道具があれば自動筆写が可能


 ・映写

  風景を紙に残すことができるスキル

  記憶に鮮明に留めることもできるが、数が多くなると古い記憶からだんだん薄れていく


「あの、なんで料理術なんですか? 他のはなんとなくわかるんですけど」


『うむ、料理術はテイムした仲間の餌を作ることができるんだ』


「餌ですか!」


『魔物や動物にも味の好みがあるし、買うより作った方が早い場合もあるんだ。 それにお嬢さんが食べられる料理も作ることもできるから、一石二鳥だと思わないかい?』


「たしかにそうですね、一緒にごはんを食べられるのは楽しみです!」


『ではこのスキルで決定していいかな?』


「はい!」


 <称号:猫の旅人キャット・トラベラーを獲得>


 <【テイム】【調教】により、称号:猫の調教師キャット・トレーナーを獲得>


 <スキル:【よしよし】【めっ】【獣鑑定】を獲得>


 <【トリミング】【グルーミング】により、称号:猫の美容師キャット・トリマーを獲得>


 <スキル:【よしよし】が上位スキル【褒める】に進化>


 <スキル:【めっ】が上位スキル【叱る】に進化>


 <スキル:【褒める】【叱る】が融合進化【指導】を獲得>


 <【調教】【指導】により、称号:猫の指導者キャット・リーダーを獲得>


 <【料理術】により、称号:猫の料理人キャット・コックを獲得


 <スキル:【食材鑑定】を獲得>


 <【複数称号】【獣の好香】により、称号:獣たらしビースト・キラーを獲得>


 <スキル:【テイム】が最上位スキル【神・テイム】に進化>


 <スキル:【調教】が最上位スキル【神・調教】に進化>


 <スキル:【指導】が最上位スキル【神・指導】に進化>


 <スキル:【神・テイム】【神・調教】【神・指導】が融合進化【神獣使い】に進化>


 <【神獣使い】により、称号:【猫の神獣使いキャット・ディヴァイン・ビースト・テイマー】を獲得>


 <スキル:【神獣使い】により【獣の好香】が【神獣の好香】に変化>


 <【筆写】【映写】により、称号:猫の記録師キャット・ロガーを獲得>


 <スキル:【鑑定】【古代語理解】を獲得>


 <スキル:【鑑定系】が融合進化、【神獣使い】により一段階引き上げ【神級鑑定】を獲得>


 <スキル:【古代語理解】の上位スキル【神代語理解】を獲得>


 <スキル:【獣語理解】【古代語理解】【神代語理解】が融合進化【全言語理解】を獲得>


 <【全言語理解】により、称号:猫の言語使いキャット・トーク・マスターを獲得>


「『え?』」


『……いやいやいやいや何が起こった! ちょっ、ちょっと待ってて!』


「は、はい……」


 すごい勢いでアナウンスが聞こえたと思ったら、驚いた声さんの声が遠ざかっていく。

 何が起こったか分からないあたしは、ただただ呆然としているしかなかった……。

 少しすると声さんが戻ってきた。


『あー、お嬢さんは別売りの猫耳を付けて始めたんだね?』


「そうです……」


『ふむ、であれば称号に【猫の】と付いてるのは仕様だ。 購入特典で付けてプレイすると【猫人】という称号が付いて、それ以降に手に入れた一部の称号に【猫の】と付くようになっている。 初回起動から付けてるからこんなことになった、というわけだ。 獣語理解も同様に購入特典だ』


「そうなんですね」


『【旅人】は全てのプレイヤーに必ず付与されるものだから気にしなくて良い。 調教師と美容師、正確にはペットの美容師だな、それと料理人もスキルを手に入れれば誰でも付与されるありきたりな称号だ。 指導者も調教師と美容師の条件を揃えてれば手に入るから普通だな、それから……』


「はい……」


『名前を決める時に出た【ユニークネーム】、これは特定の名前を付けるとユニークスキルを獲得できるもので【獣の好香】もその時付いたものだ。 そして、それが悪さをした形になるな……誰だよユニークスキルを絡めた称号作った奴は……クソッ……テイマーロール系のスキルと合わさって、あらゆる獣に好かれる【獣たらし】が手に入った! しかも【神獣の好香】に変化してるし! あー!』


「あらゆる獣に好かれる! それは猫さんにもですか!」


『そうだよ! 猫さんにもだ! というか猫さんどころじゃないんだよ! あーもー! その獣たらしの効果でスキルが進化して、神獣、神の使いと呼ばれる最高位の獣をテイムできるようになってるんだ……なんだよもはやバグじゃねぇか! ふざけんな!』


「おおお落ち着いてください……」


『あー……ふぅ……すまない。 ここからは我が失念していたことが原因だ……筆写は上位スキルで、本来は【筆記】を渡すべきであった、すまぬ。 映写もクエストで貰える特別なスキルであった……なんでこんな大事なこと忘れてたんだ我は……バカ! バカバカ!』


「おうふ……」


『元々持たせていた古代語理解が二つになったせいで片方が進化したんだな、【神代語理解】になって、三つの言語理解スキルが合わさって【全言語理解】に進化した。 まあこれ自体は悪いことじゃないんだがな……あらゆる言葉が分かり読み書きができる、当然その中には獣の言葉も含まれるんだが……神獣まで含まれるから、本当の意味で分からない言葉は無い状態になってる』


「そ、そ、そ、それは! 猫さんの言葉がわかるってことですか!」


『猫さんめちゃくちゃ好きなの? さっきから鼻息すごいね……いや気持ちはすごく嬉しいんだけどさ。 元々獣語理解で分かるようになってるんだけど、それの効果範囲がめちゃくちゃ広くなったと思ってもらえれば大丈夫だよ』


「ふおー! やったー!」


『うん、よかったね、おめでとう、本当に。 神級鑑定も同じだね、神獣クラスの獣とか、神級アイテムとか鑑定できるようになってるけど……まあ他に比べたらまだ可愛い方かな、なんでもかんでも調べられるようになってるのはちょっとアレかもしれないけど……』


「んーでも、あたしには不利がないっていうか、むしろありがたい結果のような?」


『あんまりゲーム内で言うのもアレなんだが、運営からもそのままで良いとお達しがあったんだ……不正を働いたわけじゃないし、偶然に偶然と失敗が重なった結果だからと……我、後で消されないかな……この欠陥AIめ! って……大丈夫かな……うぅ……』


「大丈夫ですか……?」


『う、うむ嘆いても仕方ない! 次に進むぞ! 次だ!』


「なんか投槍になってませんか?」


『次はパートナーだ! 猫さんだぞ! パートナー猫さん決めるぞ!』


「猫さん! やったー!」


『はぁ……本当に我大丈夫かな……』



 ----


「なんか大変なことになってないか? 大丈夫なのか?」


「あははは! お姉ちゃん面白い!」


「ヤバそうっすけど、見てた感じ大丈夫そうっすよ? すごいスキル沢山手に入れてゲームを始められた、ってだけだと思えば……たぶん」


「面白いことになってるじゃないかい、どんな旅をするのかもっと楽しみになってきたよ」


「あらあらまあまあ、うふふふ♪」



 ----


 PN:マタタビ


 スキル:神獣の好香、神獣使い、トリミング、グルーミング、料理術、筆写、映写、神級鑑定、全言語理解


 称号:猫人キャット・ピープル猫の旅人キャット・トラベラー猫の調教師キャット・トレーナー猫の美容師キャット・トリマー猫の指導者キャット・リーダー猫の料理人キャット・コック獣たらしビースト・キラー猫の神獣使いキャット・ディヴァイン・ビースト・テイマー猫の記録師キャット・ロガー猫の言語使いキャット・トーク・マスター

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