[Ep3] 猫さんと旅する幻想曲物語 - 猫と旅人マタタビが紡ぐのんびり配信日記
朧月 夜桜命
プロローグ
第1話:叶う夢、叶わない夢
第1話:叶う夢、叶わない夢
「猫さん可愛かったな……また連れてってくれないかな」
9歳の時にお母さんの提案で、家族揃って猫カフェに行った。
たくさんの猫さんに囲まれて幸せな時間をめいっぱい楽しんだのを今でも思い出す。
あのモフモフ……可愛らしい鳴き声……スリスリ寄ってくる仕草……。
はぁ……なんであたしの家はペット不可のマンションなんだろう?
まあ猫さんのために引っ越しなんてできないし、言ってもしょうがないんだけどさ……。
あたしは今、一緒に暮らしてるお婆ちゃんとクッキーを作ってるところ。
猫さんの形に型抜きをしながらあの幸せ空間を思い出していた。
そんなあたしを見て微笑むお婆ちゃんは、きっと心が読めるんだと思う。
「また行こうね」って型抜きを続けるんだもん、絶対そう。
「うん、ユキさんまた抱っこしたい」
「真っ白でふわふわで可愛かったものね、私もまた撫でたいわ」
「あああぁぁぁ……ユキさぁぁん……」
「うふふ、まるで恋人を思う乙女みたいだわ」
「うっ……いいじゃん……」
「悪いなんて一言も言ってませーん」
「もーー!」
「うふふふふw」
まったくもう、本当にお婆ちゃんは……。
妹にまで笑われちゃうよ、こんなんじゃ。
はあ……次行けるのはいつになるのかなぁ。
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あたしの名前は
小学校卒業を目前に控えた11歳です。
明日はあたしの誕生日なんだけど、なんだかお父さんの様子がいつもと違うような?
「好香、明日誕生日だな!」
「うん、そうだね、お父さん」
「今年は小学校卒業もあるし、誕生日プレゼント奮発しようと思ってるんだ!」
「え? 本当に?」
「もちろんだ! めちゃくちゃ高いのは困るが……任せておけ!」
「やった! 嬉しい! 本当にいいんだ! やったーー!」
「な、なんだ? そんなに嬉しいのか?」
「
「義母さん? ダメでしたかね……?」
「あの喜びようを見たら、何をねだられるかなんて簡単に想像つくじゃない」
「お姉ちゃん良かったね! ほのかも楽しみ!」
「だよね! やった、やったーー!」
奮発だって! 任せておけだって!
お父さん言ったよね! 何でも良いって! 嬉しすぎる!
「あなた、今は何が欲しいかちゃんと聞かないとダメよ?」
「あ、あぁ。 それで好香は何が欲しいんだい?」
「猫さん! ふわふわの! 白い猫さん!」
「え……」
「やっぱり」
「お姉ちゃんの夢だもんね、猫と暮らすの」
「あらあら」
「夢が叶うんだぁ……えへへへ」
「あーその、好香? 猫さんはちょーーっと……難しいかなーって」
「えっ……」
……なんで? 奮発するって……任せておけって……。
「何でも良いって言ったのに……」
「いやいや何でも良いとh」
「あなた……まずは謝ってください?」
「あ、はい……」
お父さんにたくさん謝られた……。
「他のなら! な、他のなら!」って言われたけど、すぐになんて浮かばないよ……。
欲しい物も、あたしの沈んだ気持ちも……。
『夢の世界でドラマチックな大冒険! 可愛い仲間と一緒に紡ぐ物語を、あなたの手で作り上げよう! 広大なフィールドに幻想的な風景が盛りだくさん! あなたはどんな夢を叶えたいですか? 【猫と旅するファンタジア】2月2日発売!』
「猫と……旅する……」
「その、好香……?」
「可哀想なお姉ちゃん、ひどいお父さんだねー、よしよし」
「
「お父さん……」
「な、なんだい?」
「あたし、あのゲームが欲しい、猫と旅するやつ」
「ゲーム機もないし……値段は……げっ!」
「あなた、どうしたの?」
「その……値段がな……」
猫さんと旅……まさにあたしがしてみたいこと。
ゲームはよく分からないけど、きっと神様がチャンスをくれたんだ。
「晴茂さん、猫よりは安いんじゃないのかい? 奮発するって言ったからには守らないと」
「お父さん! 猫さんの方がもっと高いから! ほら、調べて調べて!」
「ああ…………確かにそうだな……」
「猫ちゃん飼うなら引っ越さないといけないですし、その値段だけで考えちゃダメですよ?」
「お姉ちゃん! もうひと押しだよ!」
「お父さんお願い! 任せとけって言ったよね! あたし猫さんと旅してみたいの! お願い!」
「…………分かった買うよ。 明日朝イチで……いや、今から並びに行った方がいいのか?」
「ふふふ、良かったわね好香ちゃん」
「やったー! 本物の猫さんじゃないけど、ゲームならいつでも会えるんだもんね? もう飼うのと同じだよね!」
「その通りさね、良かったじゃないか好香」
「うん!」
本当に嬉しい! すごく心臓がドキドキしてる!
どんな猫さんに会えるんだろう?
どんな景色が見れるんだろう?
たくさん思い出作って、たくさん一緒に遊んであげたいな!
「そんな笑顔見せられたらな、僕も頑張らないとな……さて、早速並んでくるよ。 これだけ大々的にCMやってるなら、すごく混雑しそうだし」
「わかりました、外寒いですししっかり着込んで行ってくださいね?」
「うん、温かい飲み物も買って行かないとだな」
「晴茂さん、はいホッカイロ。 太い血管のところに貼っときなさい」
「ありがとうございます、義母さん。 じゃあ行ってくるよ。 好香と穂香はちゃんと寝るんだよ?」
「わかった、行ってらっしゃい!」
「はーい、行ってらっしゃーい」
「いってらっしゃい、あなた」
「いってらっしゃい、気張ってくるんだよ?」
ちょっとモコモコになったお父さんが、軽く手を振って玄関を通り抜けていく。
初めてあんなにワガママ言っちゃった……悪いことしちゃったかな。
でもどうしても叶えたかったし……神様も許してくれるよね?
<あなたの……夢に……幸多からん……ことを……>
「え?」
「お姉ちゃんどうしたの?」
「……ううん、なんでもない」
「ほら二人とも、歯を磨いて寝ましょうね」
「「はーい」」
「本当に良かったよ……セーユ様。 あの子達の事、最後まで見守ってあげてくださいね」
<ちゃんと……見てるよ……約束……だから……>
「ありがとうございます、ありがとうございます……」
お婆ちゃんが窓の外に手を合わせて何かを言ってたけど、あたしには聞こえなかった。
ちゃんとゲーム買えるように祈ってくれてるのかな?
あー、明日がすっごく楽しみだな!
お父さん、本当に本当にありがとう! 大好き!
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