△ 山盛りの食用はちのこを食べ切るまで
「待って無理」
部屋に入ると嫌でも見えにつく机と皿。そして上に山盛り乗せられた何か。気味が悪くてちかよりたくない。
「はちのこだって」
アズサは平然としている。意味がわからない。
「これを食べればいいのね」
そういうとアズサは皿の横にあるお箸を取ると、椅子に座って食べ始めた。
「あ、美味しい。望も食べよ?」
手招きされるが無理だ。
「やだ。それ食べ物じゃない」
「美味しいから。一口だけ食べてみなよ。うなぎみたいだよ」
はちのこがうなぎ? なんの冗談だ。
「食わず嫌いは良くないよ」
アズサははちのこを食べ続けている。
「アズサが全部食べればいいじゃん」
「はちのこなんて滅多に食べれないんだから。貴重な機会だし食べなよ」
アズサは美味しそうにはちのこを食べている。だがそれでも見た目が無理だ。目の前に真っ青なおにぎりがあったら食べますか? 答えは否だろう。少なくとも私は見なかったことにする。
とにかく見た目は大事だ。うなぎはうなぎの見た目だから美味しいのであってうなぎ味のぐにゃぐにゃなんて食べたくないのだ。それよりうなぎをくれ。
「あ、そうだ。望、あーんしてあげる」
恋人のあーんでもはちのこは嫌だ。
「もう、しょうがないな。全部食べちゃうよ」
アズサは黙々とはちのこを食べ出した。私は部屋の隅で小さく丸まっていた。
「望、全部食べたよ」
アズサが私のところに来て言った。私はおそるおそる振り向いた。
するとアズサがいきなり口付けしてきた。逃げようとしたが後頭部を片手で抑えられて逃げられない。口の隙間から舌が入れられる。私はされるがままだった。
口内を下でまさぐられていると何かが流れ込んできた。唾液よりも美味しい何か。まさか。
押し返そうとするもアズサに丸め込まれ飲み込んでしまった。
「何するの!」
「何ってお裾分け。おいしかったでしょ?」
「変なことしないで!」
私はアズサを待つことなく部屋をでた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます