♡ 十分間オメガバースごっこをするまで出れない部屋

 ──オメガバースとは──

 男性、女性とは別にαアルファβベータΩオメガの第二性がある世界、という特殊設定。主にBL界隈で使われる。

 αはエリートが多い。また、ヒートというものがあり、相手を妊娠させる確率が高まる。βは一番割合が多い。Ωは男女ともに妊娠できる。また、発情期があり、特殊なフェロモンを出してαを発情させる。

 またΩはαにうなじを噛まれることでつがいになることができる。番になるとΩは他のαを発情させることがなくなる。ただし、番は一度結ぶと解消することができない。


 ※作品によって多少差があります。


「オメガバースごっこってずいぶんとアバウトな指示ね」

「あ、なんか出てきたよ」

 看板からじわじわと何かがにじみ出てくる。近よってよくみると小さく指示が付け足されている。

「『うなじを噛め』と。つまり番になれってこと?」

「多分そうだね」

 私はハーフアップの髪を掴んでうなじを晒す。

「なら、私のうなじ、噛んでよ。番になってよ」

 頭だけをアスサノ方に向ける。

「望が、Ωなの?」

 不思議そうに聞いてくる。設定を読んだアズサならわかるだろうに。

「だってαはエリートが多いんでしょ? ならアズサが適任!」

「私はエリートじゃないけれど、まあ良いわ。ここを噛むの?」

 アズサの手がそっとうなじに触れる。ひんやりとした手に体が驚く。

「綺麗な肌なのに」

「いいからはやく! 噛み跡があったら『私はアズサのもの』って感じがして嬉しいからさ」

「もう、そういうこと言わないの! じゃあ……噛むよ」

 アズサが緊張した声色で言う。

「一生消えないくらい強く噛んでよね」

 アズサは返事の代わりに呆れたように笑った。

 その後深呼吸をしてから彼女の顔が近づいてくる。息がくすぐったい。

 そして、うなじを強く噛まれた。

「ゔっ」

 思わず声がもれるほどの痛み。これはしっかり跡になってくれそうだ。

「大丈夫?」

「平気! これで私はアズサのものになった訳だから、責任とってね」

「その傷が消えるまで頑張るわ」

 私たちは腕を絡めて次の部屋へ向かう。

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