第6話 新米奥様の初仕事!
魔法使いさんことゴーシュさんに結婚して貰う了承を得ることが出来た私は、次の日の朝、御者に魔法使いさんに結婚の了承を貰ったことを話し、彼は優しく怖い人ではないから自分は大丈夫だと家族にも伝えて欲しいとお願いした。
私はその後、去って行く馬車が見えなくなるまで見送って、これで両親と兄や姉、家に勤める皆が少しでも安心してくれたら良いな…と祈りながら大きく息を吐いた。
こうして、館には私とゴーシュさんが二人だけ…。
私と彼の新しい夫婦としての新しい生活が始まったのだった…!
「―――――ゴーシュさんのことをもっと知りたいと言いましたけれど、私の事も知って貰いたいので、自己紹介しますね」
結婚を了承して貰ってからの自己紹介。順番も滅茶苦茶だし、何だか変な感じがしちゃうけど、大事なことだもんね!
「私の名前はメーデル・アンリ・エルーソンと申します。子爵である父オースティンの末の娘で、
意気込んで自己紹介する!と言ったものの、自分で話しながらふと、自分自身には他人に自信を持って紹介できるような趣味や特技がないのでは?…と言うことに気が付いてしまった私は、何だか急に恥ずかしくなってしまった。
弱小とは言え、一応は貴族の家で、贅沢をしたつもりはないけれど何不自由なく育てて貰い、特に苦労と言う苦労もせず、好きな本を読んで、庭をきままに散策して、たまにメイドたちの仕事の真似事をさせて貰ったりして、そんな風に呑気に過ごしていただけの私に、人に誇れるような趣味や特技なんて何もなかったのだ…!
けれど、私のそんなショックをよそに、ゴーシュさんは「それなら…」と言う様子で言葉を続けてくれる。
「本がお好きだと言うのでしたら、この屋敷にも書庫があります。…えと、メーデルさんが興味を持てるような本があるかはわからないですけれど……良かったら後で案内するので、好きに使って下さいね」
「本当ですか!?」
それは素直に嬉しい!!
魔法使いさんの家の書庫なんて、一体どんな本があるのだろう?とても興味がある!
「はい。あと、…料理…は、
「だ、大丈夫です。私は嫁いできた身ですから、旦那さまに手料理を食べさせることくらい、やらせて下さい!」
ついムキになってしまい、ぎゅっと握った拳で自分の胸をトントンと叩きながら言いきってしまった。
長い前髪で表情は良く見えないけれど、ゴーシュさんはちょっとだけ不安そうに口をモゴモゴさせている…。
「で、でも」
「頑張って美味しい物作りますから…!」
私がもう一度言い切ると、ようやくゴーシュさんは「わかりました…」と頷いたのだった。
そんなこんなで本日は、私の旦那様に美味しいご飯を食べて貰うためにお料理を頑張ることにした。
私は、ゴーシュさんに教えて貰った
魔法使いさんのところに来ることが決まってから、メイドたちに無理を言って何度か練習させて貰ったと言ったのは嘘ではない。
だから私は全く料理に触れて来なかったという訳ではないし、レシピ本だっていくつか読んできた。だからメイドたちがいなくたって料理くらいしっかり作れるはず…!と良くわからない自信があった。
(そう、あの練習を思い出すのよ、メーデル。…サラダ用のレタスの葉をちぎるちぎり方だとか、トマトのヘタの落とし方だとか…。)
恐らくは数分ほどの復習タイム。
「………………」
ここで自分が料理を教わった時のことを思い返していて、私は一つのことに気が付いてしまう。
(…あれ?…私、
—―――お嬢様!危ないからダメです!
——―—あ、あ、あ!火に近づいたらダメです!
それは私がやりますから、お嬢様は味見をお願いします。それと、サラダの盛り付けを…!
—―――さすがお嬢様。見事な盛り付けです。色鮮やかで美しく盛り付けられていますね…。才能がお有りになりますよ…。
当時、自分は料理を勉強している&花嫁修業をしている!と張り切っていたけれど、こうして落ち着いて考えてみればそれは、幼い子供の手伝いレベルにもなっていなかったんじゃないか?と思い当ってしまい戦慄した。
「……………もしかして、私、実は全然料理出来ないのでは……?」
いやいや、そんなことはない!
100を上限として、私の実力が1か2だとしても、0ではない!それならば、1か2くらいの力で出来ることを…。いや、それをなんとか、3とか4くらいにまで出来るように頑張るのが努力ってものじゃない!!?
私は必死に自分自身を励まし、料理作りを再開することにしたのだった。(実際にはまだ何も始めてなかったんだけど…)
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