惰性的な幼馴染
味噌わさび
第1話 疑念
「おい」
朝。俺は誰かに呼ばれて目を覚ます。ゆっくりと目を開けると、女の子が俺の部屋に立っていた。
長い綺麗な黒髪に、白い肌。しかし、俺を見る視線は冷たいものだった。
……といっても、驚きはない。すでにいつものことだからだ。
「……おはよう」
「早く起きなよ。外で待ってるから」
それだけ言って、彼女は俺の部屋から出ていった。
俺は起き上がって、パジャマを着替え、部屋を出て、リビングに向かう。
母さんにミサキを待たせていることを叱られながら、俺は何も返事せずに、そのまま朝食を食べ、歯を磨き、自分のペースで玄関を出た。
玄関の扉を開けると、つまらなそうな顔でスマホをいじる先程の少女……幼馴染のミサキが立っていた。
「……悪い」
俺がそう言うと、視線だけ動かして俺のことを確認し、そのまま歩き出す。俺もその少し後を歩く。
俺たちは近くの高校まで毎日一緒に歩いていく。というか、幼稚園もそうだったし、小学校もそうだったし、中学校もそうだ。
家が近いから自然と幼馴染になった。小さい頃はもっと可愛げがあったのだが……高校に入ってからなんというか……「惰性」で、幼馴染をやられているような気がする。
「あのさぁ」
と、いきなりミサキが声をかけてきた。
「え……。何?」
「朝。もっと早く起きられないの?」
「あ……。ごめん……」
「別に謝って欲しいとかじゃないんだけど。っていうか、私が迎えにくるってわかっているわけじゃん?」
俺は黙ってしまった。ミサキは小さくため息をついて、それ以上は何も言わなかった。
学校についてからも、特に会話はない。教室には一緒に入るが……それ以降、俺とミサキの間に会話らしいものはほとんどない。
俺はそもそも学校でほとんど会話する相手というものがいない……だから、基本的に自分の机で寝たふりをしている。
たまに、ちらりとミサキの方を見る。ミサキは学校でも友達も多い。女子生徒だけでなく、男子生徒とも話している。
その様子は、どう見ても、俺と登校しているときよりも楽しそうに見える。
だから、最近、俺はこう思うのだ。
ミサキは……長年の付き合いだから……惰性として、俺の幼馴染をやっているのではないか、と。
とっくに俺のことなんかどうでもよくて、早く幼馴染という関係から開放されたいのではないか、と。
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