第67話 未来の事情とショットガン
「も、もう分かったわ。悪かったわね」
「ああ、うん。気にすんなよ」
復活して俺に頭を下げるユナ。
「それで今日の本題なんだけど、あんたの境遇について聞かせて欲しいの。転生とか、その辺」
「まあ、別にいいけど。でもそっちのことも聞かせて欲しいな」
「それもそうよね。ならお互いに情報交換ってことで。まずはこの時代に来た手段と理由」
「俺はこの前も話した通り死んで、転生した。だから理由はない」
「転生、ねぇ? 記憶を残して過去に転生なんて本当にあるのかしら。そもそも過去に転生っていうのが納得できないわね」
「やっぱ転生って言ったら異世界だもんな」
「そういうファンタジーの話をしてるんじゃないわよ!! 普通、転生っていうのは自分が死んだ瞬間から3か月~5年くらいの間に起きるもの。あくまでも目安だけど過去に転生した例は聞いたことがないわ」
「おいちょっと待て。どういうことだ? お前の時代だと転生が解明されてるのか?」
ユナの発言は転生がどういうものかを言及するものだった。
「え? あ、そっか。あなたは2023年て言ってたっけ? その時代だとこういうこともわかってないのか。でも説明めんどいな~」
「ざっくりでもいいから教えてくれ」
「まあいいけど……。確か2087年だったかしら? ニュージーランドのなんたらっていう博士が過去何件もあった前世の記憶を残したまま生まれてくる子供の調査をして転生の理論について発表したの。~~~~~~わかった?」
全然わからん。なんだよ、死んだらその後3か月~5年の間に転生する? 何に転生するかはわからない。記憶を残したまま転生するのはごくわずか。 ちょっと話が急すぎてついていけない。
「でもさっきも言ったけど過去に転生する例は聞いたことないわ。でもわかってないだけかもしれないけどね」
「まあ、転生したものは仕方ない」
だってすでに転生はしちゃってるもん。
それより大事なのはユナの方だ。
「で、お前は?」
「私は前も言った通りタイムバックよ」
「具体的な手段は?」
「有り体に言えば宇宙船ね」
ほう。宇宙船。なかなか素晴らしい響きだ。だがただの宇宙船で時は超えられない。
「宇宙船で時は超えられねえよ」
「そうね。でもそういう装置が開発されたの」
「それはちょっと、いやだいぶ気になるけど……多分わかんないだろうからいいや」
「まあ、そうね。まあチョーカンタンに言うと宇宙空間で超すごいパワーを加えてブラックホール的なのを作ってそこに光速を超えた速度で突っ込むと時空がゆがんで過去に行くって感じね」
「ほう」
曖昧だが確かに分かりやすい。理論はよくわからんが。
「で、お前は俺に何を求めてんだ?」
「え?」
「いや、だから俺に何かしてほしいことがあるんだろ?」
「あなた機械に強そうじゃない? 多分だけどあの銃もあなたが作ったんでしょ?」
「まあ、そうだけど」
「ならちょっと協力してほしくて」
「何に?」
「ついてきて。来たらわかるわ」
そう言って部屋を出る。
ユナが向かったのは尾張の海岸だった。
「何があるんだよ?」
「いいから来なさい」
そう言ってしばらく砂浜を歩いていくと、何か人工物のようなものが見えた。
「なんだ? あれ」
「あれが私が過去に来た宇宙船」
ほう。見た目は戦闘機に近いだろうか。あんなので時が超えられるとは思えんが。
わざわざ俺に見せた理由は……少し考えればわかるな。
「それでこいつのどっかが壊れてて帰れんから俺に手伝えと?」
「話が早いわね!!」
「未来の技術なんだろ? 俺に直せるとは思えんが」
「でもこの時代の人よりはマシでしょ」
なんで俺がお前にそこまで協力しなくちゃいけないんだよ。っていうのが本音だ。でもちょっと気になるからとりあえず中見てみるか。
中は意外にもシンプルだった。操縦桿といくつかのボタン。カメラの映像が映る、モニター。足元にいくつかのレバーと収納。
ぱっと見壊れている個所はわからない。
「どこが壊れてるんだ?」
「亜空間を開く装置のとこが……」
「よりにもよって俺が一番わかんないとこ!! お前の方がわかるんじゃないのか?」
「実は私は研究室のメンバーだけど最年少だからこの宇宙船の設計とかにはかかわってないの。装甲とかの傷つきやすい部分の修理は出来るけどよりにもよって壊れにくい場所が壊れるなんて……」
「なんで最年少のお前が実験台になってんだ?」
「そ、それは……そもそもこの実験、行くのは2180年の予定だったの」
「は?」
どうしたら600年ちょっとの差異が出るんだ。
「何でそれが戦国時代に……?」
「亜空間からなかなか出れなかったのよ」
「あらまあ」
「で、なんで行くのが2180年だったら最年少のお前が行くんだ?」
「私が生きてたのは2199年って言ったでしょ? 単純に時をさかのぼる時間が短い方が安全だという推測があって、でも同じ時に同じ人が二人いるとどうなるかわからないから、遡る時間が一番短くていい最年少の私が選ばれたの」
「なるほど」
そういえば世界初のタイムバック実験とか言ってたな。まだいろいろわかってないことが多いのだろう。
「でも、その亜空間とやらは俺にもわからんぞ?」
「まあ、機械だから何とかなるでしょ。とにかく協力して!!」
「えー俺わからんって。だいたい俺にメリットないじゃん」
「なるほど、メリットね。それは当然の要求だわ。でもお金は持ってないし……何か知りたいことはある?」
「知りたいこと?」
「未来の知識であなたの手伝いをしてあげる」
「例えば?」
「なんでも答えられるわ」
「うーん、急に言われても……」
知りたいこと、ねえ? 銃の設計図とか? アサルトライフルとか聞いてみる? いや、ショットガンの方がいいかも。
「じゃあショットガンの設計図をくれ」
「え? ショットガン? 光線銃とか熱線銃じゃなくていいの?」
な、なんだそれは? 光線銃? レーザービームのことかな? 2199年にはついにその次元に達しているのか。気になるが俺の愛した銃ではない。
「いや、ショットガンでいい」
「そう、わかったわ。でもこれから作る銃はこの時代の人に渡しちゃだめよ?」
「え? なんで?」
「歴史が変わっちゃうからに決まってるでしょ!!」
「前も言ったけど歴史は作るものだから」
「それでもこれからもしあなたがライフルとかバズーカとか作ったら戦の勝敗とかが変わっちゃうかもしれないでしょ?」
「その時はその時だよ」
「でも誰にも渡さないっていうのは約束して」
「……あぁ、わかったよ」
ユナには俺が本能寺の変を阻止しようとしているのは言わないほうがよさそうだな。絶対止められる。
「じゃあウィキで……」
「ちょい待て待て待て!! ウィキ!?」
「え、うん。私銃とかわかんないし」
「なんでネットないのに使えんだよ!!」
「ネット? あんたいつの話してんのよ?」
「令和だけど?」
「古ッ!? 2199年はネットなんてなくても見れるのよ」
「スマホは?」
「スマホ? ああ、博物館で見たわ。今ではそういう類の物はすべて体に内蔵されてるのよ」
わお、未来的っすね。
「印刷は出来ないから紙に写すわ」
「頼むから精密に写してくれよ!! ショットガンは弾も違うからそれも頼むな」
「わかったわよ!! これを受け取るからにはちゃんと私にも協力してもらうわよ」
「ああ、もちろんだ」
坂井大助はショットガンの設計図を手に入れた。
ユナは都合のいい部下を手に入れた。
こうして俺はユナに協力することになったのだった。
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ユナの話は時々挟むくらいにしておこうと考えています。
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