【推理士・明石正孝シリーズ第4弾】密室の容疑者
@windrain
第1話 二人の女性
その日の午後、まさかあんな光景を目にすることになるとは、そのときはまだ知る
僕と明石は、大学の図書室の隣の会議室にいた。そこは「ミステリー研究会」に割り当てられた活動場所なのだが、「
推理士とは、「探偵」に近いようでいてそうでもない。というか、探偵ほど親切な存在ではない。
探偵は、依頼に基づいて調査をし、依頼人が納得する結論を提示する。しかし推理士は、事実に基づいて可能性のある推理を提示するだけで、結論を提示したりはしない。
それでもその推理力で、今年に入ってもう3件もの殺人事件を解決しているんだが。
いやいや、殺人事件なんて普通は警察の管轄でしょう? と誰もが思うところでしょうが、1件目の事件は僕、
そして明石は、その日のうちに推理をまとめて事件を解決に導いてしまった。
2件目の事件は、僕がまた第一発見者になってしまったんだが、その時の捜査責任者が県警本部の田中管理官という人で、1件目の事件のときに地元の刑事から明石のことを聞いていたらしく、あろうことか明石に捜査情報を提供して推理を依頼したんだ。
明石はまたしてもその日のうちに推理をまとめ、これも解決に導いてしまった。
そして3件目だが、驚いたことに田中管理官が県警本部の会議室に僕たちを招いて、迷宮入りになりかけている事件の推理を依頼したのだった。
難しい事件だったが、明石は限られた情報の中で抱いた疑問から推理を組み立て、一つの可能性を示した。そして驚いたことに、それが的中してしまったんだ。
県警本部では、明石はまるで「リアル
「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」とは、発明王エジソンが言ったとされる名言だが、確かに普段の明石はほとんど喋らないのに、推理を説明するときだけはもの凄く雄弁になる。
おそらくその時、明石の脳味噌はフル回転しているのだろう。考えをまとめて話すというよりも、話しながら考えているようなところがある。だからときどき突拍子もないことを言って、周囲を惑わせることもしばしばだ。
だが結果を見れば、認めざるを得ない。明石の推理=仮説が、3回もまぐれ当たりしたとは考えにくいのだ。だからそれは、やはり天才のなせる
その日、ノックもせずに入口の引き戸をガラリと開けて、女の子がいきなり入ってきた。
制服を着ていたので、高校生か中学生だろうか? 身長は低くて童顔だが、なんか異常なほど胸が大きいような・・・。
「明石さんっていますか?」その女の子は、つかつかと僕に歩み寄って、「あなたが明石さん?」
「いや、明石はそっち」
僕が明石を指差すと、その女の子は座ってパソコンのキーを叩いていた明石にいきなり抱きついた!
「明石さ~ん、どーもありがとうございま~す!」
読書していたサークルメンバー全員が立ち上がった! 男ばかりのメンバーたちにはうらやましすぎる光景だったが、明石は見たことがないほど目を見開いている。
「自己紹介が遅れました、私は
佐山? なんか聞いたことがある名字だ・・・あっ、『迷宮入り殺人事件』の被害者の妹? ということは、中学生か。
明石も気づいたようだ。
「子どもは非論理的だから嫌いだ。近づかれると
なにこんな時に『ガリレオ』の真似してるんだよ。それに中学生でもこの体型は、もはや子どもじゃないだろう。サークル主催者の春日なんか、歯噛みせんばかりに悔しがっているぞ。
「県警本部の田中さんから聞いたんです! 兄を殺した犯人を捕まえることができたのは、明石さんのおかげだって」
「田中管理官、余計なことを・・・」
明石が立ち上がって彼女のハグから逃れようとしたとき、再び入口の引き戸がガラリと開けられた。
「明石君、助けて!」
今度飛び込んできたのは、確か・・・『猫探し殺人事件』のときに猫探しを依頼してきた星野
「彼が、殺されてるの!」
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