ゴーレムでGO!転生したらゴーレムでした

葵杜蒼石

冒険の始まり

第1話 運命の出会い

雨が降りしきる山の中、登山が趣味の大学生、斎藤豪さいとうごうは小さな洞窟で雨宿りをしていた。

「ツいてないな~、まさかこんなに雨が降るなんて……。」

 ぼやく豪をよそに雨足は強くなっていく。

「もう少し奥に行くか、このままだと濡れちゃうな。」

 豪が奥に進もうとした瞬間、光が空を裂いた。

 轟音が空気を揺らし、地面が揺れる。

 豪は逃れるように洞窟の奥へと進んでいった。

 洞窟の奥に逃げ込んでどの位立ったのだろうか。

 雨の様子を見ようと腰を上げたその時だった。

 地面が揺れた。

 山全体が揺れている。木々がざわめき、空気が震える。

 危険を察知した豪は入口へと駆け出そうとした。

 しかしそれよりも先に洞窟が崩落した。

 大量の瓦礫が身体に直撃し全身を覆う。

 身体に力が入らない。

「ああ……俺、死ぬんだな……。」

 豪は消えゆく命を感じながら目を閉じた。

 ……?

 何かがおかしい。

 違和感を覚え豪は目を開けるとそこは洞窟ではない真っ白な世界だった。

 体を覆っていた瓦礫はない。身体は動く、何処にも異常はない。

 そんなことは有り得ない。確かに洞窟の崩落に巻き込まれ死んだ。

「俺は死んだはずじゃ……。」

 豪が感じたもう一つの大きな違和感。

 それは。

「俺は……誰だ……?」

 記憶が、無い。

 自分が何者か思い出せない。

 どこまでも続く白い空間が孤独感を加速させる。

「おーい!誰かいないのかー!?」

 豪の声は白い空間に虚しく響き渡る。

 ため息をつき豪はその場に座り込む。

「ここに人がいるということは……アレが起動したのか……。しかし誰が……。」

 背後から聞こえてきた声に驚き振り返る。

 そこには一人の老人が立っていた。

「うわぁっ!?」

 豪は思わず飛びのく。

 背後に急に現れた老人は申し訳なさそうに豪に告げる。

「驚かせるつもりはなかったんだが・・・。すまんな、ワシの名前はエクストクリム。しがない魔法使いだよ。」

 魔法……使い……?確かにローブを纏い髭を携えた姿は魔法使いそのものであるが。

「さっきアンタは何か知っている感じだったが、この場所がなんかのか知ってるのか?」

 豪はエクストクリムに疑問を投げかける。

「この場所は……そうだな、深層世界インナースペースとでも言おうか。魂が至る場所であり、魔力の根源である。そして君がここにいる理由はこれだ。」

 エクストクリムが手をかざすと、半透明の紙の様なものが空中に現れた。

「これは……一体なんだ?」

 その紙には土と岩で形成された人形が写し出されていた。 

「これは、ゴーレムだよ。ワシは生前コイツの研究をしていたんだが、色々あってな。コイツを封印しておった。しかし何故かコイツを起動させる術式が発動した。」

「このゴーレムと俺がここにいる事に何の関係が……?」

 エクストクリムは一瞬だけ思考し言葉を続ける。

「このゴーレムが稼働するには人間の魂が必要なのだ。」

「それってつまり俺が生贄になるってことかよ!?」

 豪はエクストクリムの胸ぐらを掴む。

「お、落ち着いてくれ、確かにこのゴーレムは人間の魂を必要とするが消費するわけではない!」

「ふぅー……解ったよ、いきなり胸ぐらを掴んで悪かった。アンタの言い分が正しければ俺は消えやしないってことだな?」

「そうだ、このゴーレムはコアに人間の魂を定着させる意思を持ったゴーレムとして研究していた。だが流石に人間の魂を使うということに忌避感を覚えてな……。このゴーレムごと研究を封印したのだ。」

「それで?こいつに魂が定着したらどうなる?」

「君の意識は深層に沈みゴーレムとして一生を暮らすことになる。」

「つまり、ここに囚われるってことだな?」

 エクストクリムは深く頷く。

 豪は深いため息をついた後、エクストクリムに向かい宣言する。

「やってやるよ!ゴーレムとして生き抜いてやる!」

 エクストクリムはその宣言を聞き驚いた様な表情を浮かべるが直ぐに笑みを浮かべた。

「その言葉を聞いて安心したよ、どうやらワシが抑えているのも限界のようなんでな。」

「それは一体どういう・・・」

 世界が突如揺れ始めた。壁が崩れ闇が除く。

 足元が消えバランスを崩した豪の身体を光が包む。

「これから君はゴーレムとなり、意識は深層に沈んでいく!数々の困難や冒険が君を待っているかもしれない。しかし君ならやり遂げられる!そう信じているよ。」

 エクストクリムが言い終わった直後に豪は飛ばされた。

 飛んでいく光を見送り、エクストクリムは独り言ちる。

「しかしこのゴーレムを起動できる人間がいるとはな……。まさかヤツが……?」

 ◆

 とある少女が森を行く。

 自身より大きな杖を背負い、腰まである深い青の髪を揺らしながら目的地の洞窟へ向かう。

 彼女はレピス・クスア、魔法使い──見習いである。

「村長さんに聞いた話だともうすぐ着くはずなんだけど……。」

 地図を広げながら頭を抱える。

「もっとちゃんとした地図描いてよ先生~!!」

 広げた地図はお世辞にも正確とはいえず実に簡潔すぎる物だった。

 レピスにはそれでも洞窟に向かう理由があった。

 レピスは魔法使いとしての素質は十分あり、特にゴーレム使いとしての素養が高かった。

 しかしレピスには一つの弱点があった。それは自身に宿る魔力量が多すぎるということだった。

 ゴーレムを生成し操ろうにも魔力が高すぎてゴーレムが堪えきれず炸裂してしまう。

 そこでレピスの師、トライゼルはラビ村の付近にある洞窟を形成する岩や土ならレピスの魔力に耐えきれるはずだと思いレピスを向かわせたのだ。

 レピスは一度休憩をとるため切り株に腰を下ろす。

 腰に掛けた水筒を手に取ろうとした時である。

 膨大な魔力が森を駆け巡った。

「今の魔力は何?たしかあっちから……。」

 レピスは再度地図を見る。

「もしかして……!」

 地図を畳み魔力を感じた方向に走る。

 先生が言ったいた洞窟は多分この先に──。

 木々を搔き分け辿り着いたそこには、

「本当にあった……っ!」

 洞窟の中は全てを飲み込まんとする程暗く、全く奥が見えない。

 レピスは意を決して洞窟に足を踏み入れる。

「光よ──。」

 レピスは呪文を唱え周りを照らす。

 辺りを見渡すが特に変哲もない洞窟である。先程感じた魔力の発生源のような物は見つからない。

「確かにこの洞窟から感じたはずなんだけど……。とにかく材料を集めなきゃ。」

 レピスが採取を始めようとした時である。

 誰か呼んでいる……?

 レピスは導かれるように洞窟の奥へと進んでいく。

 暫く進んだ先は壁があり行き止まりの様だ。

「行き止まり……?」

 レピスが壁に手を当てると壁に光が走り紋章が描かれる。

「な、何!?」

 紋章が光輝くと同時に光の玉がレピスを包む。

 あまりの眩しさに目を瞑る。

 ────?

 レピスが恐る恐る目を開けるとそこは、先程までいた洞窟とは思えない空間だった。

 転移魔法?一体何故あの洞窟に?

 疑問を抱きながらもこの場所を探索してみることにした。

 錯乱する研究資料、割れたビーカーやフラスコなどを見ると、ここは研究室だったらしい。

 そして気になる物が一つ。

 レピスは探索中に見付けたとある物の前に立つ。

 それは土と岩で形成された人形……ゴーレムだった。

「ゴーレムにしては少し小さめだけど……なんでこんな所に……?」

 レピスがゴーレムに手を伸ばそうとした時だった。

 ゴーレムを中止に魔法陣が展開される。

『起動準備完了。コアの安定化を確認。起動します。』

 無機質な音声と共にゴーレムが起動する。

 ゴーレムは周りを見渡す様な動きをした後、レピスに近づいてきた。

 レピスは一瞬身構えるが敵意がない事を察し杖を下ろす。

「えっと……アナタは一体何者なの?」

 ゴーレムに問うが当然回答は帰ってこない。

 それはそうだよね。レピスは苦笑いしつつこれからのことを考える。

 取り敢えずこの場所からの脱出方法を考えよう。レピスが再び探索を始めようとしたその時だった。

 レピスの足元に魔法陣が展開される。

 レピスが身構える隙も無く魔法陣が作動し、転移させられる。

「ここは……さっきの洞窟?」

 消えゆく紋章が描かれた壁を見上げレピスは安堵する。

 さてこの子はどうしよう。

 レピスは隣のゴーレムを見やる。

「よし!一回帰って先生に聞こう!」

 先生ならなにか知っているかもしれない。

 レピスはそう思い洞窟の出口へと向かおうとしたその時、洞窟内に咆哮が響き渡る。

 空気がビリビリと震え、洞窟内の雰囲気が変わる。

 重々しい足音を響かせて咆哮の主が暗闇から現れた。

 全身から鋭利な水晶を生やしたそれは

「クリスタル・ドラゴン!?どうしてここに!?」

 レピスが驚くのも無理はない。

 ドラゴンという種族は、通常は魔力の高い地を好み、特にクリスタル・ドラゴンは標高が高い山を縄張りにしており滅多に人前に現れない。

 それが目の前に現れたのだ。

 クリスタル・ドラゴンは水晶のように輝く研ぎ澄まされた爪を振り上げる。

 その凶爪きょうそうはレピス目掛けて振り下ろされた。

 レピスはドラゴンという圧倒的な力を持つ種を前に圧倒され体が動かない。

 レピスが死を覚悟した時、強い打撃音が洞窟内に響いた。

 顔を上げるとそこにはクリスタル・ドラゴンの前に立ちふさがるゴーレムの姿があった。

 ゴーレムはレピスを一瞥すると再びドラゴンに攻撃をしかける。

 貴方は一体なんなの?

 通常ゴーレムは召喚したマスターに忠実であり、マスターを守ろうと行動する。

 しかし基本的には自我など無く命令が無ければ動かない。

 だが目の前のゴーレムは命令も無いのに戦っている。

 それはまるで

「人間みたい……。」

 レピスは目の前の光景に呆気にとられていたが、何かが砕ける音を聞きはっと我に返る。

「腕が……っ!」

 ゴーレムの右腕は砕け散り、全体の損傷が激しく、立っているのがやっとの様だった。

 一方クリスタル・ドラゴンは無傷、消耗は見られるがすぐに回復されるだろう。

 クリスタル・ドラゴンはトドメと言わんばかりに追撃を開始する。

 ゴーレムは攻撃を回避できているがそれは時間の問題だった。

 バランスを崩し転倒したゴーレムにクリスタル・ドラゴンが迫る。

 レピスは震える腕で杖を握りしめ、呪文を唱える。

「炎よ──っ!」

 無数の火球がクリスタル・ドラゴンに放たれる。

 クリスタル・ドラゴンの悲鳴が洞窟内にこだまする。

「き、効いてる?」

 クリスタル・ドラゴンはレピスを睨み付ける様に見遣ると咆哮をあげる。

 全身の水晶が怪しく光り始め、口内に魔力が集まり始めた。

「まさか、あれは……っ!」

 洞窟全体を照らすほど、集約された魔力は渦となり一気に放たれた。

「危ない!!」

 レピスは咄嗟に、ゴーレムに駆け寄り防御魔法を唱える。

 魔力で作られた障壁も数秒は形を保っていたが、洞窟全てを覆いつくすほどの魔力の奔流を拭ぎきれず徐々に崩れていく。

 レピスは障壁を保とうとするが、尽力も虚しく障壁は破られる。

 全身を焼かれたレピスは地に伏した。

 四肢は無事だが全身に力が入らない。

「もう駄目……かな……。」

 レピスは静かに目を閉じた。

 深い闇に堕ちていく感覚の中レピスは誰かの声を聞く。

「誰かいるの……?」

 その瞬間、レピスは眩い光に包まれる。

 レピスが目を開けるとそこは延々と白が続く空間だった。

「お目覚めかな?」

 レピスは声が聞こえてきた方向に振り返る。

 そこには見知らぬ男が立っていた。

 その男の年は二十ほどで見慣れぬ格好をしていた。

 男はレピスに語りかける。

「初めまして、えっとレピスちゃん、だよね。」

「ど、どうして私の名を?」

「う~ん、そうだなぁ。信じられないかもしれないけどあのゴーレムが俺なんだ。」

 ──あのゴーレムが?どういうこと?

 この男は何を言っているのだろうか、しかし嘘はついていないそんな気がする。

「警戒……するよね、何から説明すればいいかな。そうだまずは……」

 ゴーレムは語りだす、この空間のこと、今我々の身に起きていること、そして自分自身のこと。

「えっと……、つまり貴方は異世界で一度死んだと思ったらゴーレムになっていた……そしてこの深層世界インナースペースでしか喋れないってことですか?」

 レピスは自分自身に言い聞かせる様に一つずつ確認していく。

 正直まだ理解できていない。だが真実であることは伝わってくる。

「君はもう解っているかもしれないけど、君の命は消えようとしているんだ。」

 男は簡潔に告げる。

 告げられた通りレピスは薄っすらと感づいていた。

 自分はあの洞窟でクリスタル・ドラゴンの攻撃を浴びて倒れたのだ。

 無事なはずはない、ではいまここにいる自分は?

「そこで本題なんだけど、俺と契約して欲しい。」

 レピスは男の発言に面食らう。

 契約とは基本的には精霊や悪魔などの知能がある存在との間で交わされるもので、ゴーレムとの契約など聞いた事がない。

 ましてや人間の魂を使ったゴーレムとの契約となると何が起こるかわからない。

 しかし臆している場合ではないのは解っていた。

「分かりました、貴方と契約を結びます。但し一つだけ質問させてください。」

「何だい?」

「貴方の目的は何ですか?」

 男は一瞬考え込み、

「そうだな……、自分の事を知りたい。かな。それに君のことを害する様な事はしないさ。」

 そう答えた。

「これでいい?」

「大丈夫です、貴方は嘘をついていないみたいですし……。貴方のことを信じます。」

「そっか、ならお手をどうぞ。」

 男が手を差し出す。

 レピスは差し出された手を握り返す。

 二人を中心に魔力の輪が広がり魔法陣を描く。

『契約者、レピス・クスア。契約者、■■■■■■。契約内容の再確認をお願いします。』

 頭の中に無機質な音声が響く。

「これから、俺達には想像を絶する困難や冒険が待ち受けているだろう。それでも契約するかい?」

「はい、もう決めましたから。それに案外ドキドキしてるんですよ?これからの冒険に。」

『両者の了承を確認。契約が完了しました。完全起動開始します。』

 音声と共に空間が崩れていく。

「あとはそうだな、この空間での出来事は夢のような物だ、目が覚めたら君は忘れているだろう。しかしこれだけは覚えていてくれ。俺は君の味方だ!」

 空間が完全に崩れ去りレピスの意識は現実に戻された。

 レピスは目を開け跳ねるように起き上がり、周囲の確認をする。

 クリスタル・ドラゴンは先程の竜の息ドラゴン・ブレスで疲弊しているのか動かない。

 ゴーレムは変わらず地面に突っ伏している。

 さっきのは何だったの?

 レピスは先程までの不可思議な体験を思い出そうとするが、思い出せない。

 思考が混乱しているレピスだったが、クリスタル・ドラゴンの咆哮で我に返る。

 クリスタル・ドラゴンは今度こそ完全に息の根を止めんと襲い掛かってきた。

 しかしレピスは知っている。心強い味方がいることを。

「ゴー君!」

 レピスの呼びかけに応じてゴーレムが鋭い一撃を喰らわせる。

 先程までのゴーレムとは思えない動きでクリスタル・ドラゴンを追い詰めていく。

 クリスタル・ドラゴンは爪で反撃を試みるが全て避けられる。

 そしてゴーレムに気を取られていれば、

「炎よ──!」

 火炎がクリスタル・ドラゴンを襲うのだ。

 ゴーレムと人間の息のあったコンビネーション。次第にクリスタル・ドラゴンの疲弊が大きくなっていく。

 追い詰められたクリスタル・ドラゴンは全身の水晶から魔力弾を放出する。

「きゃぁ!?」

 無差別に飛来する魔力弾により攻撃の手が緩んだ隙を見計らいクリスタル・ドラゴンは距離を取り、再び竜の息ドラゴン・ブレスを放とうと態勢を整える。

 レピスは態勢を持ち直し、杖を構え、呪文を唱え始めた。

「ゴー君、いくよ……っ!」

 ゴー君を中心に魔法陣が展開されていく。

 その数は一つ、二つ、三つと増えていき数え切れない量の魔法陣が展開されゴー君に属性や耐性が付与されていった。

 一瞬の静寂の後、クリスタル・ドラゴンは竜の息ドラゴン・ブレスを放つ。それと同時にゴー君は飛び出した。

 二つの力が真正面からぶつかり、せめぎ合う。

 魔力量の差があり過ぎる……!!

 レピスは随時、耐性や魔力障壁を張り続けるが勢いは殺しきれない。

 金色の光が莫大な魔力の奔流に飲み込まれそうになった時、

「負けないで────!」

 レピスは思わず叫んでいた。叫んでどうにかなるわけでもない。だが叫ばずにはいられなかった。

 しかしその願いに応える様に金色の光は輝きを増し、勢いづく。

 金色の光は魔力の奔流を徐々に押し返し、その勢いは止まらない、停まるわけがない。

 そして遂にクリスタル・ドラゴンの目の前へと躍り出る。

「ゴー君、やっちゃえーーーー!!」

 全身全霊の一撃がクリスタル・ドラゴンを貫いた。

 クリスタル・ドラゴンは悲鳴をあげながら消滅していく。

「勝てた……の?──やったぁ!」

 レピスはゴー君に駆け寄り、抱きしめて共に勝利を喜びあう。

 レピスとゴー君が歓喜に湧き上がっていると背後から声が聞こえてきた。

『これを見ているとしていたら君がそのゴーレムのマスターになったようだな。』

 振り返るとそこには老人の立体映像が映し出されていた。

『そのゴーレムのマスターである君にお願いしたい。これから伝える場所を巡り、私の研究を完成させて欲しい。』

 立体映像の老人はそういうと手をかざす素振りを見せる。

 するとゴー君の身体から光り輝くコンパスが現れた。

『そのコンパスは次の目的地を指し示している。』

 コンパスはグルグルと回りとある方向を指し示す。

『そのコンパスを頼りに各地を巡り、その土地の紋章エレメントを手に入れて欲しい。』

「紋章って一体……?研究って一体なんなんですか?」

 レピスは問いかけるが答えが帰ってくるはずもない。

 老人は最後に語りかける。

『数々の困難や冒険が君達を待っているだろう!しかし君達ならやり遂げられる!そう信じているよ。』

 そう告げると立体映像は消えた。

「なんだか大変なことになっちゃったな……。」

 レピスは怒涛の展開に呆気に取られていたが、自らの頬を叩き気合いを入れる。

「よし!取り敢えず動かなきゃ。まずは先生の所に戻って今日あったことを説明しないとね。行こうゴー君。」

 レピスはゴー君を連れて洞窟の出口に向かう。

 さっきのクリスタル・ドラゴン……消滅する魔物なんて聞いたことがない、もしかして誰かが召喚したのだろうか?だとしたらどんな理由で?

 レピスは一抹の不安を覚えながらも洞窟を後にする。

 そんなレピスを暗闇から見つめる人物がいることなど知る由も無く、一人と一体は帰路につく。

 雲間から除く太陽がこれからの旅路を祝福するかのように輝いていた。

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