第5話
「は、い。お願いします」
そういうとファリルさんの雰囲気は少し優しくなった。そこから数十分愛し子についての説明をしてもらった。
愛し子は1精霊につき1人しかいないこと。愛し子同士は心よりももっと深い魂に近いところで結ばれていること。ラーレさんは小さい頃から愛し子の存在がどこにいるか分からず、いつも無表情であって私が来てからあれほどまでに笑うようになったこと。とてもよく教えてくれた。そして、私のことを皆が丁重に扱ってくれるのは愛し子と結ばれると、二人の能力が大幅に強化されるということ。ラーレさんの能力が強化されるということはすなわち精霊界の繁栄に繋がる。だから皆が私のことを丁重に扱ってくれる理由らしい。でも、私それだからって皆に無条件に愛されているなんて気持ち悪かった。だから
「そうなのですね。でも私、愛し子だからって皆様に愛されるなんて少し気持ち悪く感じます。ですので、私自ら、皆様に愛してもらえるよう頑張りますね」
そう宣言した。ファリルさんたちはその後部屋を出て行ってしまった。
その日の夜はすごくよく眠れた。きっといろんなことがあったし、ベッドがとてもふかふかだったからなんだろう。
あぁ、早く起きて姉様たちの朝自宅を手伝わなければ。
寝ぼけたまま辺りを見渡すと私はここがいつもの家ではないということに気がついた。そっか、私あの家を出たんだ。そう思ったら急に涙が出てきた。私が泣いていたら、部屋に精霊さんたちが入ってきてしまった。
「どうしたのですか!! セレス様!」
「いえ、少し驚いてしまって」
そのまま侍女さんたちは私が泣き止むまで待ってくれた。私が泣き止んでからは目の腫れを抑えるために冷たいタオルを用意してくれた。
「ありがとうございます」
「いえ、大丈夫でございます。もう一度お眠りになられますか」
その言葉を聞いて驚いた。私はいつもこの時間に起きていたし、それが当然だと思っていた。だから、二度寝するなんてもってのほかしたことがない。
「いえ、すっかり目が覚めてしまったので、何か手伝うことはできませんか?」
もうあの生活に慣れていたので、何もしない時間というのがとても落ち着かない。お茶を飲んでいるだけとか、お庭を探検するとかそんなことをしているのであれば掃除などをしていたい。そう思って、そう提案したのだが。
「いえ、セレス様に私共めの仕事を手伝わせるだなんて出来ません」
そう断られてしまった。どうしよう。断られるだなんて思ってもみなかった。
「窓拭きとかだけでも良いので…」
「いえ、できません」
「なら、私は何をすれば良いのですか」
その質問をすると、侍女さんたちは困ってしまった。どうやら、本当に私がやることがないようだ。どうしよう。
「でしたら、お庭の整備を手伝っていただけませんか」
そう一人の精霊さんが私の前に出てきた。
「はい。喜んでお受けいたします」
やった。仕事がもらえた。今すぐ行こう、そう思ったのだけど。
「あのすいません、着替えをもらえませんでしょうか。この服では汚してしましそうで。できれば、あなたたちが着ているような洋服を貸していただきたいのですが」
今着ているのは私が着るまでシワひとつなかった服だ。だから貰ってから一日で、汚すなんてできない。私がここにくる前に持ってきたバッグの中には母の形見以外碌なものは入っていないし。
「かしこまりました。朝食は先にお召し上がりになりますか?」
「迷惑でなければいただきたいです」
申し訳ない、きっとまだ朝食の時間ではなかっただろうに。
「では、こちらにきてくださいますか?」
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