20:束の間の事情①。
翌日の日曜日。6/1。日が落ち始めた16時頃。
【三者三葉達の夜更かし話】の二度目の収録後、
「姐さんのオススメの店、静かで中々良いな。個室な上に内装も凝ってっし、ちと高ぇが飯もうめぇ」
「ですよね! 私も今ではあそこのスタジオで収録した日には毎回蛍さんやマネさんに連れて来て貰ってます」
「ほぉ? なら次の収録にでも2人を交えてまた来るか。姐さんのオススメがあれば食ってみてぇし」
「それは……あんまりオススメしませんよって。あの人、外食になると結構舌が適当になるから。その人に合う店選びのセンスは有るけどいざ中に入れば”安かろう悪かろう”&”高かろう良かろう”になりますよて」
「ですね。以前に似たような聞き方をした大先輩さんが一番高い料理に一番高いトッピングを乗せたものを頼まれてましたから。ちなみにその人の感想は『別々で食べれば一級品。合わせたせいでB級グルメ。しかしそれでも舌の上で調和するのが嘆かわしい。プロの腕がそうさせるのか、目利きを利かしたであろう食材がそうさせるのか、余計な余韻が舌に残っているのに不快感が薄い。例えるならミルクティーの甘さとまろやかさの中にほのかに際立つ雑多な茶葉の雑味のよう――あぁ、ただただ惜しい。足した筈の一手がこの品のクオリティの上限を引き上げてしまった』との事です」
「なげぇよ無駄に。つまりは余計な事をしたせいで逆に物足りなくなったって事だろ? 姐さんの意外な一面よりもソイツの無駄な説明が印象が残ったわ」
「あ、あぁ……確かに。でもですね? これはまだまだ序の口です。何時ものあの人ならもっと長い。心許してる相手になら更に長い。これを先輩の名前から取って”ケルト構文”と呼ばれてファンから愛され身内になればなるほどに煙たがられてます」
「煙たがられてんじゃねぇか……まぁ確かに第三者視点なら面白いだろうな。タイマンだったら堪ったもんじゃねぇが」
と、雑談をしながら食事を楽しむ3人。次第に昨日放送した第1回【三者三葉達の夜更かし話】の話になる。
【三者三葉達の夜更かし話】。再生数は既に10万を突破して現在20万回に行きつつあり、それにこう追うして三者三葉公式チャンネル登録者数20万の壁を越えようとしていた。
「公式の方、今夜にでも20万行きそうだな。てかこのペースなら夏休み前に100万人行くんじゃねぇの?」
そう食べながら携帯電話から自分達の公式チャンネルを見て今の感想が出る。しかし琥珀の感想を前に2人は少々難しそうな表情を浮かべ、千寿はその首を横に振った。
「ん~それはどうですかねっと。今は2つの要因のお陰で最高のスタートダッシュが決まっている状態。だから今後はどうなるか……」
「ん? 2つ? んっ……ん、なんかあったけか?」
「
食べながら聞いてくる琥珀。代弁する満穂の指摘に「そうですよて」と同意する千寿。
千寿は自身の携帯でとあるランキングサイトを表示。それをテーブルに置く。
「んだそれ? なんか
「vtuberランキング。それも今年デビューした期待の新人ランキングですよて」
「へぇ。……あ? オレがかぁ?」
流石の出来事に食べる手を止めて千寿が見せたvtuberランキングを見ては、隣で驚きながら「え? 知らなかったんですか?」と質問してきた満穂に「知らん知らんと」と答える。
「まぁ瑠璃山さんはこの手のランキングに興味無さそうだしねっと。――なにか?」
「いやオレの次の奴……んだこれ? マーク?」
「? あ、それ最大手傘下の公式ですねと」
「あぁ……」
(あ~……改めて見ても最大手の傘下のグループに登録者数で勝つってなんだね? しかも約5ヵ月差の後だしで。向こう所属ライバー全員にも勝ってるし)
と、2人共似たり寄ったりなリアクション。
ちなみに現在の鈴鹿のチャンネル登録数は41万人。2位との差はなんと約20万人のダブルスコア。で、3位との差は約30万人という天と地ほどの差が生まれていた。
(――うん! やっぱりおかしいねこれは。実況者や歌い手、絵師や作家等の前世が無い人間がデビュー後2か月余りで40万人越え。そもそもスタートダッシュの時点で30万人。そのスタートダッシュの際に鯰というアドバンテージがあったとしてもいくら何でも可笑しいねと)
「で? これがなんだ? まさかオレが居るから人気が出てるってか?」
「「正解」」
「んな馬鹿な……え?」
2人からの即答と、表情から察して珍しく狼狽える琥珀。それでも何とか持ち直そうとナプキンで普段ではやらない上品な仕草で口元を拭く。
「――あ~でもオレ……てか鈴鹿? こん中だと一番登録者数多いんだよな。新参なのに」
「「ン”ッ”!?」」
「あ、やべっ」
うっかり出てしまった心の声に不意の一撃を喰らう2人。堪らずに撃沈させられるのであった。
ちなみに、もう1つの要因である結成バフ。これは人気の原作に知名度が高いタレントが起用されたと発表された時に発生する盛り上がりの様なもの。一種の宣伝効果である。
現在の千寿達の登録者数。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます