10:~中編~コラボの事情。

 諸々の準備が終了。

 その間、ゲームと一緒に入っていた手紙の内容を搔い摘まんで説明するとこうである。


1、先月発売したホラーゲームの夜勤配達をする事。

2、このゲームは1人用。chapter数は丁度3つなので3人それぞれが担当する事。2人は外で待機。

3,蛍の人脈により3日後に対応予定だったVRが先行体験出来るのでVRを用いる事。

4、部屋中の灯りを消し、待機組はリビングにて蠟燭一本の灯りで視聴しつつ声のみで参戦する事。音声設定の方法は別紙にて。

5、プレイ中のアドバイスは千寿以外可。コメントの助言を伝えるのも可。

 以上。


 上記を踏まえてchapterの担当者を決め、最初のトップバッターは鈴鹿こと瑠璃山琥珀となる。

 でもって、


 モニター1台。

 コントローラー2台。

 

 ――破壊。


 初っ端の驚かし要素で前方にグーパンをしてモニターを破壊。コントローラーは握力のみで持ち手を破損させたり真っ二つに圧し折られたりした。


 何よりも恐ろしかったのはそれを悲鳴や暴言を一切言わずに破壊した事。


 モニターは大きな衝撃音が一瞬だったからまだ良かった。コントローラーはミシミシキシキシパキパキ――と、何かがゆっくりじわじわ壊れていくような音だったせいで千寿達or視聴者共々”なんの音!?”と戦々恐々。


「『あ? コントローラー壊れてやがる』」


 と何の気なし言った際には一同戦慄。それも2回も。替えのコントローラーを渡した際、千寿がつい漏らしてしまった嘆きの言葉にリスナー達から総額30万円程投げられたりして前代未聞の盛り上がり方を見せる。


 で、chapter1が終了。chapter2となり手番が鯰こと石垣千寿に移る。


「『いや子供の落書きでもこんな所に落ちてる時点でキーアイテムでしょうよ』」

「『あ、ここ絶対chapter2の最後かchapter3辺りでイベントがありますねっと』」

「『非常階段の鍵とエレベーターの鍵とな? 多分だけどどっちも使わんね。両方錆びだらけだし。多分だけどchapter1で漁ってたゴミ捨て場が正規ルートかな? ゴミ捨て場の近くに段ボールやらクッションやらが積み重なってたし』」

「『――あ、終わった』」


 と言った感じに考察しつつ進んだ結果、トップバッターの琥珀の僅か半分の時間でサクッとchapter2をクリアしてしまう。

 その考察はまるで予知の如く。ことごとく当たる千寿の考察が琥珀とはまた別の盛り上がり方をみせた。


 ただ――ただやはり一番の盛り上がりを見せたのは大取おおとりの彼女。シスター・エマこと榎本満穂。

 ゲーム内の話が進むにつれ、また自身の手番が近づくにつれて元から無かった余裕が無くなり案の定、


「『あああああああああーっ!?!?』」

「『私配信者ーっ!!』」

「『はっ……はぁ……はぁっ……』」

「『そんっ――ゴホッ』」

「『無理無理無理ッ』」

「『あは↝』」

「『主よ。お助け下さい。どうか――どうかっ』」


 悲鳴。絶叫。過呼吸。泣き。鳴き。笑い。嗤い。終いには本気で神に救いを求める信者となったりetc。

 シスター・エマの新たな一面により薄情にも今日一番の盛り上がりを見せ、同接数5000人の壁をブチ破る。

 結果、シスター・エマのチャンネル登録者が爆増。フェレサ女を代表する1期生と肩を並べる31万人となった。


 ちなみに今日やった夜勤配達の内容はと言うと、地方に左遷された自称エリート配達員操作キャラが破格の特別手当が発生するのに誰も行きたがらない団地の夜間配達に名乗りを上げた所から始まって、団地の近くにある神社でお参りをしてから団地に入れと言う先輩達のお達しを聞かずに団地に入ってしまった事で世にも恐ろしい怪奇現象が起こってしまう、という内容である。

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