ゴブリンはゴーレムと戦います1

 崖を抜けてさらに進んでいくと大きな門があった。

 巨大な門は少し空いていて人が通れそうなぐらいの隙間が開いている。


「薄暗くてよく見えないな」


 中を覗き込んでみるが明かりは奥まで届かず闇が広がっているのみだった。

 光が届かないということは空間が広がっているのだろうということは分かる。


「壁際を歩いていこう」


 何があるか分からない真ん中を堂々と通っていくなどバカしかやらない。

 壁に手をついて壁に沿って歩いていく。


 入り口から真横に歩く形になる。

 部屋になっているのか、あるいは真横に長く通路が伸びているのか。


 歩いていくと突き当たった。

 右の方向に壁が続いているのでそのまま壁伝いに歩いていく。


 この感じだと部屋っぽくなっているなとドゥゼアは思った。


「ん? ……どうやら何かある……あったのかもしれないな」


 歩いているとドゥゼアの足に何かが当たった。

 見てみるとそれは骨だった。


 人間の頭蓋骨で頭が陥没したように割れている。

 少なくともここで何かがあったことがうかがえた。


 まだその何かがあるのかは不明だが頭が砕けるほどのことが起きたのだ。

 そのまま壁沿いに進んでいくといくつもの骨が床に落ちていた。


 ただなぜ冒険者が死体となったのか、その原因が分かるものは見当たらない。


「天井でも崩れたんですかね?」


「さあな……上も光が届かないから確認しょうがないな」


 崩れた土の塊のようなものが転がっていてオルケは天井を見上げる。

 しかし天井は高く光が届かないので様子は見えなかった。


 かなり古くからありそうな場所なので天井の一部が崩れていてもおかしくはない。

 ドゥゼアもチラリと上を見たが天井の様子はゴブリンの目でも見えなかったので確認するのは諦めた。


 オルケが火の魔法を飛ばすとか方法はあるけれどわざわざ天井の確認に魔力を使う必要なんてないと判断した。

 まっすぐ進むとまた突き当たりがあって右に行けるようになっていた。


 この感じならば四角い部屋だったようだ。

 そして少し進んだところで扉が現れた。


 位置的には最初に入ってきた扉から逆側になる。

 こちらの扉は完全に開け放たれているが当然扉の向こうも暗くて様子は分からない。


「わわっ!?」


「骨いっぱい」


 また壁伝いに移動しようと扉の裏に行って驚いた。

 扉の裏には大量の骨があったのである。


「なんでこんなところにたくさん……」


 どうしてわざわざ扉の後ろに隠すように骨が置いてあるのかとオルケは嫌そうな顔をした。


「誰かが置いた訳じゃないだろうな」


「そうなの?」


「でもここにたくさんある」


「それはそうだが……多分扉のせいだ」


「扉の?」


 レビスが首を傾げる。

 扉が自分で骨を集めて自分で置いたとでもいうのだろうかと不思議そう。


「床を見てみろ。扉が動いた跡が残ってる」


 ドゥゼアに言われてみんな床を見る。

 弧を描くように何か重たいものが引きずられた跡がある。


 ちょうど扉が開閉する位置。

 つまりこの跡は扉が開閉を繰り返した際に擦れた跡ということになる。


 今は開きっぱなしの扉だが今よりも前は頻繁に開いたり閉じたりを繰り返していたのだろう。


「原因こそ分からないが閉じられた扉の前で死んで、誰かが開けて入ってきたら扉に押されて裏に死体が押しやられたんだろうな」


「なるほど」


 骨が扉の裏にたくさんある理由についてはこれでいいはずだとドゥゼアは思う。

 ただし残っている疑問はまだあった。


 中に入ったということは扉を開いたはず。

 だが骨が扉の裏に押しやられたということは死んだ時には扉は閉まっていたということになる。

 

 どうして開いたはずの扉が閉じたのか。

 そしてどうして閉じた扉の前でこんなにも多くの冒険者が亡くなったのか。


 少しだけ背中が冷たくなるような予想しかドゥゼアには考えられなかった。


「扉が閉じた。そしてここにいた何かにやられた……」


 一つ前の部屋にあった骨もそうだが損傷が激しく見える骨がある。

 時間経過による劣化や他の冒険者によって何かされたとか理由は考えられるが、死ぬ前に骨が損傷するようなダメージを受けたことがもっとも大きな可能性として挙げられる。


 となるとやはり何か冒険者を攻撃する存在がいたのだと予想するしかない。

 その上でこの部屋においては入ると扉が閉まって出られないようになったのではないかとも考えられた。


「……またなんかヤバそうだ」


 閉じた扉の前で死んだ。

 このことが意味するのは逃げようとしたということ。


 前に進むのではなく逃げようと扉に縋り付いてそのまま死んでいった。

 ドゥゼア以外のみんなはこのことを分かっていない。


 だが不安にさせる意味もないのでドゥゼアは黙っていることにした。

 どうせ予想にしかすぎない。


 ここまできてデカーヌを見捨てることもできないし前に進む。


「今度は岩……」


 骨もよく転がっているけれど岩の塊のようなものも転がっている。

 先ほどは土っぽかったので材質が違う。


 天井か、と思ったけれど壁の材質はさっきの部屋と同じであるし天井だけ違うというのもなんだかおかしな話である。

 ドゥゼアは岩の塊を拾い上げてみる。

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