ゴブリンはオオコボルトを探します3

「魔物なのに……よく冒険者の動きとか知っているなと思いまして」


 ゴブリンどころかカワーヌだって傷のことは気がつかなかった。

 仮に傷があることに気がついたとしてもそれがなんなのか分からない。


 だからカワーヌとドッゴだけだったら適当に道を進むしかないのである。


「たまたま知っていただけだ」


 実際のところドゥゼアも人間の時は冒険者というわけじゃない。

 こうした知識は話に聞いて知っていたにすぎないのである。


「それでもすごいですよ」


「……あまり褒めるな」


 二つの道どちらに行けばいいのかということにおいて、行ったらよさそうな可能性が高そうな方を言ったぐらいでそんなに褒められることではない。

 ドゥゼアは苦い表情をするけれどカワーヌはニコニコとしている。


 普通に嫌味でもなんでもなく純粋にすごいと思っているのだからドゥゼアもそれ以上否定するのをやめておいた。


「待て」


 道を進んでいくといくつかの分岐があった。

 同じように角の傷から推測したり、あるいは推測できない時はパッとドゥゼアが道を決めたりした。


 異変に気がついたドゥゼアがみんなを制止する。


「どうしたの?」


「壁を見ろ」


「壁?」


 ユリディカが壁を見る。

 なんの変哲もない石壁である。


「もっとよく見ろ」


「……シミがある」


「正解だ、レビス」


 気づきにくいけれど明かりを近づけてよく見ると壁に黒いシミが見えた。


「これは……」


「血痕だ」


「あっ、なるほど……」


 ドゥゼアが床をよく探してみるとわずかに四角く盛り上がっているところがあった。


「下がってろ」


 みんなを下がらせてドゥゼアはレビスに長い鉄の棒を作ってもらう。

 そして盛り上がったところを鉄の棒で押した。


「わっ!」


「ひゃっ!?」


 横の壁に穴が空いてそこから先の尖った金属の棒が何本も飛び出してきた。

 盛り上がったところは罠のスイッチだった。


 押すと作動するタイプの罠でスイッチの前後の壁から金属の棒が飛び出してくる罠である。

 先の尖った金属の棒をまともに食らえばかなりの重傷なレベルの怪我を負いそうだ。


「やはり俺が先に行く」


 罠の程度を見るにだいぶ凶悪めな罠だった。

 ドッゴは罠に気づいていなさそうだし、いくら盾を持っているとはいっても防ぐのに限界はある。


 罠に気づくことができそうなドゥゼアが前に出ることにした。

 ドッゴには一番後ろを警戒してもらう。


 罠のスイッチを踏まないように気をつけながら罠を乗り越えてまたドゥゼアたちは先に進んでいく。


 デカーヌの気配もないままに進んで他にもいくつかの罠わ乗り越えて再び下に降りていく階段を見つけた。


「……なんなんだここは?」


 あんな罠だけで冒険者たちが全員帰って来なくなるなんてことあり得ない。

 ドゥゼアのように少しめざとく周りを見ていれば気付ける程度の罠しかなかったのだから乗り越えられる冒険者も多いはず。


 だからまだ続きそうだとは思っていたけれどまた下に行く特殊な作りには今後どうなっていくのか不安になってしまう。


「だが前に進むしかないな……」


 一度戻るなんて考えはない。

 そんなこと繰り返していたらいつになったらデカーヌが助けられるか分からなくなる。


 ドゥゼアは大きく息を吐き出すと再び罠を警戒しながら階段を降り始めたのであった。

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