ゴブリンはゴブリンを連れて移動します1
準備しろといったっていざとなるとゴブリンが持っていかなきゃいけないようなものは特にない。
夜の間にゴブリンたちも準備を終えていた。
持っていくものといえば自分の武器ぐらいのものである。
一晩のんびりとして朝になったので移動を開始する。
まだ日が出始めたぐらいの時間であるがこれぐらいの早い時間ならオークもまだ寝ているはずなので比較的安全に移動できる。
先頭をドゥゼアと察知能力の高いユリディカ、間にゴブリンたちを挟んで後ろには冷静な判断ができるレビスと魔法で支援できるオルケという形でまとまって動く。
まだ少しユリディカとオルケに対する恐怖心はあるが味方になって守ってくれるというのなら心強いとも思っている。
「ドゥゼア、この先にオーク寝てるよ」
ユリディカのミミが動いている。
風に揺れる草木の音に混じってオークのいびきがユリディカには聞こえていた。
「……朝飯にするか」
寝ているなら都合がいいとドゥゼアは思った。
まだ朝ごはんを食べていなかったのでここらでオークを狩っておく。
進んでいくとドゥゼアの耳にもオークのいびきが聞こえてきた。
オークが近くにいると怯え始めたゴブリンたちに待機するように伝えてドゥゼアたちだけでオークのいびきの方に向かう。
「気持ちよさそうに寝てやがる」
体を投げ出し仰向けになってオークは寝ていた。
地響きするような大いびきをかいていて警戒など全くしていない。
こうしているということは周辺にオークを狙うような強力な捕食者がいないということでもある。
だからしばらくはオークにさえ気をつけていれば他に強い敵はいないこともわかるのだ。
「いくよー!」
声をひそめてユリディカがドゥゼアに向かって手を振る。
肩には大きな斧。
レビスが作り上げたものである。
ユリディカが真横に来てもオークは気づくこともない。
パワーは高いが察知能力は全くもって機能していない。
ユリディカは大きな斧を高く振り上げる。
「えーい!」
そして思い切りオークの首をめがけて振り下ろした。
オークのいびきが止まって目を大きく見開いた。
「もいっちょー!」
ブルブルと震える手を首にやろうとしたがユリディカは無慈悲にもう一度斧を振り下ろした。
「いぇい」
「よくやったな」
敵はいないだろうなんて油断して寝てるからこうしたことになるのだ。
ゴロゴロと転がる首を冷たく一瞥してドゥゼアはナイフを取り出した。
「レビス、ゴブリンたちを呼んできてくれるか」
「分かった」
腹が減って動けない。
なんてことになってもらっては困る。
ゴブリンたちにも肉を分けてやるつもりでドゥゼアはザクザクとオークを切り裂いていく。
「グ、グガ!?」
ドゥゼアたちが離れていってさほど時間も経っていない。
それなのにもうオークが倒されている。
ゴブリンたちはそのことに驚いていた。
「ほら、食え」
ドゥゼアが切り分けた肉をゴブリンたちに差し出す。
「イイノカ?」
「食って元気になりゃさっさと移動できるだろ」
「アリガトウ」
ゴブリンたちはドゥゼアから肉を受け取ると食べ始めた。
オーク一体でも肉の量はかなりある。
久々に腹一杯食べられることだろう。
ドゥゼアたちも肉を切り分けて食べる。
流石にゴブリンたちの目の前で焼き肉するのは気が引けたので今回は生食である。
オークの肉は生でも美味い。
オルケは少しだけ不満そうであるがレビスとユリディカは別になんとも思わず美味い美味いと食べている。
ドゥゼアも何度も繰り返してきたゴブ生のおかげで生肉に抵抗もない。
今回はゴブリンたちがいる。
ドゥゼアは余った肉を小さめに切り分けて葉っぱで包んでツタで開かないように縛る。
そしてゴブリンたちに持たせる。
お弁当代わりにちょうどいい。
今回はオークも無駄になるところが少なかった。
腹ごなし的にすぐに移動を開始する。
日もだいぶ出てきたのでそろそろオークも動き出してくる。
あまりのんびりともしていられない。
けれどどこにいくというのも難しい。
当てもなく進むしかなく、とりあえずオークの生息域からは抜けようと思った。
「小型の魔物がいて、ある程度のスペースがあればいいか」
ただこのゴブリンたちに関しては少し条件が緩いとドゥゼアは思う。
自分達で家を作ることができるので洞窟などの安全な場所を探してやることもなく奥まっていて探しにくい場所があれば生きていける。
なので他のゴブリンの群れよりは多少選択肢の幅が広いのである。
群れの規模もそんなに大きくはないのでそれも助かった。
一応バイジェルンにも良い場所はないか探してもらっているがそんなに過度な期待はしていない。
「とりあえず魔物がいるところから探さなきゃいけないな」
場所も大事だがやはり生きていく上で大事なのは食べること。
ゴブリンたちが狩ることができる魔物がいることが第一条件である。
オークに出会わないように気をつけながら歩いていく。
オークの方も警戒して気配を消したりするようなこともないのでユリディカが先にオークのことを察知してくれる。
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