第四章
ゴブリンはゴブリンに助けを求められました
「助けてほしいだと?」
「グガ、ソウダ」
杖も手に入った。
半端な時間なので次の日の朝になったら出発しようと思っていたらリーダーのゴブリンと案内してくれたゴブリンがドゥゼアたちの方に近寄ってきた。
何の用事だろうと思っていると助けてほしいと言われた。
「ココデクラスキビシイ。ココヲハナレル」
ゴブリンたちもバカであるけれど何も考えないわけじゃない。
周りに獲物が少なくて状況的に生き延びることが難しいことは理解していた。
取れる対策としては周りの魔物を倒せるようになるか、獲物がいる場所に移住するかである。
ただ今周りにいる魔物はオークである。
食料が少なくて弱り気味のゴブリンたちが束になったところで一体倒すのがせいぜいである。
魔物を倒して生きていくのは現実的ではない。
そうなると倒せる魔物がいる場所に移住することの方が現実的な解決策である。
けれどゴブリンたちも弱り始めている。
周りのオークに見つかった時に逃げることも簡単ではない。
オークの生息域を抜けた後だって新たなる住処を探すのも大変なことである。
ゴブリンたちはゴブリンたちで話し合った。
このままでは死んでいくだけになる。
それなら一つドゥゼアたちに助けを求めてみようということになった。
ワーウルフやリザードマンが仲間であるゴブリン。
話も流暢で案内してくれたゴブリンはドゥゼアがオークとも対等に戦うドゥゼアの姿を見ていて強いゴブリンであることを知っている。
ドゥゼアが助けてくれるならこの窮地を脱することもできるかもしれない。
「どうする?」
「うーむ……」
ゴブリンにしては考えた方である。
ドゥゼアたちが助けるということになるとユリディカとオルケも近くにいることになる。
これまでゴブリンたちは怖がって距離を取っているがそうしたことも許容して信頼するということでもあるのだ。
住み慣れた場所を離れるというのは楽なことでもない。
かなり大きな決心である。
「みんなはどうだ?」
「ドゥゼアに従う」
レビスは相変わらずを貫く。
ドゥゼアがやるならやるし、やらないならやらない。
「まあいいんじゃない?」
「うん、私もいいと思います。こうした命の営みがあるのはとても良いことだと思います。杖ももらいましたね」
ユリディカは緩く考える。
助けられるのなら助けてもいい。
あまり利益だとかそうしたことは考えない。
こちらもレビスに近くてドゥゼアがやるならやってもいいかなと思うぐらいである。
オルケもみんながやるならという感じではある。
けれど助けを求められたのなら助けてあげたいとは思う。
また、ゴブリンがこうして助けを求めることがあるのだと驚いている。
少し他の魔物の存在について興味も持っていた。
「いいだろう。俺たちにできることなら協力してやる」
「ホントウカ! カンシャスル!」
何かやらねばならないことに追われる旅でもない。
どうせフラフラと旅するつもりだったのだからそれにゴブリンたちが加わったところで大きくは変わらない。
ドゥゼアがうなずくとリーダーゴブリンは嬉しそうに笑顔を浮かべた。
生きようと前向きになっているのなら手伝ってやろうと思う。
最近はジジイのせいでゴブリンも追い込まれた立場にあるのだから多少生き延びるゴブリンも増やしてやらねばならない。
「そうだ」
「……ナンダ?」
「これ、どいつが持ってきたか分かるか?」
ドゥゼアは例のネックレスを取り出した。
すっかり錆びついたネックレスであるが獅子王であるカジオのものであり、どこでこんなものを得たのか出どころが気になっていた。
「…………シラナイ」
リーダーゴブリンはジーッとネックレスを見てみるがリーダーゴブリンの記憶の中にはなかった。
別のゴブリンが持ってきたものだろうと思った。
もしかしたら今はもういないゴブリンが持ってきたものの可能性もある。
「ア、ソレ、オレ……」
「お前が?」
ネックレスを見て案内してくれたゴブリンが驚いたような顔をした。
「カワデヒロッタ。デモツカエナイカラオイトイタ」
ここの近くには川が流れている。
このネックレスは案内してくれたゴブリンがその川で見つけたものだった。
何かに使えるかなと思ってとりあえず持って帰ってきたものであったが結局使えるはずもなくいらないもの置き場に捨て置いてあったのである。
「川か……」
どこからか流れてきたのかもしれない。
そういえば獅子王の心臓を手に入れたダンジョンもきれいな水が湧き出る場所の側にあったなとドゥゼアは思った。
何か水に関わることであるのだろうか。
「ソレガナニカアルノカ?」
「ちょっとな。まあ教えてくれてありがとう」
そのうちサビを落としてやらなきゃなと思いながらネックレスをします。
「それじゃあ住処を探すために移動することにするか。こっちはいつでも移動できるからそっちも準備しろ」
「グガ、ワカッタ。カンシャスル、ドウホウヨ」
「礼は無事移住が終わってからでいい」
ということで次の旅の出発はゴブリンたちと一緒にゴブリンたちの住処探しをすることになったのであった。
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