ゴブリンは水の精霊と別れて出発しました
「ドゥゼア」
「なんだ?」
「これあげる」
バイジェルンがゴブリンの巣の情報をキャッチした。
なのでドゥゼアはとうとう洞窟を出発することにした。
荷物を片付けて出発の用意をしていたら水の精霊に呼ばれた。
ちょいちょいと手招きしているのでなんだろうと近づくと何かを差し出された。
受け取ったそれは青い小さな玉だった。
水の宝玉かと思ったけどなんだか小さい。
「これは?」
「友達の証」
「友達の証だと?」
顔を上げると水の精霊が少し照れ臭そうに笑っていた。
「他の精霊もきっと優しくしてくれる」
「いいのか、こんなものもらって」
「うん。お礼」
きっとアラクネの女王からもらった糸の玉みたいなものであるとドゥゼアは思った。
流石にクモのように従わせることはできないけど持っているとクモたちと友好的に接触することができるように精霊と接することができるかもしれない。
「ありがとう」
嬉しいものだと思う。
交わした言葉こそ少ないがドゥゼアが努力する様子を水の精霊は見ていた。
ゆっくりとして言葉少なく意思の疎通が取りにくいと水の精霊自身も思うのにドゥゼアはそれでも根気強く付き合ってくれた。
聞く必要もないお願いを引き受けて最後まで諦めずに戦ってくれた。
心清らか、というわけではないが一本の筋が通った素晴らしいオスであると水の精霊は思った。
だから滅多に他の種族に渡すことはない自分の証をドゥゼアに渡した。
「……近くまで来たらまた寄って」
「ああ、是非ともそうさせてもらうよ」
「じゃあね」
「色々とありがとな。水、美味かったぜ」
改めて思うと今回のゴブ生はかなり奇妙なゴブ生だと思う。
最初は巣も無くなって早めに終わるゴブ生になるかもしれないと思った。
それなのになんだかんだとここまで生き延びている。
仲間も得て、なんとなく不自由も少なく冒険を続けられている。
スタートだけを見ればもっと恵まれたゴブ生はあったのにゴブ生何があるか分からないものである。
元々荷物もそんなにない。
荷物もさっさとまとめ終わる。
「バイバイ」
「じゃーね!」
「ありがとうございました」
荷物を持って洞窟を出る前に最後に水の精霊に別れの挨拶をする。
ほんの少し寂しそうに笑って水の精霊はみんなに手を振った。
「水に落ちちゃってごめんねー!」
別れとは寂しものであるがしょうがない。
水の精霊に背を向けて離れていく。
「……! バイバイ」
ドゥゼアもスッと手を上げてひらひらと振る。
まあ縁があるならまた会える。
縁がなくてもいつかのゴブ生でまた来てやろうとは思った。
「…………私もお外に出ようかな」
まだまだ産まれたばかりで幼いとも言える水の精霊。
綺麗な水さえあればいいと思っていたけど外の世界を見てみたいなと少し思った。
「みんなとまた会いたいな」
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