ゴブリンは休みません
疲労回復、そしてダンジョンが本当に消えたかの様子見を兼ねて洞窟に数日留まった。
ダンジョンは復活する様子もなく水の精霊によればダンジョンの雰囲気も無くなったらしい。
「へぐぅ……」
地面にへたり込むオルケ。
これまでは魔法使いということで戦闘訓練は免除されていたオルケだがドゥゼアはオルケにも体を動かす訓練を課すことにした。
今回は何事もなかったからいいものの、ダンジョンの中で転ぶなどあまりにもお粗末だった。
体そのものの能力をオルケが活かしきれていない。
慣れればもっと機敏に動けるはずなのにできないのはオルケ自身の問題である。
上手くいけばオルケも魔法だけでなく戦うこともできるはず。
少なくとも走って逃げる時に転んでしまわないぐらい体の扱い方には慣らす必要がある。
少し体を動かさせてみた結果分かったのはやはり尻尾が一つキーとなることが分かった。
リザードマンには太くて立派な尻尾がある。
この尻尾は有用であるのだけどやや重量があって人の体と比べた時に重心がやや後ろになってしまいがちである。
そこを気をつけて動かないとバランスを崩してしまう。
重心の位置に気をつけたり尻尾を上手く動かしたりして人とは少し違う意識を無意識に落としていかないと事故が起こるのである。
「ふぅ……そろそろ移動の時かもな」
一汗かいたドゥゼアも水を飲んで焚き火の側に座る。
完全にダンジョンは消え去ったと考えてもいい。
獅子王の心臓も手に入ったしレビスは魔道具の能力を手に入れた。
死にかけたりと大変ではあったけれど実りは多かった。
洞窟は水があるけれど少し食べ物に関しては入手が難しい。
ダンジョンがあった時はイタチ肉があったけど今は少しずつ蓄えも減ってきている。
洞窟を出て次の場所に移動を考える時が来た。
「次はダンジョンか、ゴブリンの巣か、魔人商人がいいな……」
ドゥゼアは少し強くなったしこれからも強くなる可能性が出てきた。
レビスも能力を活かせばもっと戦える。
ユリディカもチクートを手に入れて大幅に強くなった。
こうなると次はオルケだろう。
出来るなら魔法の杖や杖として使えながらも接近戦も出来るような武器をオルケに与えてあげたいと思っていた。
獅子王の心臓やレビスのイヤリングのようにダンジョン産の魔道具はその効果が高くて強力なものも多い。
けれどあるかどうかは確実なことも言えないし、あったとしてもそれが強い魔道具であることやオルケに合った魔道具かどうかも分からない。
不確定要素が大きい。
それならばまずは一つオルケに合った魔法補助のための装備を一つ手に入れておきたいと考えた。
1番確実なのはゲコットのような魔人商人にお願いすること。
持ってるとは限らないが事前に言っておけば何本か用意しておいてくれる。
次点でゴブリンの巣である。
こちらには倒した冒険者の装備を溜め込んでいることがある。
剣やナイフ、槍などの刃物系の武器はゴブリンたちも使うのであるが杖などは使わない。
だから溜め込んでいないこともあるが溜め込んであれば基本的に使わないので交渉次第では手に入れることが可能である。
「あとは獣人についてだよな」
カジオのお願いもある。
カジオの子供を探してカジオを会わせてあげなきゃいけないのだけど冷静になると色々厳しい。
そもそも獣人の国なのか、街なのか、集まりなのかそうしたものがどこにあるのかも分からず子供に至っては名前すら不明なのだ。
探すとっかかりが今のところないのだ。
クモたちに情報を集めてもらうことは可能であるがその情報収集の特性上遠いところやクモが危険に晒される都市などの場所の情報は薄い。
どこにあるかも分からない獣人の街など中々見つけられはしない。
「となるとだ……」
まずはゴブリンの巣かなとドゥゼアは考えた。
魔人商人を呼びつけるのにも時間はかかる。
場所によってはかなり待つことになるかもしれないし確実ではないにしてもゴブリンの巣から貰った方が安上がりになる。
「バイジェルン」
「ほいきたーである!」
しばらくダンジョン攻略のために暇をしていたバイジェルンが呼ばれて嬉しそうにドゥゼアの肩に乗っかった。
「ゴブリンの巣を探してくれないか?」
「それだけであるか?」
「あとは獣人の国……あるいは街なんかあれば探してほしい」
「ほいきたである」
「さらに魔人商人が近くにいたら教えてほしいんだ」
「任せるである!」
お仕事任されてバイジェルンは嬉しそうに外に出て行った。
とりあえずバイジェルンが情報収集を終えるまでの数日間洞窟に留まることにしようと今度はレビスと鍛錬し始めたドゥゼアだった。
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