ゴブリンはダンジョンのボスに挑みます4
倒すには決め手に欠けている。
「みんな、誘導するぞ!」
こうなれば用意していた罠を使うしかない。
ドゥゼアたちは戦いながら少しずつ罠の方へと後退を始める。
「くっ……!」
ボスアイアンテールウィーゼルの爪がドゥゼアの頬をかすめて血が飛ぶ。
「ドゥゼア!」
「ありがとう!」
素早くユリディカからヒールが飛んできて頬の傷が治る。
下がりながらという制約があってボスアイアンテールウィーゼルの正面を担当するドゥゼアの負担がやや大きい。
ボスアイアンテールウィーゼルも下がるドゥゼアを逃すまいと攻撃を強めている。
レビスが作ってくれた防具がなかったら危なかった場面も何回かあった。
「ドゥゼア、もうすぐだよ!」
先に下がっていたオルケがドゥゼアにラインの位置を教える。
戦いながらなんとか地面につけた後を確認する。
そのラインの前でドゥゼアたちは戦う。
「今だ!」
ドゥゼアは叩きつけるように振り下ろされたボスアイアンテールウィーゼルの尻尾をかわした。
同時にユリディカとレビスが背中を向けて走り出し、オルケがロープに火の玉を放つ。
「くらえ!」
ドゥゼアは振り下ろされた尻尾と入れ替わりで前に出てボスアイアンテールウィーゼルの目に向かって槍を突き出した。
ボスアイアンテールウィーゼルはまぶたを閉じて金属化させて槍を防ぐ。
ドゥゼアはそれを見てニヤリと笑った。
「ドゥゼア!」
下がったみんなからはドゥゼアがどうなったのかよく見えない。
スイングした凶悪な丸太が勢いよくボスアイアンテールウィーゼルにぶち当たる。
ロープがその勢いに耐えられなくて凶悪な丸太ごとアイアンテールウィーゼルがぶっ飛んでいく。
「今がチャンスだ!
みんなやるぞ!」
地面にへばりつくように地面に伏せていたドゥゼア。
凶悪な丸太に刺していた金属が頭を掠めてヒヤリとしたけれど何とかボスアイアンテールウィーゼルにだけぶつけることができた。
素早くドゥゼアは起き上がって走り出す。
ユリディカとレビスもドゥゼアの声に弾かれるようにボスアイアンテールウィーゼルに向かう。
ドゥゼアの心臓が高鳴る。
戦いの最終局面を迎えて周りの音をかき消すほどに強く強く心臓が鳴っている。
『主君、心臓を強く意識してください』
頭の中にカジオの声が響く。
『力が心臓を始まり頭のてっぺん、手足の先に至るまで満ちていきます』
「う……うおおおおっ!」
叫ばずにはいられなかった。
カジオの声に導かれるままに心臓を意識し始めると体に力が溢れ始めた。
体の内側から爆発してしまいそうになって雄叫びで発散する。
本能のままに飛び上がったドゥゼアは槍を高く振り上げた。
一方でボスアイアンテールウィーゼルはアイアンテールウィーゼルと同じくダメージに弱いらしく痛みに怯んでいる。
凶悪な丸太に刺していた金属が防ぎ切れなかったところに突き刺さってダメージが大きく凶悪な丸太をどけることで精一杯だった。
「オラァっ!」
槍を振り下ろす。
「くそっ!」
ボスアイアンテールウィーゼルも何とか金属を動かしてドゥゼアの槍を防御した。
「うにゃああああっ!」
「やああああああっ!」
けれどドゥゼアは1人じゃない。
ユリディカとレビスもドゥゼアから少し遅れて攻撃を叩き込む。
一回は防いだ。
ユリディカの右の爪、レビスの一突き目。
しかしユリディカの左の爪、レビスの二突き目があった。
さらなる追撃を食らって起き上がりかけていた体が再び地面に倒れる。
「私だってー!」
ここまでいいところなしのオルケ。
最終決戦なので魔力を気にすることなく最大火力で魔法を放つ。
渦巻く火炎がボスアイアンテールウィーゼルに襲いかかる。
『心臓を燃やしてください。
まだ……あなたは戦える!』
もはや瀕死に見えるが死んでいない以上は油断などできない。
寝れば急速にケガが治っていたのでここは一気に倒し切ってしまわねばならない。
「ドゥゼアいっけー!」
ユリディカが最大の力を込めてドゥゼアを強化する。
「ドゥゼア……今!」
ボスアイアンテールウィーゼルに槍を刺したままだったレビスが全身に力を入れた。
次の瞬間体を移動しようとしていた金属が不自然にピタリと止まった。
レビスが魔力を送り込んでボスアイアンテールウィーゼルの金属の移動を邪魔していた。
心臓が燃えるような熱さを持っている。
これまでの全てのゴブ生で感じたことのないほどの力が湧き上がってくる。
ドゥゼアは大きく腕を引いて力を蓄える。
「く……らえー!」
ドゥゼアは槍を突き出した。
狙いはボスアイアンテールウィーゼルのドアタマ。
厚い頭蓋骨を破って槍が深々と突き刺さる。
「どうだ!」
込めた力に対してドゥゼアの体が耐えられなかった。
腕が折れて、レビスに作ってもらった槍の持ち手も変な形に折れ曲がってしまっている。
「消えていく……」
大きく目を見開いたボスアイアンテールウィーゼルは一度大きく体を起こした。
そして上からドゥゼアをぎろりと睨みつけるとゆっくりと地面に倒れていった。
そして体が魔力となって消えていく。
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