ゴブリンはダンジョンのボスに挑みます3

 その後攻撃をかわしながら反撃をする。

 しかしボスアイアンテールウィーゼルの方が一枚上手だった。


 体が大きいが故に攻撃が当たっても浅くて大きなダメージにならない。

 防御はユリディカとオルケの攻撃を中心に防いで致命傷を避けている。


「……下がるぞ!」


 このままではドゥゼアたちが消耗するばかりになる。

 ドゥゼアは一度撤退する決断を下した。


 戦いながらジリジリと下がっていく。


「今だ!」


 ドゥゼアは地面につけた線を確認して一斉に走り出す。


「やっぱり追ってこないみたいだな」


 線を越えたあたりでボスアイアンテールウィーゼルが立ち止まる。

 予想通りボスアイアンテールウィーゼルは一定の範囲内から出られないようである。


 ただ警戒は怠らないで見ているとボスアイアンテールウィーゼルはドゥゼアたちを睨みつけるようにしながら下がっていく。

 そして元いた場所まで戻ると丸くなって眠りだす。


「……チッ」


 思わずドゥゼアは舌打ちしてしまう。

 眠った途端にドゥゼアたちが必死につけた浅い傷が治ってしまう。


 離脱することは容易いがボスアイアンテールウィーゼルを安全に引きつけては攻撃してを繰り返して倒すのは無理だということである。


「作戦を練ろう」


 正面突破は難しい。

 だが普通のボスと違うのは開けた場所で戦えて逃げることも可能だということ。


 やり直しもできるしある程度の作戦も練ることができる。

 ドゥゼアたちは戦いで疲れたしダンジョンを脱出した。


「ジー、おかえり」


「ただいま」


 外に出てくると顔を半分だけ出した水の精霊が出迎えてくれる。


「水もらうぞ」


「どうぞ」


 ドゥゼアは水筒に水を入れてゴクゴクと飲む。

 疲れた体に冷たい水が染みる。


 やたらと大きく鼓動している心臓がようやく落ち着いてくる。


「さて、あいつどうするかな」


「あいつ?」


「ああそうだ。

 ボスは見つけたんだよ」


「よかった」


 水の精霊はちょっと微笑む。


「あとは倒すだけなんだがさすがボスでな」


「頑張って。

 水はいくらでも飲んでいいから」


「分かった。

 ありがとう」


 また水の精霊は水の中に戻っていってしまった。

 これでも話すようになった方だ。


 焚き火に火をつけてイタチ肉を焼く。


「もっと破壊力が必要だな……」


 ボスアイアンテールウィーゼルの気をひいたり、ダメージを与えるためにももっと攻撃力が必要となる。

 魔力が強ければ短剣でも切り裂けるのだがドゥゼアの力ではボスアイアンテールウィーゼルに十分なダメージを与えられない。


「……また丸太の出番だな」


 宝箱の時よりもまだ戦いやすい。

 頭の中で少しずつ作戦が出来上がる。


「今回はレビス大活躍、だな」


 ーーーーー


 まずは武器だ。

 短剣ではやや威力不足。


 大きな剣を作ろうにもレビスの技術が足りなくて鈍器のようになってしまう。

 十分な力があればそれでもいいのだろうがドゥゼアでは逆に邪魔になるだけ。


 そこで短剣を伸ばした。

 短剣の刃を伸ばしたのではなく柄を伸ばした。


 金属を出して棒を付け足して簡易的な槍とした。

 切るのが難しいなら槍として突き刺した方が深く相手にダメージを与えられる。


「慣れたもんよぅ!」


 さらにボスアイアンテールウィーゼルのために罠を設置することにした。

 もはや若干手慣れた感じのユリディカに木を切り倒してもらった。


 切り倒した丸太に先を尖らせた金属をたくさん突き刺して凶悪な丸太に進化させる。

 そしてボスアイアンテールウィーゼルが動き出すギリギリのところに丸太を立てて支柱とし、凶悪な丸太をロープでぶら下げる。


 凶悪な丸太をロープで引っ張ってスイングするように設置しておく。

 時々狩りをする時に人間が行う罠を真似たものである。


「うわー、当たったら痛そー」


「よくこんなもの思いつきますね」


「ドゥゼア天才」


 おそらくドゥゼアたちが当たれば即死級である罠にみんな息を飲む。

 レビスの金属を操る能力のおかげでこうした罠も作りやすくて助かった。


「よしやるか」


 準備は整った。

 今度こそ仕留めてやるとドゥゼアはやる気を燃やす。


「いいか、限界まで引きつけて……」


 改めて作戦を確認する。

 準備が大変なだけでやることはシンプルだ。


 戦いながらボスアイアンテールウィーゼルをギリギリまで引きつけてオルケがロープを切って凶悪な丸太をスイングさせてボスアイアンテールウィーゼルにぶち当てる。


「やるぞ!」


「「「おー!」」」


 みんなで再びボスアイアンテールウィーゼルに挑む。

 足を踏み入れると目を覚まして頭をもたげてドゥゼアを睨みつける。


「今度は見てろよ」


 ドゥゼアたちもユリディカとレビスが左右に散開して一気に襲いかかる。

 最初は普通に戦ってみる。


 やっぱりドゥゼアに対する警戒度はユリディカやオルケの攻撃に比べて低い。

 しかし今回は少し違うぞと槍をボスアイアンテールウィーゼルの体に突き立てる。


 単に切りつけるよりも深く先端の探検が突き刺さりボスアイアンテールウィーゼルが嫌がる素振りを見せる。

 切りつける時よりも効果がある。


 けれどやはり攻撃力はまだ足りていない。

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