ゴブリンは古代遺跡を探索します2
階段周りの土も払ってみたけれど階段の先を説明する文言もなかった。
しょうがないのでやっぱり入ってみて確かめるしかない。
「行こうか」
ダラダラと過ごしていてもこの階段の先は分からないので覚悟を決めて階段を降りていく。
クモにも聞いてみたけどクモも奥に入ったことがないらしい。
暗い穴倉はゴブリンも得意だ。
ところどころ欠けたような階段を慎重に降りていく。
ドゥゼアを先頭にして結構長いこと階段を降りてきて1番下に着いた。
「明るいね」
流石に完全に真っ暗だとゴブリンでも辛いかもしれないと思っていたけれど中は明るかった。
天井に魔力を吸収して光る魔光石という石が嵌め込まれている。
しかもただ嵌め込んであるだけだけじゃなくて形を整えて綺麗に一直線になるようにしてあった。
文明レベルも高かったのだなとドゥゼアは思った。
魔光石はそんなに安いものでもない。
バラバラのサイズのものを等間隔に配置させて明かりを得ているところも多いのにわざわざ綺麗に整えて一直線に配置してある。
経済的にもすごかったしこうした細やかなことを出来るレベルの知能を持った文明だったのだ。
人の出入りもないせいか魔力が薄くて魔光石の明かりも弱いがゴブリンは少しでも明かりがあれば外と変わらないレベルで動ける。
ワーウルフも夜に活動することもあるので闇には強い。
人的な考えであるがこの天井の魔光石を全部盗んでいけばそれだけで大金持ちになれる。
時折人が来るのに盗まれていないのはやはり明かりが欲しいからだろう。
しかし同時に厄介だとも思う。
知能が高く文明レベルも高いということは罠などがある可能性も高いということだ。
「気を引き締めていくぞ」
「分かった」
「任せて!」
「おう、任せたぞ」
何を任せるのかは知らないけどやる気を出しているからとりあえず任せておく。
ということで本格的に遺跡探索の開始である。
ちなみにドゥゼアの肩にはクモもいる。
ドゥゼアたちのことを見届けたり遺跡の情報を持ち帰ったりしたいらしい。
レビスとユリディカには拒否られたので仕方なくドゥゼアの肩にいた。
なんか不満そうだけど不満なら自分で歩けとドゥゼアも若干不満である。
「意外と綺麗だな」
遺跡は崩れているようなところも少なくて崩落の危険は少ない。
「うーん……地下の倉庫、居住空間か?」
通路があって時々部屋がある。
特に何もない空の部屋で魔物がいるわけでもない。
何かのものでも保管してある倉庫だったのかもしれない。
地下で空気も涼しくものを保管するのにも悪くはない。
ただ何もなさすぎる。
「冒険者の痕跡すらないな……」
クモの話では時折冒険者が入っていっては戻ってこないと聞いた。
ならば冒険者の痕跡、つまりは遺体や荷物ぐらいあってもおかしくないのだけど何もない。
ただひんやりとした澱んだ空気が流れているだけで罠もない。
そのままウロウロと遺跡を歩いて回る。
時々部屋に木箱の跡だろうかバラバラになった木片があったりしたけれど人の痕跡はないままであった。
「わあ、広い」
それなりに探索していたら広い部屋にたどり着いた。
地下とは思えないほど天井が高くて広い。
「綺麗な像だね」
そして正面には女神像だろうか、大きな女性の像がある。
ただ普通の人の像ではない。
劣化のために折れてしまっているが背中には翼が生えている。
慈愛に満ちた表情はこの部屋全体を優しく見つめているようだ。
「地下神殿なのか?」
石造りの椅子のようなものもあって女神像っぽいものがある。
それだけを見るなら神殿や教会と言っていい。
「ドゥゼア」
「なんだレビス?」
「焚き火の跡」
「ほんとだ……おかしいな」
何かないかと部屋の中を見てみるけど何もないと思っているとレビスが部屋の隅の方に焚き火の痕跡を見つけた。
多分冒険者がここで休憩したのだろう。
ただドゥゼアはその焚き火の跡に違和感を覚えた。
なぜならこんなところで焚き火をして休憩する必要などないからだ。
基本的に地下で焚き火などしない。
天井が高いのでこの部屋では出来ないこともないけれどそうしたところから疑問に思ったのではない。
ここには何もない。
他を隅々まで回ってもおそらく同じで何もないはず。
ならばこんなところで焚き火なんかしないで外に出た方がいい。
わざわざここで焚き火をして休憩する理由があったのだとドゥゼアは睨んだ。
「……」
「ドゥゼア?」
「何探してるの?」
この場、というよりこの地下全体で怪しいもの。
1番特徴的なものといったら女神像である。
この女神像しかないような地下空間で、女神像がある部屋で焚き火をしていた。
絶対に何かがあるはず。
ドゥゼアは女神像の前に立った。
なんの神様かは知らない。
神様ではなく過去にいた偉人を神のように崇拝している像の可能性もある。
部屋は見て回ったのであと調べていないのは女神像ぐらいである。
ペタペタと台座を触って調べる。
「これは……」
女神像の台座の裏側に手が差し込めそうなくぼみがあるのを見つけた。
手を差し込んでみると取ってのようなものが触れた。
ドゥゼアはそれを掴んでグイッと引っ張った。
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