守り護られて進んでも下がろう靱公園にダンジョン生まれました【リメイク版】

神無月ナナメ@カクヨム住人(非公式)

第一部FOXうつぼビル周辺の悲喜劇

第1話 突然ガバチョなプロローグ

 一次元の線は二次元の面で三次元がリアルな現代社会なら高次元を認識できない。


 130光年彼方にある星々の動向まで緻密に測定できる技術力に科学は発展した。

触れられない虚数の領域にある並行世界と果てがないとされる宇宙の理論に等しい。


 遠い場所にある銀河ほど高速で離れる現象は巨大望遠鏡の運用により確認できた。

特異点で発生する爆発ビッグバン現象から宇宙の拡がりは永遠に留まる兆しがない。


 虚無で起きない事象である理論からブラックホールやダークマターは実証された。

銀河の外縁にあたる太陽系第三惑星地球が発祥になる生命の素はどこから訪れたか?


 いわゆる外宇宙起源論は都市伝説扱いであり正史として残されることもなかった。


 およそ四万年前に原種になる人類は進化論から脱線したミッシングリンクにいる。

時間を超越した次元から迷いこんだ太古の異種族が始まりの可能性はゼロじゃない。


 こことは違う並行世界に同期する地震を起点として生まれた境界線がダンジョン。

時間を超越して宿命でリンクする主人公たちは停滞した世界に改めて変化を呼んだ。


 人類を含めた地球に最適化したはずの遺伝子が新たな環境化で変化を遂げると――




 シーンⅠ(靱本町始まりのダンジョン一層・最奥部・金属扉に閉ざされる異空間)



 おかしな文様を描く岩肌に寝転びながら膝を抱える少女が健やかに寝息を立てた。


 長い右耳は純白の綿毛に覆われて頭上まで屹立しながらおかしな存在感を備える。

細い肩まで垂れ下がる左耳に同色の黒髪が重なる少女を見守る位置で小声が漏れた。


「眠り姫の覚醒がすべての始まり。互いに交錯することで新たな宿命まで生まれる。

偶然だが死の恐怖を遠ざけたことで無限に増えた選択肢。さぁキミはどれを選ぶ?」


「おかしな流れにとりあえず乗せるしかない。迎合か相反するのか存外に楽しみだ」

 少女を見下ろすようにつぶやきを落とした瞬間に長耳の際立つ陰影まで消失した。




 シーンⅡ(ダンジョンに隣接の雑居ビル・最上階・若い男と派手な見た目の少女)



「ダンジョンってあれ一体なんなの?」喚くように問うギャルはご機嫌斜めらしい。

 信じられない状況でありえない存在感。戸惑いしかないから手探りの状況なんだ。


 おかしな結果で示された『人間の理』常識から概念まで覆される現と真の境界線。

「いつの日か深部まで攻略すれば生まれた理由。創造者の思惑なんかも見えてくる」




――――2023年1月23日。午後4時56分07秒に日没の大阪市西区――――



 日没した瞬間の局部的な地震が世界中に同期して……西暦を撤廃する瞬間になる。

1945年大戦の終結時に設立された公的機関が国際連合で本部はNYにおかれた。


 加盟国による満場一致の採択が即時に結論とされて改められた名称は新暦元年だ。

あり得なさすぎる世界が同調する発端は公園直下地震で地球に生まれたダンジョン。



 変革の礎で『迷宮の日』として誕生を歓迎する世界中の国々で祝日に認定された。



 極東にある日本で第二の県庁所在地は大阪市であり西区の公園に境界が生まれる。

【始まりの迷宮】その直上にあたる空間が靭公園と呼ばれるダンジョンの境界線だ。



 天下取りに負けた時代から敗北感とプライドを抱える意識高い系市民が集まる街。

「ぜったい東京には負けてへん」妄想を垂れ流して大きな変化を嫌がる住人たちだ。


 地域与党が長期に掲げた目標である都構想の実現は絵空事で実態的に保守派層だ。



 なにわ筋を挟み東西分割される靭公園の東園は華やかで季節の植栽が目立つ空間。

都心の憩いになるセンターテニスコートを筆頭に西園はオアシスとして整備される。



 なにわ筋沿いに近年カフェやバーが乱立してからは堀江オレンジ通りの子分扱い。

八階建て雑居ビル入口で小柄な少女の傍に立つ男の右脚が妙に不自然な動きをした。


 杖の代わりに用意された『バールのような物』金属棒を左手にゆっくりと進む男。

隣接ビルの窓辺で見下ろした違和感を見極めようとした調査が物語の始まりになる。


 狭小地に建立された地上八階建て『なにわ筋FOXビル』は不動産の管理物件だ。

資産運用と不動産業の経営者である城佳二は28歳独身で代表取締役兼個人事業主。


 ハードボイルド小説主人公に憧れる彼はオタクの趣味人にして資格マニアである。

高校時代に罹患した骨肉腫により未来と等価交換にして代償の右脚と夢を喪失した。



 もちろん義足歩行する日常生活は電動車いす頼りになり外出の機会まで減少する。

明朗快活にしておちゃらけた性格であり平均より小柄な外見は実年より幼く見えた。


 はるか昔は陸上競技の短距離走者として全国区で注目された選手であり有名人だ。

周囲にちやほやされた反動もありおかしなプライドとこだわりの過多でモテない君。


「いろんなことをやってるなりにカネはあるんだけど女の子にモテないんだよなぁ」

 自虐する嘆きがあるあるすぎる彼は『友達以上恋人未満』その先に進展できない。


 女性心理を理解できない鈍感野郎は相手の好意まで全スルーして幸せになれない。

いずれ運命の女たちとダンジョンで邂逅することで運命の方向性が真逆に反転する。


 ダンジョンが生まれたことで変わる新たな世界は混迷しながら改めて動き始めた。

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