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準備は整った。あとは犯人が再び行動を起こしさえすればもうこの事件は終わりだ。しかし、もう1度事件を整理し、犯人が誰であるか、自分なりに推理してみようと思う。
事件初日に盗まれた自転車は1年生の自転車1台、居咲先輩の自転車1台、俺の新品自転車1台の3台である。居咲先輩の自転車は鍵をかけていない。
その翌日に盗まれた自転車は1年生の自転車1台、長岳先輩の自転車1台である。長岳先輩の自転車は鍵をかけていない。なお、この日正門を出入りする不審な人物、自動車はいなかった。
その翌日、自転車盗難なし。しかし、その日は体育が1〜5時間目まで全ての時間帯であったため常に駐輪場は監視下にあった。
2日で5台の自転車が盗まれた。犯行時刻は居咲先輩の自転車が盗まれた時間から推測するに、生徒の授業中で校外に人が居ない時間帯である。さらに、授業中であっても1クラスでも体育を行っていた場合、駐輪場から自転車を盗むことは出来ない。しかし、2日で5台盗まれたことから、犯人は体育の時間を把握している人物であること、また、体育がない時間帯にピンポイントで学校に侵入出来る、昼にやる事のない人物である。
盗まれた3台は鍵がかかっているため乗って持ち帰ることは出来ない。ここから想像するに、犯人は自動車を使用したと思われる。しかし、ビデオカメラの映像から駐輪場から近い正門では車の出入りは高橋先生の車1台だけで、車には自転車は入っていなかった。よって犯人は裏門から自動車で校内に侵入し、駐輪場の自転車を盗んだと考えられる。しかし、裏門から駐輪場に行くには校舎の横を通過しなければならないため、目撃される危険が高い。なぜ、この危険を犯してまで裏門を利用するのか、それは俺が正門付近にビデオカメラを設置していることを知っていたからだ。その事実を知っているのは「名探偵部」の部員、坂火香織、米道英介、波上マリエだけだ。
「名探偵部」の部員ならば、この学校の生徒であるため、体育の時間を把握することは可能だ。しかし、これまで推理してきたことによると、生徒だけではこの犯行は不可能であり、この犯行には、昼に時間があり、自動車を持っている人物が身内に必要だ。坂火は両親が会社員で一人っ子。米道は両親が教師で、弟がいるらしい。この際、弟は自動車を持てないから関係がない。どちらかが嘘をついているのだろうか。どちらが犯人でも俺としては悲しくてしょうがない。どちらかが、俺の“新品の自転車“の盗難に関わっているかもしれないのだ。まだ1年も経っていない仲だが、俺の人生の中で仲がいい友達ランキングでは波上に続き2位と3位にいる2人だ。これから部活でやっていく上で犯人は特定すべきだ。そして、きちんと話し合うべきだ。それが正しいと思っているはずなのだが、俺は本当に答えを知りたいのだろうか。
額から溢れた汗が頬の上を滑り落ちた。
俺の推理が正しければ、今日の午前の授業中にGPSは“あそこ“に移動する。
しかし、午前中一切GPSは動かなかった。
動き出したのは放課後からだった。
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