18
勝負の朝が来た。 俺は3日連続始発の次の電車に乗って、今日は姉のおさがり自転車に乗って学校へと向かった。既に波上とはGPSで位置情報を共有しているので、波上がまだ家にいることも俺が学校へ向かっていることもお互いにバレている。何とも恥ずかしい状況だが、今日の行動は既に伝えてあるので特に気にならない。俺は昨日同様裏門付近にバレないようにビデオカメラを設置した。これで、どの自転車を盗まれても犯人の車の色、ナンバー、犯行時刻などは特定可能だ。出来ることなら警察に頼らず自分の手で犯人を特定してやりたい。なぜなら「名探偵部」の部員及び、その保護者である可能性が高いと踏んでいるからだ。警察沙汰にせずに話し合いで解決出来ればそれが1番良いに決まっている。姉のおさがり自転車は作戦通り、駐輪場の入口付近に鍵をかけずにとめた。そしてサドルの裏側にGPSをONにしたスマートフォンをガムテープで貼り付けた。盗まれる時にバレそうな気もするが、自転車として使用する分には気づかない程度には上手く隠して貼り付けられたと思う。波上には、おそらくGPSが移動するであろう授業中ずっとGPSの動きを監視してもらう大役があったが、すんなり引き受けてくれた。俺はスマートフォンも弄れないので教室に戻って、静かに推理小説を読んで時を待った。
米道が教室に来ると、俺は一応米道の両親の職業について聞いた。米道は特に嫌がることもなく、「両親どちらも教師だよ」と答えた。
波上にも当日の流れを確認したかったため、波上のいるクラスを覗いたがまだ来てないようだった。いつもより遅くて心配したが、暫くするといつも通りの波上がクラスに来て安心した。波上は俺に気づくと、持ってるスマートフォンを俺に渡した。
「これ、やっぱり私じゃなくて、探偵さんに持ってて欲しい。パスワードは0416。」
「おい、いいのか?」
「私は別に探偵さんに隠すこととかないから。」
スマホ見せて、と波上に言われた時、俺が見せなかったことがあったが、それを根に持ってるのか?
波上と別れ、クラスに戻り席についてGPSが正常に作動してるかどうか確かめた。
GPSは駐輪場に位置しており、正常に作動していた。まだ盗まれてないな。謎にドキドキしてきた。小学生の時のクリスマス・イヴくらいには興奮していたかもしれない。しかし、それは楽しみという気持ちだけではない。おそらく犯人は「名探偵部」の部員とその保護者なのだ。
始業のチャイムがなり、俺はスマホをしまった。相変わらず遅刻して走っている樋口を窓から見下ろしながら、お前の推理が外れていた事が今日分かるぞ、と不敵に笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます