隣に住んでる負けず嫌いなお隣さんと日帰り温泉旅行に行く話

加賀山かがり

お隣さんと夜道でばったり

「あら? こんばんは。今帰り?」//やや心配そうな声色


「そうなの、大変ね。って言っても私だって同じようなモノだし、あんまり人のことなんて言えないか」


「ねぇ? 折角だしどっちが先に家につけるか、競争しない?」//少しお茶目な声色


「そんな元気ない、って……。そんなだから元気でないのよー?」


「それに私だって、走るような元気が残ってるかどうかは正直大分怪しいわよー?」


「じゃあ競争なんてしないほうがいい? チッチッチッ。分かってないわねー。日々小さなことでも競争することによって、小さな活力が湧いてくるのよ。分かる?」


「全然分からない? うーん……。じゃあこーしたらどう? もしこの勝負で私に勝てたら良いことしてあげる」


「あー、分かりやすく顔色が変わったー。やーん、こわーい。あなたもやる気になってきたみたいだし!! じゃっ!! おっさきー!!」


//SE走る足音


「待ちませーん!! 悔しかったら、追いついてみなさーい!!」//少し息を弾ませながら


//二拍ほどの間


「はぁ……、はぁ……、はぁ……。あ、危なかったわ……。いくら何でも本気出しすぎよ。そんなに私と良いことしたかったの?」//しっかり息が切れている感じで


「もちろんって……。そこまで臆面もなく言われちゃうと……、ちょっと恥ずかしいわね」


//照れながら

//息を整える音


「でも、どう? お仕事の疲労感をこうしょうもないことで疲れる疲労感で上書きしちゃえば、なんだか明日も頑張れる気がしてくるでしょー?」


「……、それはそれ、これはこれ? 確かに、それはそうかもしれない」


「というかその……、そんなに露骨に残念そうにしないで欲しいわ。なんだか私別に悪いことしてないのに、なんだか悪い気がしてきちゃうし……」


「え? 無駄に疲れさせてきたんだから責任取れですって……? いやよっ!! そんな理不尽じゃない!! ……、そんなに良いことしたかったの?」//少ししおらしく(両手の人差し指をちょんちょんやっているようなイメージ)


「なんというか……、欲望に正直というか……、分かったわよー。仕方ないなあ、じゃあ私、用意出来たらインターフォン鳴らすから、そうねぇ……。先にお風呂済ましておいてね!!」//諦め交じりに


「うん、じゃあまたね」


//SEドアが閉まる音



//SEインターフォンの鳴る音


「お待たせ」//少し照れながら


「何その荷物って……、ビールとイタリアンピッツァに決まってるじゃないっ!!」


//SEビニール袋の音


「私と良いことしたいってごねたのはあなたじゃない!! ほらー、テーブルに場所開けて!!」


//SEがさごそ音


「ピザが届くには時間が少し早くないかって? そりゃあ当然よ。ピッツァ頼んだわけじゃないもの」


「え? じゃあどこから持ってきたんだってぇ? ……、本当に分からないの?」//怪訝そうに


「作ったのよ!! 私が、自分で!! 生地をコネコネコネコネコネーってして、発酵させて、ピッツァソースもぐつぐつ煮込んで!!」//誇るようなニュアンスで


「特性の手作りピッツァよ!! 感謝してよね!!」


「それじゃあ、かんぱーい!!」


//SE炭酸缶を開ける音


「んくんくんく……っ!! ぷはー!! やっぱり仕事終わりにはこれよねー!!」//ウキウキな様子で


「ほらほらー!! あなたも飲みなさーい!! ぱーっと飲んでパーッと楽しむわよー!!」


//SE咀嚼音


「どう? おいしい?」


「良かったー。実はあんまり味見して無かったのよねー。普段ならどうせ自分で食べるだけだしー」//ほっとした感じを滲ませながら


「人のことを毒見役にするなって? でもおいしかったんでしょー? だからいいじゃない、細かいことはー!!」//少しからかうようなニュアンスで


//SE咀嚼音


「んっ……。んんっー!! 焼き加減もぴったりだし、チーズの伸びもサイコー!! 我ながらいい出来だわー!! 一人じゃない酒はこんなにもうまいっ!! 別に一人で飲んでてもうまいけどっ!!」


「遠慮なんかせずに、もっと食えー!! もっと飲めー!! 私と一緒に羽目外そうぜー!!」


//SE炭酸の音


「ぷはーっ!!」


「ちょいちょいちょい? どこ行くわけー?」


「良いもの持ってくる? 何々ー? おとなしく座っててって? はーい」//少し声が遠くなる


//SE冷蔵庫を開ける音


「炭酸水とウィスキーとチーズと鮭とばだー!! あはははっ!! なぁーんだ君もいける口なんじゃないっ!!」//酔って陽気になっている


//SE炭酸の音


「んくんくんく――!! あはははっ、いいねぇー!! このお酒おいしぃー!!」


「今日は一緒に沢山飲んじゃおーねー!!」//とても陽気な様子で



//SE何かが倒れる音


「う、うぇぇぇ……、ちょっと調子に乗って飲みすぎちゃった……」//少し気持ち悪そうに


//SE蛇口の音


「あぁ、お水……。ありがとうね」//酔っぱらって上ずった声


「んくんくんく……。うぅ、少し楽になったぁー」


「動けるかって? お隣さんなんだし一晩くらい泊めてくれたりはしないのぉ……?」


「あー。照れてるー。かわいー。……、うぅ、でも気持ち悪いぃぃ」//ややからかうようなニュアンスで


「もしかしてベッド貸してくれるの? やさしーね。ありがとう」


//SE足音

//SE何かが倒れる音


「あは、あははは……。アレ? あなたはどこで寝る気なのー?」


「ソファで寝るぅー? あなただって私に負けず劣らずガンガンお酒飲んでたでしょーに、そんなところで寝たら体壊すよー」


「来客用の布団も用意してないからそこしかないって? 寝る場所ならここにあるでしょ……、ほらぁ」


//SEベッドを叩く音


「あは、赤くなってかわいー」


「あー、コラコラ逃げようとするなー」


//SE足音

//SEコケる音

//SE受け止める音


「お、おぉ……。危なかった。でもこれで分かったか? この酔っぱらいを一人で寝かせると勝手に事故って怪我するんだぞー?」//ほっとした様子で(相変わらず声は上ずっている)


「分かったら、ほらほら寝よう寝よう」


//SEゴソゴソ音


「助けてくれて、ありがとうね。思ったより男らしくてちょっとドキっとしちゃった」//距離が近づき上ずった声ではなくなる


「すぅすぅ……。暖かいぃの……、すきぃ……」//寝言

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