緊急警報
ボウガ
第1話
その会社にはありとあらゆる警報があった。火事警報、病気警報、生活習慣病警報、果ては転倒警報まで。社長があるとき、その警報の取引先となる会社を訪れた時のこと、ついにいわれた。
「社長……警報を取り付けすぎです、これ以上つけると効果が薄くなってしまいますよ」
「ふむ……だが私はなあ、社員のためをおもって」
この社長、若いころに社員であり妻だった女性をなくしており、それがきっかけで異常に社員の健康を気遣うようになった。社員も別に嫌がる事はなく、ホワイト企業としてむしろ人気があった。そもそもこの社長も、若いころ様々な警報を煩くおもっていたが、妻を亡くしてからというもの、そうした考えをあらためた。
(人間は、日々の暮らしが平凡だと、危機意識が薄まるものだ、だから警報が必要なんだ、あらかじめ危険を知らせて、平和ボケから解放されるのはいい事だ)
そう考えるようになった。
警報だってうるさくない。優秀な社員たちだというので、ただ印象的な音を鳴らすだけで、各自に警報が何かをつきとめ、自分たちで改善していく。社長は、悩んだ。
「うーむ……何の警報を減らそうか、空腹警報、姿勢警報」
「ええ、32個もあったのでは、社外の警報があったときに、社員も麻痺するでしょうから」
「32?警報の数がひとつ多いぞ、先月は確かに32だったはず……よもや、私に隠れて社員たちが何か警報を……?」
「ええ、これはミニ端末で、社外でも警報音がなっています、そして不快になる人々も多いのだとか……つまり、彼らは、社長に対する警報を先月購入されていますね、内容は、社員の私生活、結婚や友情関係への異常な介入……各種ハラスメントや過干渉に対する警報です」
緊急警報 ボウガ @yumieimaru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます