第5話

「ちょっと、面倒なことに巻き込まないでよ。」

愛子はそういった。私は頭が真っ白になっていた。面倒なこと、私のことは面倒なことだったのだ。そうか。私は1つ勘違いをしていたようだ。この世に無条件の愛というものは存在しないのだと。無条件の愛を、愛子を、友を信じすぎていた。幻想を信じるなど、変な新興宗教に乗じるようなものだ。あぁ。私はなんと愚かな間違いを犯していたのだろうか。愛など、ない。

「ごめん。」

「別に、あんたの事が嫌いなわけじゃないけど、その腕のことを私も知ってるって先生に伝わると私もあの先生と話しないといけないじゃん。あんたのクラスの担任、私嫌いってあんたも知ってるでしょ。」

「うん。ごめん。」

「あと、先生にも親にもバレたんだったら、そろそろいい加減やめなね、ソレ。」

「うん。」

愛子は家に入って鍵をしめてしまった。

外に取り残された私は、笑っていた。

そうだ、そうだ。私は罪人なのだ。母のあの凍てつく視線。あれがすべてを物語っていた。私はやってはならないことをしたのだ。

雨が降る。私は笑う。涙なんて出てきやしない。

涙の心臓は止まった。

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