青春は弾丸よりも早く

夕日ゆうや

第1話 弾丸のごとき

 この時代から少し後の世界。

 とある公園に集まった兵士たち。

 訓練された兵士たち。

 それは少年兵ばかりで構成されたチームである。

 みな迷彩服に身を包み、それぞれ武器を手にする。

 アサルトライフル、サブマシンガン、ハンドガン。それにミニガン。

 インカムを耳に装着。サバイバルナイフやレーションの装備も欠かせない。

 オペレーション・タッチダウン。

 敵兵、全ての人を落とす大規模作戦。

 立案はこの俺。

 実行するのは俺たち、少年兵。

「さて。リーダーどうします?」

「敵要塞まで距離90といったところか。狙撃班は準備に取りかかれ。ここと西岡公園からの」

「はっ!」

 スナイパーライフルを掲げた男たち九名の半分がここに残り、半分は西岡公園に向かう。

「電子班、集まれ」

 俺の声に応じる五名。

「はい。リーダーの言う通りに、集めました」

「よし、敵目標へのハッキングを開始してくれたまえ。メガネ曹長」

「了解です」

 メガネと呼ばれたメガネをかけた少年はパソコンを片手に操作を始める。

「よし。無人兵器ドローンの起動を始めろ」

 俺は静かな声音で命令を告げる。

「了解です」

 ドローンを操作する三名の仲間たち。

 すべては目標のため。

「それ以外は突貫部隊だ。A班、B班、C班、D班の四チームに別れて敵勢力を制圧、敵兵力の分断を試みよ」

「りょーかい」

「へいへい」

「分かった」

 生域なまいき半家はげ、ゴリラが応じる。

「目標は敵要塞の一階、中央ブロックに存在する。念のためドローンの耐水性を挙げた。今度こそ、我々に祝福のときを!」

 俺は団員を集めて、演説を行う。

「ここまで苦渋の時間を過ごしてきた我々には今日という日が訪れた。全ては同士たちの気持ちを引き継ぐため、そして我々の未来を勝ち取るため。この作戦は行われなくてはならない」

 コクコクと頷くみんな。

「それは未来への手向け、すべての人類が安らかに過ごすための、我々だけの作戦だ!」

 俺はみんなに話しかけながら準備を整える。

「A、B班は西区からの侵攻。C、D班は東区からの侵攻を行う」

「これは我々だけの戦争ではない!」

『狙撃班、目標地点へ到達。これより狙撃準備にとりかかる』

「重火器の使用を許可する」

「待て。日本だというのに重火器は使用していいのか?」

「ああ。もちろんだ。だってここは日本だからな」

 そう言ってアサルトライフルに銃弾の装填を行う十円ハゲのある半家。

「いや、日本だからダメなんじゃないのか?」

 筋骨隆々なゴリラは戸惑ったように声をあげる。

『こちら狙撃班、射線上から待避せよ』

 頬の傷跡に触れて、俺は高らかに宣言する。

「今宵、我々は真の勝者となるんだ!」

「おおぉぉおぉっぉおぉぉっぉぉおっぉぉぉっぉぉおぉぉぉぉ!」

 数十名の迷彩服を着た少年たちは怒号をあげる。

「時間を合わせるぞ」

 俺のかけ声一つでみな時計と向き直る。

「3、2、1」

 ピピと音を立てて時計を合わせる。

 そして俺たちABCD班は移動を始める。

「敵は、剣士が二人、ライフルは二十名。それとレーザー兵器がいくつかある。電子班、制圧状況はどうなっている?」

『89%まで制圧完了。出入り口にあるレーザー兵器と監視カメラを無力化しているところです』

 インカムに話しかけると、弾んだ声が返ってくる。

 やはりメガネをこの部隊に引き入れて正解だったな。

 ハゲやゴリラの反感を買ったが、良かったと言わせてやる。

「いいか。敵勢力の制圧と目標地点への到達を目標とする。死を持ってでも、奴らを無力化しろ」

『了解です』『了解』『分かった』『へいへい』『了解しました』

 俺はこいつらの思いを託されてリーダーをやっている。

 俺がいなければこいつらはもっと暴走していたはずだ。

 理性を持たない者がリーダーになれるわけがない。

 俺に求められているのは抑止力だ。

 だから俺は全うする。自分の地位を、その役割を。

『ところでよぉ。健太けんた

「なんだ? ハゲ」

『てめーはこの勝負に勝って誰と結ばれてぇーんだよ?』

 なんだ。そんなことか。

 俺の思い人は一人。

「俺は――と結ばれたい」

『はっ。悪くねー選択肢だぁ』

「それだけか?」

『ああ』

 コホンと咳払いをして、インカムに呼びかける。

「狙撃班、準備は?」

『いつでも。しかし無理がありますぜ。建物内部の様子がほとんどわかりやせん』

「電子班と連携をとれ。電子双眼鏡との同期をとるんだ」

『了解』

「あと78秒」

『目標、交代の時間です。監視が解かれました』

 メガネの報告を受けて少し戸惑う。

「少し早いな。どうする?」

『てめーで考えろ』

『リーダー!』

 しかし、内部情報が少なすぎる。

「星の確保はまだか?」

『はい。その報告はまだ来ていません』

 星が確保できていないとなると、この計画は意味をなさない。

『敵編隊に動きあり、兵団を分散させています!』

 どういうことだ。

 分散させるということは個々の防御が弱くなる。

 攻め入るなら今だが、逆に怪しい。まるでこちらの動向を探っているかのようだ。

「く」

 小さくうめく俺。

『ははは。オレ様は突入するぜ~』

「待て、ハゲ!!」

 インカム越しにドアを開ける音が聞こえてくる。

「く。全軍突撃!! 電子班、行動開始! 狙撃班、砲狙撃戦開始!」

 持ってきた攻撃ドローンが動きだして、ドアを開けるのと同時に突入する。

 ドローンは耐水性を上げて、さらには下部にハンドガンを改造した砲戦使用となっている。

 ドローンは全部で二十機。

 そのうち半数が砲戦使用。そして残りの半分はカメラを搭載している。

 カメラにはSDカードが搭載されており、映像データはそこに記録される。

 そして映像データはメガネを中心とした電子班のパソコンに届けられる。

 他にも志を同じくするものがこの敵要塞に奇襲をかけている。

 狙撃銃を手にするもの。

 ハッキングを行うもの。

 突撃するもの。

 ドローンを操作するもの。

 みな、気持ちは一緒だ。

 俺と、俺の仲間たちは一つの願いのもと、ここにいる。

「行くぞ! 秘密の花園へ!!」

 俺はスケベ心マシマシで叫ぶ。

 ここは女子寮。

 目標は女子風呂。

 武器を捨てた女子の裸を見に来た。

 そしてあわよくば、女子とお近づきになるために、この作戦を立案した。


 これはモテない男子による、女子への興味本位から始まった銃撃戦である。

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