第7話嫉妬
秋
決勝で負け、マスコミも蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。新チームではエースに指名された。もちろん、富樫と吉田は番号をもらっていた。
秋の大会初戦は10-0 5回コールド勝ち。無四球8奪三振MAX158km
一気に注目を浴びて普段通りの練習が出来なかった。
すると、先輩が声をかけてきた。
---生田、一緒に体育倉庫までこのマシンを運んでくれないか?1人じゃ運べなくて
生田は投手だったので、重いものを運ぶのは抵抗があったが先輩の役に立てると思ったら嬉しかった。生田は体育倉庫が苦手だった。ひとけのない所にあるし、中は埃まみれで暗いし、ものが沢山あって何だか窮屈に感じる。
体育倉庫に着き、ものを置くため奥まで行くと、背後から羽交い締めの様な形で両腕を押さえつけられた。すると、右の拳で腹を殴られた。
生田は痛みよりも急に殴られた衝撃で驚いていた。その後で猛烈に痛みがきた。
---お前のせいだぞ、生田
---黒田先輩何で?
目の前で殴ってきた黒田先輩一緒に運んだ栗原先輩、動画を撮っている内村先輩の三人は確認できた。抵抗を試みたが羽交締めをうけてるので動けなかった。もっといるかもしれない。
---生田がウチに来てから俺は背番号を貰えなかった。しかも、甲子園をかけた試合でボコボコに打たれやがってマスコミも連れてきやがって
---やめろ!監督が見たらなんていうか。
---それが、先輩に対する言葉使いか。
またも殴られた。
---安心しろ監督は来ねぇよ。この時間は毎週職員会議だ。必ず1時間は空ける。その間たっぷり可愛がってやるからな。監督にちくってみろ、そしたら野球部ごと活動停止だ。お前は何もできない。
今度は蹴られた。もう駄目だと、両膝をついた。周囲から笑い声が響いた。
---腕おっとくか。でも、どうやればいいのかわんね。
そこで内村先輩の声がした。
---指は?
---そっか!指か!それならこの時間が無い中でも、お手軽にできる。まずは利き手の人差し指から折ろう。さぁ、右腕を出せ!
生田は言うとおりに右腕を出した。その後人差し指を握られ身体の方へ思いっきり曲げられた。痛みと恐怖で頭が混乱していたが、骨が折れる音は倉庫中に響いた。
そこに若林が来た。
---なにやってるの!あんたたち!
と、強く言った。その場にいた先輩達はみんなあっけに取られ、羽交締めも軽くなりその隙に生田は抜け出した。
---生田大丈夫?
生まれて初めて心配された気がした。
---大丈夫・・・。
---あんたちこれは監督に言うからね。
---言ってみろ。そしたら出場停止だぞ。
---でも、これは見逃せない!
すぐさま監督に伝わり、東京都高野連に伝わった。処分は後日発表される。
その後三人は、飲酒・喫煙もやってることがわかった。監督も辞任した。
1年間の対外試合禁止の処分が下った。つまり再来年の選抜も出れない。ことが決まった。
先輩方は全員辞めた。1年生も何人か辞めた。マネージャーは若林だけ残った。
生田は残り練習を続けた。指が治るまでランニングを続けた。新しい監督はすぐ来た。上田と名乗った。この騒動で生田以上に心に傷を負った者がいる。若林だ。
若林は父親が監督を務めていたが、今回の騒動で責任をとって辞任してしまった。でも、後悔はしてなかった。ただ、明らかに元気がなかった。
生田の指が治り早速富樫と投球練習をした。生田の指はキレイに折られていた為、治るのに時間がかからなかった。
---あの変化球も投げたいんだけど。
---え?!そうなの!?じゃあ、カーブ。何か変化球を要求するなんて意外だな。
---そうかな?
---うん。真っ直ぐ好きかと思って速いから
---いや、速いせいで全然取ってくれなくて変化球ばっかり投げてたんだ。だから、変化球の練習してたんだよ。そしたら、変化球が上手くなってきて。だから、自分は変化球投手だと思ってる。
---そうなんだ。
富樫は驚いた。こんなに良い直球を投げるのに、変化球投手だなんて
その後も富樫は、生田を気持ち良く投げさせるよう努めた。
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