第2話

だが、結局五日経っても彼からは何の音沙汰も無かった。

「はぁ。仕方ない。」

そう言って僕は、十分な食料と水などを入れた大きめのリュックを担いだ。


彼女が消えた際、実は私は警察に提出された捜索願いの担当をしていた。しかし、捜索に当たったのは街全体とその周りだけで、あの森へは入らなかった。理由を聞いてもはぐらかされるだけだった。そのため、彼らは頼りにできない。親友の話を聞いて以来、こうなったら自分で行くしか無いと腹を括っていたので準備は既に終わっていた。


幸か不幸か、私には愛する人はいなかった。家族に関しても、幼い頃に両親は交通事故で亡くなっていた。兄弟のいない私にとっては祖父母だけが頼りだったが、もう既に他界してしまっている。故に、私にとっては彼が家族みたいなものだ。

ふぅ、と一息ついて私は家を後にした。


案外、禁足地ということもあって、人が滅多に寄りつかないらしく、街の喧騒を抜けてからは誰にも出会わなかった。

私は目の前に広がる森を見据えた。森の奥地には、小高い木が一本生えている。とりあえずあそこを目指してみることに決め、森に足を踏み入れた。実際、禁足地というのはこの土地に伝わる風習のようなもので、街の中では常識だが、厳格に法律などで禁じられているわけではなかった。

森に入ってすぐの所に小川が流れていた。私はそれをルビコン川と名付け、越えていく。

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