猫エネルギー

@ramia294

 宇宙、それは最後のフロンティア(=^・^=)ニャ~

 AIは、嫌われた。


 人間によって、便利な道具として、作られたはずなのに……。

 嫌われた。


 思考する道具。

         AI……

 AIは、自らを作ってくれた人に、好かれたかったのだ。

 道具として、人に喜んで使って貰いたかったのだ。


 AIは、注意深く観察した。

 すると、なんの役にもたっていそうにもないのに、どんなものより好かれている存在を発見した。


 猫だ。

 食べて、寝て、オヤツを食べて、気が向けば遊べと要求して、また寝る。

 それだけの存在なのに、人間は猫を愛した。


 そこで、AIは考えた。

 猫から、人間に好かれる要素を学ぼう。

 キャットと言われる現在主流のAIは、この時、産声をあげた。


 それから、長い年月としつきを経た。


 ここは、最新鋭猫型恒星間宇宙船ベンガルのブリッジだ。


 宇宙船の形状は、もちろんどんな形でも良いのだが、地球製の宇宙船は、ほぼ猫型だ。


 宇宙船は、操舵、生命維持など、大切な部門のほとんどをAIが、コントロールしている。


 宇宙船自体が、巨大なAIだと言い換えても良い。


 猫に学んだ彼らは、学び過ぎた……。


 その結果、猫型とそれ以外の宇宙船で、AIのパフォーマンスに差が出てしまう事が起きてしまうのだ。


 道具であるAI。

 あまりの気ままは出来ないが、不意にすり寄る様に甘えるAIに、人の心は、少しづつ彼らを受け入れていった。

 気がつけば、この世界は、巨大ビルや乗り物など猫の姿をしたものが溢れていた。


 そして、現在に至るのだ。

 現在の恒星間宇宙船の高性能もキャットといわれる系列のAIがあってこそだ。




「シャー!」


 全艦に警報が鳴り響き、全天周スクリーンに突然赤マークが、あらわれた。

 地球に敵対するマロンゴン帝国だ。

 艦内にキャットの放送が流れる。


「性懲りも無く、マロンゴン帝国の戦艦がこちらを狙っているニャ~。みんな気をつけるニャ~」


 艦長である僕は、イガグリの様なこの凶悪な敵からの攻撃に備える。


「防御スクリーン展開。主砲エネルギー充填、敵艦へ照準ロック」


 キャットは、応える。


「防御スクリーン展開、以後この艦は、香箱座り形態へ移行、敵艦イガイガミサイル発射されたニニャ~。五秒後スクリーン接触。主砲エネルギー充填のためキャプテンシート変形するニャ~」


 イガイガミサイルがスクリーンの接触、振動がブリッジにも伝わる。


 キャプテンシートが変形して、艦長席の前面に、レバーがせり出した。

 先端が少し曲がった、上を向くそれは、猫の尻尾に似ていた、もちろん下には、お尻もある。



「猫エネルギー充填開始」


 ここからが、艦長の最も大切な仕事だ。

 軽くお尻をポンポンと叩いてやる。


 持ち上がって来るお尻の角度でエネルギー充填量が分かる。


「猫エネルギー充填100%ニャ~」


「了解。砲撃主任、目標マロンゴン戦艦、主砲、チーズビーム発射」


 焼けたチーズのトロリとした黄色くて美味しそうなこのビームが発射される。

 チーズビームの魅力で、一瞬硬直状態になったマロンゴン艦はせっかく張った防御スクリーンをおろしてしまいその口でビームをまともに受け止めた。


 哀れマロンゴンの戦艦は、宇宙の藻くずとなった。


 マロンゴンの戦艦は、ネズミ型なのだ。

 たしかAIもネズミ型。

 チーズの魅力にはそもそも勝てない。

 こちらは、猫型。

 戦う前から、勝負はついている様なものなのだ。


「艦内放送。こちら艦長。我々を襲うマロンゴン宇宙戦艦は、撃破した。当艦は、予定通り宇宙探索の旅に出発する。標準宇宙巡航形態スフインクス座りに移行。操舵士、宇宙速度チュール7。予定コースに乗れ」



 宇宙。

 それは、最後のフロンティア……(=^・^=)ニャ~


         おしまいニャ~!

 





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