第11話 おやすみなさい  3人川の字で

「さあって」


 1人ごちながらも、まずは口紅ね。浴衣を脱ぐのに付いちゃうからってママからアドバイス。

 コットンパフにクレンジングオイルを付けて、鏡をみながら、口角からキューピットボウヘ軽い力でコットンを滑らせるの。左から右から4回ぐらい。

 そして口角のところを拭って、今度は前から奥にコットンを滑らてていく。コットンにも色がつかなくなった。ヨシ。

 自宅から持って来た1番大きいバスタオルを床に敷いた。

着物用衣紋掛けは、ちょっと苦労して、カーテンレールへ。

 一孝さんに頼めばよかったな。

 さあ、タオルの上に立ち上がる。赤い帯の上を両手で持って、


   えい、


 回してしまうの、帯飾りを前にして解いていく。

 スルスル、えい。肩にかけたりして解いてしまう。

 次はパット付きの伊達締を外す。でその下の胸紐を1枚取った。

 実は、おはしょりの下にも腰紐があるの。やっと浴衣を脱げた。もちろん、すぐ衣紋掛けにかけてあげる。

 この夏はこれをきて一孝さんと色々と巡るんだもん。

 今は、和装キャミになってます。開放感が半端ない。着替えやら、シャンプーやら持ってバスルームへ移動。

 中は、1人用だからかな、琴守家のものより、明らかに狭い。湯船も足が伸ばせないの。

 今度、彼にウチのお風呂を誘ってみよう。喜ぶんじゃないかな。足の伸ばせる開放感を味わってほしい。

 以外以上に汗を吸った和装キャミを脱ぎ、下着を外す。体を一通り洗いました。

 一孝さんは、この銘柄のシャンプーなんだね。ソープと一緒に覚えるの。ウチに招待した時に用意しておかないと。

 一通り、体を洗い終わり、水気も取った。

 後は髪の毛。給水タオルで髪の先を主に包んでそっと水気を抜くの。

 頭の方は時間と共に下に水気が落ちていくんだって。

 お風呂の外のシンクにあるコンセントにドライヤーをつなぎ、ブローする。襟足から上に髪の毛の根っこに向かって髪の下に温風を入れる感じで、やっぱり下から上に。頭皮が乾いたらブロー終わり。

 髪にトリートメントをそっと揉み込んでいく。そして下着をつけていく。

 一孝にはごめんなさいだけど、今日はコトリ優先。下はコットンの大きめでお腹も入ります。ブラはナイトブラ。締め付けも少ないし、形も整えてくれる優れもの。

 一孝さんには、いずれすごいものを見せてあげるからね。

今日はごめんなさい。でも、求められたら… 。

 最近、買ったオフピンクのネグリジェを着て、最後に、やはりピンクのシルクのナイトキャップで髪を保護。残った水気も吸ってくれます。


「ふう」


 乙女は夜も大変なんです。

そして、奥の部屋のベットまで行く。

 コトリは、まだ目を覚さない。目を閉じて穏やかな顔を眺めていると。


   カシャン


「ただいまー」


 一孝さんが帰って来た。キッチンスペースから顔を出すと


「牛乳買って来たよ。ホットミルクどうかと思って…」


 私は振り返り、彼を見た。あれっ動かない。


「一孝さん?」

「あぁ、なんか神々しいもの見たよ」

「?」


 目を細めて一孝さんが私を見てる。そして近づいてきて、私が髪に巻いたナイトキャップを触る。


「これがなんかベールに見えてね。同じ色のネグリジェがシスターの服だっけ、それに見えたんだ。なんか、どっかの絵画であったんだよ。聖女が祈る姿が。それにそっくりでね」


私が聖女。


  ポン


顔が一気に熱くなりました。


「もう、一孝さんたらぁ」


 だめっ頬が冷めてくれない。


「コトリは、まだ、起きないか?」

「うん、まだ」


 彼がそっと手を差し出してきた。私はそれを握り、彼に体を寄せていく。2人で並んでコトリの様子を見ていました。


「一孝さん、ありがとうございます。先にお風呂いただきましたんて、入ってください。

ミルクは私が温めて、冷ましておきますね」


「ありがとう。じゃ、入ってくるよ」


 彼がバスルームに入って行き、しばらくしてシャワーの音が聞こえてきた。彼を想像してしまい気になってモゾモゾしてしまう。

 あっそうか。これだから、コンビニいってくれたんだ。貴方に感謝を。

 

 ミルクをミルクパンに注ぎ、電子コンロで温める。用意した二つのカップに分けて、テーブルに置いた。

 そのまま、ベットにいるコトリに寄り添うように横たわる。しばらくコトリの目を閉じた顔を見ていた。

 

ほんの僅かの時間が過ぎ、


「美鳥ぃ、上がったよ」


 一孝さんが声をかけてくれた。すぐに起き上がってミルクを…

だけど、彼はすぐ側に来てくれて、テーブルからミルクを取って渡してくれた。


「ありがとう」


 私はベットの縁に座り、カップを受け取る。

一孝さんは、隣に座ってくれる。

2人で会話もなく静かに、冷めて飲みやすくなったミルクを飲んだの。


「今日は色々とあったなぁ」


 彼が話し始める。


「コトリが浴衣になってるのも驚いたし、美鳥の浴衣姿を見られた。綺麗だったなあ」


 恥ずかしくて、声が出ない絞り出しても小さい。


「ありがと」

「入れ替わったのには、正直驚いたんだよ。どうなるんだって」

「ごめんなさい」


 彼は手を後ろにずらして体を軽く後ろに倒す。


「でも、コトリが倒れる直前にあたり一面が光に満ちていた時に見た、美鳥は、もっと綺麗に見えたよ」

「でも」

 

 私じゃない。


「あれも美鳥だよ。コトリは美鳥だろ」 

「一孝さん」


 彼は体を起こして、私の方を見てきた。


「最後のスターマインの時は残念だったなあ。まさかすぐ側にいたなんて」

「止めてしまってごめんなさい」

「いやっあそこで、キスなんか見つかってたら、俺は、病院のベットの上にいる」


   くす、


 想像して笑ってしまった。


「だから、美鳥」


 彼が近づいているのがわかる。だから、私も其方に向いたよ。


   ♡


 しばらく動かなかった。動けなかった。動きたくなかった。

啄むこともない。唇を舌が割って入ることも無い。

ただの


   ♡


 しばらく続いて、彼が顔を離す。


「美鳥泣いてる、いやだったか?」


 私は頭を振って否定する。


 違うの。

 

 今は私のわがままなの、コトリの世界を知って、せめて今日ぐらいコトリに寄り添ってあげたいっていう、我儘なの。

だから、ごめんなさい一孝さん。


私は彼の唇にもう一度、


   ♡


 そして、彼の手を取り、ネグリジェの上から乳房の上に重ねた。

今は、これがいっぱい、私の精一杯。

受け取ってね。


 静かに時が流れた。

唇が離れて、お互い蕩けた目と赤くなった顔を見合った。


「ふふ」

「ははは」


 お互い笑ってしまった。


「ねえ、あなた」


 あなたぁー、あわわわわ


「美鳥の横に寄り添ってもらえるかしら」

「おまえ、3人じゃ、このベット狭いよ」


 おまえー  あわわわわ


「いーの、並んで寝ましょ」

「お前か良ければ、良いけど」


 いやーはずぅー

お互いベットの上を動いて、


「美鳥、壁側でなくて良いのか? 俺、そっち行こうか?」


 名前に戻っちゃった。しょぼん


「いーの、私って寝相いいから」

「ならいいよ」


 3人で川の字になる。


「ねぇ、あなたぁ、手を美鳥の上に出せる?」


 夢よ、もう一度。 でも、あわわわわ。


「こうか?」


 お互い、半身になって、向き合う形になる。丁度コトリの胸の上に手がの乗った。そして指を絡ませた。


「おまえ、こんなんで寝れ………」


 一孝さんの声が途切れてしまった。少しすると寝息が聞こえてきた。

すると、

 私の口から、


『彼奴は寝たかや?」

「コットン。なんであんたが」

『あんたとは、中々であるな。まあ良い』


 なんでこんな時にこいつが話す。


『いきなり、激しい情動が伝わってきての。彼奴が持たんだろうと眠らさてたわけよ』

「情動?」

『おまえ、発情しておったのよ。このままなら、彼奴に組み敷かれて犯されておったぞ』

「!」

『都合よく、彼奴と手を繋いでくれたから寝かしつけて置いたぞ』


 あいつは認めたくはないのだけど、ほっとしている自分もいる。


『ことなきを得て、良きこと。お主も寝とけ』


 私の意識も沈んだ。


『おやすみ』


 でも、私の唇は、言葉を紡ぐ。 




   今夜は3人で川の字になって寝ました。

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