晴れを待って(ショートショート)

もとやまめぐ

晴れを待って(ショートショート)

雨の中、軒下に出された


雨は冷たく痛い

私の身体を、頭を、淡々と打ち続ける

どう見ても止みそうにない真っ黒い雨雲

どこまでも続いていそうな黒い空へ

晴れますようにと静かに願う

今すぐにでなくてもいい

でも出来れば

なるべく早く止んでください


描かれた顔は滲んで無様

身体に書かれた幼い平仮名も

滲んで読めなくなっていく


部屋の中から子が空を見上げた


もう少し待っておくれ

西の空に少し雲の切れ間が見える

明日にはきっと雨は上がるよ



静かな夜が訪れた

風がさらりと身体を揺らす

空から星々がチカチカ合図し

おつかれさま

と声が届く

朝になれば私の役目は終わるだろう

あの子は笑顔になるだろうか


私を作ったあの子の手

小さくて真剣なあの子のために

私は役に立てたかな



朝日が昇り、窓が開いた

あの子の元気な声が通り抜ける

私の身体は乾かないまま

滲んで無様だ、触れないでおくれ


私を作った小さな両手

優しく包んでくれた気がした


机に置かれた私の身体に

金の鈴が置かれていた

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晴れを待って(ショートショート) もとやまめぐ @ncRNA

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